2025年11月13日から16日にかけて、中国マカオ特別行政区で第72回マカオグランプリ「FIAフォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ」が開催されました。TGR-DC育成ドライバーの中村仁(R-ace GP)、佐野雄城(TOM’S RACING)、鈴木斗輝哉(TOM’S RACING)、梅垣清(Van Amersfoort Racing)※が参戦し、決勝では中村が19位、佐野が9位、鈴木が22位、梅垣はリタイアとなりました。 ※梅垣はプライベート参戦
〇2025年マカオグランプリ フォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ戦績
| 中村 仁 | R-ace GP | 19位 |
| 佐野 雄城 | TOM’S RACING | 9位 |
| 鈴木 斗輝哉 | TOM’S RACING | 22位 |
| 梅垣 清 | Van Amersfoort Racing | リタイア |
今年で72回目(FIA FR World Cupは2年目)を迎えたマカオグランプリは、FIA公認のフォーミュラ・リージョナル車両による世界選手権として、市街地特設コース「ギアサーキット」(全長6.12km)を舞台に開催されました。かつてこの大会はF3世界選手権として行われ、ここで結果を残せばF1への道が開けると言われてきた若手ドライバーの登竜門です。多くのF1ドライバーがこの地で才能を証明してきたことから、現在も世界中の注目を集めています。
舞台となるギアサーキットは、海沿いの高速セクションと、山側の狭くテクニカルな低中速セクションで構成された全長6.12kmの市街地コース。後半の山側は道幅が狭く、ミスの許容範囲が少ない難所で、ドライバーの集中力と運転技術が試されます。今年も世界各国から将来のF1ドライバーを目指す若手ドライバーが参戦。中村は昨年に続いて2度目の挑戦、佐野、鈴木、梅垣の3名は初参戦となりました。
〇第72回マカオグランプリ 「フォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ」 スケジュール
| 11月13日(木曜日) | 09:15-09:55 | フリー走行1 |
| 15:50-16:30 | 予選1 | |
| 11月14日(金曜日) | 10:15-10:55 | フリー走行2 |
| 14:30-15:10 | 予選2 | |
| 11月15日(土曜日) | 16:15 ~ 17:20 | 予選レース(10 laps) |
| 11月16日(日曜日) | 15:30 ~ 16:35 | 決勝レース(15 laps) |
【11月13日(木) フリー走行1回目、予選1回目】
午前9時15分から40分間のフリー走行1回目が行われました。赤旗中断が1度のみで走行時間を大きく失うことなく、各ドライバーはマカオ市街地コースの感触をつかんでいきました。中村は15周を走行し8番手。初走行の佐野は13周で18番手、鈴木は13周で21番手、梅垣は12周を走行し22番手で初セッションを終えました。
午後3時50分からの予選1回目では、中村が直線の伸びに苦しみながらも10位につけました。また、鈴木は総合19位ながら最終アタックでセクター1の全体ベストタイムを記録しスピードを示しました。一方、佐野と梅垣はマカオ特有の難しさに直面し、それぞれ25位、26位で初日を終えました。
中村仁
「フリー走行は赤旗も少なく、思っていた以上にしっかり周回を重ねることができて良かったです。そこで得たものを予選1回目に活かせた部分もあれば、活かしきれなかった部分もあり悔しいです。まだ走らせ方で改善できる点が明確に残っています。明日に向けて頭を整理して、シンプルに臨もうと思います」
佐野雄城
「フリー走行1回目の走行はトラブルなく走り切れて、走らせ方やコースの特徴を掴めた良いセッションでした。予選1回目ではフリー走行で履いたタイヤでいろいろ確認をした後にニュータイヤでアタックしましたが、計測3周目に軽く壁に接触しアーム類を曲げてしまいました。一度ピットに戻りチームが修復してくれましたが、直進性が戻らず走行は終了してしまいました。クルマはチームがしっかり直してくれると思うので、明日は良いパフォーマンスを出したいです」
