5月7日(土)、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで2022年FIA世界耐久選手権(WEC)第2戦スパ・フランコルシャン6時間の決勝レースが行われました。天候が激しく変わる「スパ・ウェザー」による波乱のレースを、TOYOTA GAZOO Racingのハイパーカー GR010 HYBRID 7号車が制し、今季初勝利を飾りました。
WECディフェンディングチャンピオンの小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスの3名がドライブするGR010 HYBRID 7号車は、大荒れとなった「スパ・ウェザー」に見舞われながらのハイパーカークラスの接近戦を制し、ル・マン24時間レースの前哨戦となる、シーズン第2戦スパでついに勝利を勝ち取りました。
チームはWECスパ戦での6年連続勝利。そして、7号車にとってはアクシデントでリタイアに終わった前戦セブリングの雪辱を果たす勝利で、GR010 HYBRIDは昨年のスパデビュー以来、8戦中7勝目を飾ることとなりました。
残念ながら、今大会、チェッカーを受けたのは2台のGR010 HYBRIDのうち1台のみでした。セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の3名がドライブする8号車は、レース序盤戦をリードしたものの、1時間半ほどが経過したところでハイブリッド・システムのトラブルにより戦線離脱を余儀なくされました。
レースは、4番手グリッドからスタートを切ったブエミのドライブする8号車が、1周目に2位へとポジションを上げる好スタートを切り、3番手グリッドのコンウェイの7号車も、スタ-ト直後の1コーナーで一旦は順位を落とすもすぐに追い上げ、3位で続きました。
16周目、2台のGR010 HYBRIDは、同じ周に続けて首位のグリッケンハウスをかわし、8号車が首位、7号車が2位へとポジションを上げました。2台のGR010 HYBRIDがレースをリードし後続を徐々に引き離し始めるも、スタートから1時間ほどが経過したところで雨が降り始め、LMP2車両のクラッシュによりレースは赤旗中断となりました。
25分間の中断のあと、レースはセーフティカー先導で走行を再開しましたが、首位につける8号車は、セーフティカー走行中にコース脇にストップ。ブエミはそのまま車両を降り、8号車はリタイアとなってしまいました。まもなく再スタートが切られるも、雨は激しさを増したため、7号車のコンウェイはピットへ向かい、ウェットタイヤへと交換。3位へと順位を落としました。
さらに強さを増した雨により、コースコンディションは悪化し、レースはさらに2度の赤旗中断を経て、残り2時間強で再開されました。雨は止み、徐々に路面が乾き始めるコンディションの中で、レース再開時に2位につけていた小林の7号車は、すぐに前を行くWRT 31号車をパスし首位を奪還しました。
最後の1時間半はロペスが7号車のステアリングを引き継ぎ、インターミディエイト・タイヤで最終スティントに向かいました。レースは終盤に3度のフルコースイエローが出される中で、最後まで3台のハイパーカークラス車両による接近戦が展開されました。
ロペスは、さらに路面が乾いていったレース終盤もこのバトルをコントロールし、2位のアルピーヌ36号車に27.473秒差をつけてトップでフィニッシュを果たしました。
チームはすぐにドイツ・ケルンの本拠地へと戻り、WECシーズン最大のイベントである次戦ル・マン24時間レースへ向けた準備を開始します。2022年のル・マン24時間レースは6月11日(土)から12日(日)にかけて開催され、チームは5連覇に挑みます。
豊田章男(TOYOTA GAZOO Racingチームオーナー):
7号車のみんな、今シーズンの初勝利をありがとう。
可夢偉が代表となった新チームの初勝利に私も少しホッとしました。
可夢偉、二足のわらじ、お疲れさま、ありがとう。
8号車は早い段階でのリタイアでデータも取れず、平川も経験を積むことができず、残念なレースだったと思います。
今回のトラブルは激しい雨が原因かもしれません。
ですが、クルマはどんな環境でも安心して乗れるものでないといけません。
そして、次のル・マンもどんな天気になるかわかりません。
今回のトラブルの真因を見つけ、次の戦いに向けて備えてもらいたいと思います。
ル・マン24時間は7号車も8号車もチェッカーを切ってほしい…
そのためにチーム全員でクルマをもう一度見つめ直して、6人のドライバーが気持ち良く走れるクルマになるよう改善をお願いします。それができれば我々のクルマは誰より長い距離を走れると信じています。
チームのみんな残り一か月、よろしく頼みます。
ファンの皆さま、今回も応援ありがとうございました。
ル・マンでは、2台のGR010 HYBRIDを24時間ずっと応援いただけるようまた明日からチームみんなで努力してまいります。
