2021年にTGR-DCのスカラシップを獲得した中村は、FIA-F4選手権を2シーズン戦った後、昨年はスーパーフォーミュラ・ライツ選手権とSUPER GT300に参戦しました。そして2025年からは活動の舞台を世界に移し、今シーズンはこのFRMECと5月から開催されるフォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアン・チャンピオンシップ by アルピーヌ（FRECA）にフル参戦します。
　FRMECは世界各地から若手ドライバーが集う登竜門として知られる冬季開催の選手権で、1月と2月の2ヶ月間、中東のアブダビ、ドバイ、カタールの3つのサーキットで全5戦、計15レースが行われます。中村が所属するR-ace GPはフランスに拠点を持ち、現在世界で活躍するトップドライバーを多く輩出している強豪チームです。中村は昨年から日本レースの合間に単身渡欧し、チームとの準備を進めていました。

　FRMECは通常、現地でのテスト走行が2回、その後30分のフリー走行と、15分ずつの予選Q1とQ2、そして28分+1周の決勝が3回（レース1、レース2、レース3）というスケジュールで行われます。Q1の結果がレース1のスターティンググリッドに、レース2のグリッドはレース1結果に基づいて上位10台がリバースグリッドになります。そしてQ2の結果がレース3のスターティンググリッドとなります。
　第1戦アブダビでは、1月17日（金）の午後2時20分と午後8時25分にそれぞれ1時間のテスト走行が実施されました。翌18日（土）午前10時45分から30分間のフリー走行が行われ、中村はこのフリー走行で予選に向けたパフォーマンスランを行い、トップと0.269秒差の4番手と好タイムをマークしました。

　18日（土）夕方4時50分から午後5時5分までの15分間行われたQ1では、好調だったフリー走行の時とクルマのバランスが変わってしまい16番手に終わりました。しかし、Q2が始まる午後5時10分までの5分という短いインターバルでクルマのセッティングを変更し、バランスを改善。結果、Q2を9番手で終えました。

　中村のデビュー戦となるレース1は18日（土）午後9時45分にフォーメーションラップを開始しました。事前のチームと打ち合わせ通り、入念にタイヤを温めた中村は16番グリッドからスタート。1周目は15位、2周目は16位、3周目にまた抜き返して15位となり、他車とバトルをしながら、さらに上位進出する機会を伺いました。そして9周目に13番手、続く10周目に12番手とポジションアップ。その後もしっかりポジションをキープし、17周目に12位でチェッカーを受けました。FRMECは今年から12位までが入賞となるため、デビューレースで初のポイントを獲得しました。

　レース2は19日（日）午後5時55分にスタートしました。第1レースの結果どおり、12番手グリッドからスタートした中村は、この週末最高のスタートダッシュを決めると、レース序盤から果敢に攻めの姿勢をみせ、2周目に11番手、3周目に10番手とポジションを上げました。その後セーフティーカーランを挟んでもペースを緩めることなく前のクルマを追い続けましたが、14周でレースが終了。10位フィニッシュし、レース1に続いて2戦連続の入賞、ポイント獲得を果たしました。レース後の正式結果で9位に繰り上がりました。

　開幕戦最後のレースとなるレース3は、19日（日）の午後8時45分にスタートしました。9番グリッドの中村は、このレースでもスタートを決めて1台を抜き、さらに9コーナーで1台、12コーナーでもうひとつポジションを上げて1周目に6番手まで浮上しました。そこからさらに上位進出を狙いましたが、7周目あたりからから右フロントタイヤの摩耗が始まり、思うようにペースを上げられずポジションを守る走りを強いられました。9周目にポジションをひとつ落としましたが、3台並んでコーナーに飛び込むなど攻める姿勢を見せるも、レース終盤にはさらにタイヤの摩耗が進み、残り2周でひとつポジションを落とし、8位でチェッカーを受けました。レース後、レース終盤の走路外走行に関して、レース結果に5秒加算の裁定が下されましたが、順位は変わらず8位入賞が確定しました。この結果、中村は今大会で開催された3レースすべてでポイントを獲得しました。

　「フリー走行は悪くなく、ポジティブな状態で予選に挑みましたが、予選ではうまくいかず、Q1からQ2でなんとか挽回できたものの、納得のいく結果ではありませんでした。レース1のスタートは悪くなかったですし、レース序盤は周りよりもペースは速い印象でした。ただ12番手に上がったあたりからフロントタイヤがかなり厳しい状況になり、ペースを上げるのが難しかったです。FRMECでの初レースでしたが、しっかりと組み立てができれば追い抜きができることが分かりました。
　レース2はスタートが今週末で一番良く、最後は9番手にも仕掛けられるところまでいけました。走りながら、このレースで得たものをどう改善すればレース3につなげられるかを考えていました。
　レース3は、1周目がすごくうまくいったと思います。自分でポジションを上げることができて、攻めの姿勢も見せることができたと思います。ただ、今週末はレース中ずっとグレイニングの症状があり、それをドライビングでマネージメントしながら走っていましたが、そのマネージメントもレース中盤以降から機能せず、ペースが足りなくなり、守りのレースになってしまいました。ここは次に向けて改善したいです。
　3レースを通してエキサイティングで、とても楽しい週末を過ごせました。これからのレースが非常に楽しみです。
　このような機会をくださったモリゾウさんをはじめ、TOYOTA GAZOO Racingの関係者の皆様といつも応援してくださる皆様に心から感謝いたします。ありがとうございます。引き続き応援よろしくお願いします」