鈴木斗輝哉
「今日はクラッシュなく距離を稼げたのがまず良かったです。2回の走行セッションで、毎周走り方を変えながら試行錯誤しレベルアップできましたし、ニュータイヤでセクターベストのタイムを出せたのも収穫でした。クルマのバランスも掴めてきて、初日は良い流れで終われたと思います。明日は2回目の予選もあるのでこの流れを切らさず行きたいです。セクターごとの差を少しずつ縮めていけたらいいなと思います」
梅垣清
「予選1回目でクラッシュしてしまい、タイムも残せず悔しい内容になりました。ただ初めてのマカオでフリー走行1回目と予選1回目を走り、多くの経験と改善点を得られたのも事実です。金曜日のフリー走行2回目と予選2回目では、その課題に対してしっかりドライビングをアジャストして自分の課題をクリアしていきたいです。結果で成長を示せるよう頑張ります」
| フリー走行1 | 予選1 | |||
|---|---|---|---|---|
| 中村 仁 | 8位 | 2:17.125 | 10位 | 2:17.046 |
| 佐野 雄城 | 18位 | 2:19.196 | 25位 | 2:18.974 |
| 鈴木 斗輝哉 | 21位 | 2:20.048 | 19位 | 2:17.956 |
| 梅垣 清 | 22位 | 2:20.115 | 26位 | 2:19.163 |
【11月14日(金) フリー走行2回目、予選2回目】
マカオグランプリ2日目の金曜日。この日は午前10時15分から40分間のフリー走行が行われました。前日からクルマのバランスを調整した中村はこのセッションで5番手のタイムをマークしました。また鈴木は12番手、佐野は17番手、梅垣は19番手でした。
午後の予選2回目は、直前に走行していた別カテゴリーの赤旗中断の影響で開始が35分遅れ、14時50分にスタート。中村はニュータイヤ2セットを投入してアタックを試みましたが、午前中ほどのグリップ感が得られず14番手。佐野はフリー走行からセッティングを変更しながらタイムを更新し16番手。鈴木は朝からの好調を維持し一時13番手につけましたが、終盤にミスがあり21番手となりました。前日の予選1回目で満足にアタックできなかった梅垣は、セッション終盤に投入した2セット目のニュータイヤでタイムを更新し17番手となりました。
土曜日の予選レースのスターティンググリッドは、2回の予選のうち速いタイムで決定します。これにより、中村と鈴木は予選1回目のタイム、佐野と梅垣は予選2回目のタイムが採用され、中村が14番、佐野が19番、梅垣が20番、鈴木が24番手グリッドからスタートすることになりました。
中村仁
「フリー走行2回目は前日から自分にもクルマにも大きな成長を感じられ良い流れでしたが、予選ではタイムを上げきれず、自分のミスもあって思うように進まないセッションになりました。足りていない部分は自分でも理解していて、チームとも改善に取り組んでいます。明日の予選レースは前だけを見て、強い気持ちで追い上げるつもりです。しっかり立て直していきます」
佐野雄城
「フリー走行1回目から1歩ずつ成長できた2日間でしたが、トップとの差はまだ大きく悔しさも残ります。予選2回目に向けて大きくセッティングを変えましたが合わせ切れず、予選中に再度調整してあわせられた頃にはタイヤが垂れてしまいました。もったいない部分はありましたが、いろいろな経験を積むことができました。明日はまず完走が大前提。その中で最大限プッシュして良い結果を目指します。しっかり準備して挑みます」
鈴木斗輝哉
「フリー走行2回目は赤旗の多い中でも手応えがあり、全体12番手と手応えのあるセッションになりました。予選2回目は序盤はタイムを上げられていましたが、赤旗後に攻めすぎて左リアをヒットしてしまい順位を落としたのが悔しいです。ただ感触はすごく良く、昨日からはしっかり前進できたと思います。予選レースは24番手からですが、マカオは何が起きるかわからないのでチャンスを逃さず前に行きたいです。日曜日の決勝レースを良い位置で迎えられるように頑張ります」
梅垣清
