- 予選2レポート
「もっといいクルマづくり」の成果
SP3Tクラス2位から、明日の決勝に挑む。
ニュルブルクリンク24時間レースの2日目となる、5月26日は予選2回目が行なわれた。昨日と同じく若干風が強いものの天気は快晴。ナイトセッションの予選1回目と比べると気温や路面温度は高くなるが、視界が圧倒的によくなることで昨日よりも更なるタイムアップも期待できる。
予選2回目は9時30分から11時30分の2時間だが、15分ディレイし9時45分からのスタートとなった。昨日の予選1回目で4人のドライバーの規定周回となる2LAP計測はクリアしているため、今日は井口卓人選手のみが走行を行なった。
エンジン制御の作り込みとセットアップの微調整、そして燃費チェックなどを行ないながらアタックを行なう予定だったが、コース上を走るクルマが少ないと判断し、予定を変更してアタックを決行。
平田チーフメカニックのピットアウト指示も絶妙で、参戦台数の多さからニュルブルクリンク24時間レースでは難しいクリアラップに近い条件でのアタックにより、予選1回目のタイムを大きく更新する9分2秒157を記録。
ここで、決勝グリッドを狙うためにアタックを行うチームであれば、ベストタイムを記録後は走行を終えるのだが、予選1回目でチェックできなかったエンジン制御の作り込みとセットアップの微調整、そして燃費チェックを行うために走行を続けた。それはこの挑戦の目的が「いいクルマづくり」だからである。
井口選手はアタック後もクルマから降りることなく、予定されたメニューを全てこなし予選を終えた。
結果はタイムアップを果たしたが順位は変わらずクラス2位。昨年、一昨年と、予選上位獲得には届かなかったが、この結果は井口選手の頑張りはもちろん、エンジニア、メカニックが改善を積み重ねながら、“早い”上に“安心して走ることができる”クルマに仕上げ続けてきたことによる“チーム力”の結果でもある。
井口選手は「アタックのタイミング、タイヤの温まり具合を含め、平田チーフメカニックの的確な判断もあり、いい状況でアタックできました。クルマは速さと扱いやすさがあり、攻めていけるクルマに仕上がっています。決勝はラップタイムと燃費が重要となりますが、ドライバーはチームを信じて頑張るだけです」と語った。
2007年からスタートしたニュルブルクリンク24時間レースの挑戦は、年を追うごとに内容や規模も大きくなっていったが、「人を鍛え、クルマを鍛える」という考えは不変である。
この挑戦をスタートさせた成瀬は「大事なことは言葉やデータでクルマづくりを議論するのではなく、実際にモノを置いて、手で触れ、目で議論すること。そのためにはレースという場が最適」と語ったが、その想いは平田チーフメカニックを通じて若手メカニックやエンジニアにもしっかりと伝承されている。その結果、様々な作業に対して自発的に改善できるようになってきている。松井孝允選手は「メカニックも国内テストのときは戸惑っている部分があると感じましたが、今はリクエストに対しても的確に判断してくれるので凄く安心感があります。予選1回目のトラブル時もクルマから降りずに作業が完了、僅かなロスタイムでコースへ復帰できたのは彼らのおかげです」と語るように、ニュルブルクリンク24時間レースに挑む過程のなかで成長があった。
予選2回目の時点で決勝用のセットアップとなっていたため、メカニックは最後の調整、整備を行なうのみ。明日からが本番なのでチームメンバーは早めに休息を取り、明日15時30からスタートする24時間の戦いに挑む。
平田 泰男 チーフメカニック(トヨタ自動車社員)
成瀬さんもモリゾウさんもいないニュルですが、自分たちがやるべきことは何も変わりません。メカニックはまだまだ足りないこともたくさんありますが、日に日に自分で見て判断できるようになっています。私に対する質問事項も「どうしましょう?」ではなく「こうしましょう」という自発的な発言も増えているので、成長を感じています。クルマは去年悔しい想いをした反省を活かしたアップデートによる進化が予選順位に表れていますが、それはクルマの開発をやり切った結果にすぎません。現時点ではトラブルは起きていませんが、決勝は何が起こるか解りません。ただ、クルマの状態はいいので、明日に向けて備えます。
蒲生 尚弥選手
去年のクルマは、トラブルでピットインした後、メカニックの皆さんが夜を徹して作業をしてくれたのですが、リタイヤという悔しい想いも経験しました。でも今年は違います。これまでは同クラスのライバルに“速さ”の部分では追いつくことができませんでしたが、ラップタイムは大きく向上していますし、より乗りやすく、より安定がある走りに仕上がっています。今年は24時間走り切ることはもちろんですが、今まで出来なかったトップ争いをして、極限状態での開発に繋げ、「いいクルマづくり」をしっかりと認識しながら頑張ります。本音を言えば“勝ちたい”という想いもあります。