「初日のクラッシュからクルマを直してもらい、フリー走行2回目では課題を改善できました。予選2回目に向けてもオンボードやデータを使ってエンジニアと前進できた点は大きな収穫です。結果は満足できませんが、ポジティブな面も多く得られました。明日の予選レースではまず順位を上げられるよう準備して挑みます。しっかり集中していきます」
| フリー走行 2 | 予選2 | |||
|---|---|---|---|---|
| 中村 仁 | 5位 | 2:17.571 | 14位 | 2:17.183 |
| 佐野 雄城 | 17位 | 2:19.743 | 16位 | 2:17.566 |
| 鈴木 斗輝哉 | 12位 | 2:19.111 | 21位 | 2:18.311 |
| 梅垣 清 | 19位 | 2:21.595 | 17位 | 2:17.783 |
【11月15日(土) 予選レース】
快晴の土曜日、午後4時19分、10周で争われるマカオGP予選レースがスタート。14番グリッドの中村は好スタートを切り1台をパス。続く3コーナーではアウト側から前のクルマにしかけ、3コーナーを2台が並んだ状態で通過しましたが、4コーナーへの立ち上がりでアウト側の汚れた路面により加速が鈍り、その間に2台に抜かれて15位に後退。その後も山側の区間で差を詰めて追い上げを試みるも、海側の長いストレートではオーバーテイクするほどの伸びがなく、ブレーキングでクルマの背後に迫るのが精一杯の展開。6周目の3コーナーでは、中村の後方のクルマが減速できず直進する場面があり、これをぎりぎりで回避し、この混乱のなかで中村は前のクルマをかわして14番手に浮上しました。その後もタイムを更新しながら前のクルマに迫りましたが、抜き切ることはできず14位でフィニッシュしました。
一方、中村の後方では、19番グリッドからスタートした佐野と、24番グリッドからスタートを決めポジションを上げてきた鈴木がバトルを展開。8周目のリスボアで鈴木が佐野をかわして17位に浮上し、そのまま鈴木は17位、佐野は18位でレースを終えました。20番グリッドからスタートした梅垣は、スタート直後の2コーナーでポジションを落としましたが、その後粘り強く走り続けて21位でフィニッシュしました。
この結果、日曜日の決勝レースは中村が14番グリッド、鈴木が17番グリッド、佐野が18番グリッド、梅垣が21番グリッドからスタートすることが決まりました。
中村仁
「スタートは14位で、そのまま14位でフィニッシュしました。ペース自体は良かったものの、1周目で抜かれた位置取りが響きました。昨日から改善できた部分も多く、クルマは確実に速くなっています。明日に向けてポジティブな要素と、成長できる部分の両方があります。明日は1周目をしっかり切り抜け、序盤から流れをつくって追い上げたいです」
佐野雄城
「初めてのギアサーキットで無事にチェッカーを受けられたのは大きかったです。ポジションアップは少なかったものの、内容としては多くを学べました。自分なりのチャレンジもでき、収穫のあるレースでした。改善すべき点はまだ多いので、エンジニアと詰めていきます。明日にしっかりつなげられるよう、頑張ります」
鈴木斗輝哉
「17番手までポジションを上げられたのは良い成果でした。後半のレースペースも良く、そこが追い上げにつながりました。週末を通じてここまで良い流れができていますが、まだ修正点は多くあります。エンジニアと話し合い、明日に向けて整えていきます。明日は悔いのない走りができるよう全力で挑みます」
梅垣清
「20位スタートから1つポジションを落として21位でフィニッシュしました。1周目のターン2でわずかに壁に触れてしまい、そこで数台に抜かれたのが悔しいです。クルマにダメージはなかったものの、そのロスがレース全体に響いてしまいました。ペース自体は前のクルマより良かったのですがダーティーエアで抜けませんでした。初めてのマカオで得た経験を決勝レースでしっかり活かして順位を上げたいです」
| 予選レース | ||
|---|---|---|
| 中村 仁 | 14位 | 23:16.048 |
| 佐野 雄城 | 18位 | 23:26.096 |
| 鈴木 斗輝哉 | 17位 | 23:25.540 |
| 梅垣 清 | 21位 | 23:28.777 |
【11月16日(日) 決勝レース】
土曜日に続き好天に恵まれたマカオGP決勝レースは、午後3時34分にスタートしました。14番グリッドの中村は好スタートを決め、ターン3までに2台を抜いて12番手へ浮上。その直後、ターン4で多重クラッシュが発生し、21番グリッドからスタートした梅垣がここでリタイアとなりました。クラッシュした車両を撤去するためにセーフティーカーが導入され、レースは4周目に再開。6周目には、18番グリッドからスタートして14番手までポジションを上げていた佐野がさらに1台を抜いて13番手となり、中村の後ろにつける展開となりました。
その後、9周目から11周目にかけて2度目のセーフティーカーが導入され、そのリスタートで中村と佐野がそれぞれ1つずつ順位を上げますが、さらに12周目から13周目にも3度目のセーフティカーが入る荒れたレース展開に。残り2周となった14周目のリスタートでは、中村がターン3で前のクルマを抜いて立ち上がりましたが、並走していたクルマと接触。フロントウイングを破損し、その周にピットインしてレースを終えました。一方、この混乱をうまく避けた佐野は2つ順位を上げて9位でフィニッシュ。鈴木は最後のリスタート直後、ターン2でサイドバイサイドの争いの中で相手がウオールに接触し、その反動で戻ってきたクルマを避けきれず接触。そのままターン3でクルマを止めてレースを終える形となりました。
マカオでの4日間はTGR-DCの4人それぞれが今後のキャリアにつながる大きな経験を積む週末となりました。今回得た学びを、今シーズンの残りのレース、そして来シーズンへの挑戦にしっかりと活かしていきます。
中村仁
「2年目のマカオに自信を持って臨み、ペースも良かったのですが、予選2回目で後方に下がってしまい、あと一歩足りませんでした。予選レースは無事にまとめたものの、決勝では追い上げの最中に接触してレースを終えることになってしまいました。自信があっただけに、結果とのギャップには正直動揺しています。ただ、この4日間で得た経験は大きく、必ず来年のF3につなげていきます。もっと良い結果を持ち帰れるように準備を積み重ねていきますので、引き続き応援をよろしくお願いします」
佐野雄城
「スタートからしっかり順位を上げ、自力で何台も抜けたのは大きな収穫でした。狭い区間でのクラッシュ回避も含め、集中して走れた証拠だと思います。週末を通して難しい部分もありましたが、初めてのストリートサーキットと世界大会という4日間いろんな経験ができ、悔いはありません。ストリートサーキット特有の難しさや世界のレベルの高さをこの段階で体感できたのは本当に良かったです。世界を舞台に戦ううえでもストリートサーキットは重要なので、この経験を必ず今後に活かしていきます」
鈴木斗輝哉
「決勝はリタイアという結果でした。スタートで順位を落とし、セーフティーカー中のチャンスを活かしきれなかった点は反省しています。途中で順位を戻せた場面もありましたが、終盤マンダリン出口で巻き込まれる形で接触してしまいました。それでもマカオで得たものは本当に大きく、100%で攻めればミスが出る中で、99%のギリギリを保ちながらクルマの限界と自分の感情をコントロールして走る難しさと技術を学べました。来年も参戦できるなら、さらに腕と速さを磨き高みを目指したいと思います」
梅垣清
「メインレースは1周目の4コーナーでの接触によりリタイアとなり、とても悔しい結果でした。昨日の反省点を今日に活かしたかったのですが、それが形にできず悔しさが残ります。それでも、この4日間は初めて尽くしの環境で多くを学べました。海外チームで外国人ドライバーと生活し、エンジニアとも英語で細かくコミュニケーションを重ねたことで、姿勢や自信の持ち方も含めて刺激を受けました。世界トップの育成世代と戦う中で得たものを、これからのレース人生に必ず活かしたいですし、リージョナルの最終戦に向けてポジティブな気持ちになりました。気持ちを切り替えて次へ進みます」
| 決勝レース | ||
|---|---|---|
| 中村 仁 | 19位 | 39:29.502 |
| 佐野 雄城 | 9位 | 43:06.186 |
| 鈴木 斗輝哉 | 22位 | 36:25.888 |
| 梅垣 清 | リタイア | |