引き続き、ご声援よろしくお願いいたします。
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
素晴らしいチームワークにより今季初勝利を上げることができました。私はドライバーであると共に、チーム代表でもあるため、両方の車両に対して責任があります。8号車に起きたトラブルに関してクルーには申し訳ない気持ちですし、徹底的に精査し解決していきます。チーム全体として、今回のレースにはとても満足しています。我々の7号車は非常に難しいレースコンディションにもかかわらず、マイクとホセが素晴らしい走りを見せてくれ、またエンジニアとピットクルーも、このコンディションの中、ミス無く完璧な作業で支えてくれました。次戦はシーズン最大のイベントであるル・マンなので、しっかり準備する必要があります。我々はパフォーマンスを上げるため常に努力を続けていますが、ル・マンへ向けては、信頼性の向上も必要です。今日8号車に起こったようなトラブルは必ずなくしていきます。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
勝利への道は容易なものではありませんでした。最初の1時間は好天に恵まれましたが、一気に天候が変わり、大雨になってしまいました。大変な状況でしたが、そこでミスすることなく頑張ったことが勝利への鍵でした。多くの車両がコースアウトするなど、難コンディションに苦しむ中、ホセも可夢偉もミス無く走り抜いたことを素晴らしく思います。他のクルーも着実に作業をこなしてくれ、ピットストップも一日を通して、とてもよかったです。この優勝で多くのポイントを獲得したので、これでようやくチャンピオン争いに加わることができます。8号車のトラブルは残念でした。次はル・マンですが、我々は今日の勢いを活かしていけることを願っています。今日のレースでは、我々が望んでいた勝利とポイントを勝ち取ることができました。
ホセ・マリア・ロペス(7号車 ドライバー):
前戦セブリングではリタイアに終わりましたが、今日は良いレースができ、チャンピオン争いへの最高の再スタートが切れました。今日はチームとしては勝利と残念な面の両方を味わうことになりましたが、まずはチームの今季初勝利を挙げられたことが重要です。可夢偉とマイクはあの大変なコンディションにもかかわらず、驚くべき走りを見せてくれました。本当にタフなレースで、一時はコース上に留まることすら困難でした。可夢偉とマイクの力走のあと、私がステアリングを引き継いでからは、レースの最後まで、全力でプッシュを続けました。アルピーヌに何度かかなり接近され、黒い雲がピットの向こうに見えたので、難しい判断を強いられましたが、チームは正しい選択をしてくれました。スパで勝てたことは最高ですし、チャンピオン争いの点でも、最大のポイントを獲得できてとても嬉しいです。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
良いレースが戦えると思っていただけに、今日の結果は本当に残念です。4番手グリッドからのスタートでトップに立ち、その後は燃料消費を抑えて最初のスティントでの周回数を1周伸ばすこともできました。このようなコースでは、大抵フルコースイエローが何度も出るのでそれも味方しました。しかし、その後トラブルが発生し、車両を停めざるを得ませんでした。7号車が優勝できたことは本当に嬉しく思います。彼らは見事な仕事ぶりで、チームに今季初優勝をもたらしてくれました。次戦ル・マンで勝利を争うためにも、今日のトラブルについて解明しなくてはなりません。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
スパでノーポイントに終わったのは本当に残念です。とても良いレースができると思っていました。セブは最初のスティントで素晴らしいスタートを切りましたが、その後トラブルに見舞われてしまいました。レースでは時にあることです。このトラブルがル・マンでなくここスパで発生したことは不幸中の幸いですが、悔しいですし、チャンピオン争いにおいても厳しい結果となってしまいました。一方で、チームが今季初優勝を飾ったことは嬉しいです。7号車は素晴らしい戦いぶりでチームに勝利をもたらしてくれました。ここからはチーム一丸となって、ル・マンに集中します。
平川亮(8号車 ドライバー):
今日は残念ながら我々8号車の日ではありませんでした。ブレンドン同様、私も決勝レースで走る機会はありませんでした。セブは素晴らしい走りで一旦は首位に立ちました。リタイアに終わったとは言え、チームとしては良いパフォーマンスでしたし、シーズン初優勝を飾れたのは良かったです。マイク、可夢偉、ホセと7号車のクルー全員に祝福を送ります。これからはル・マンへの準備に専念します。TGRのチームの一員として初めて、ル・マンというビッグレースで優勝を争うことを本当に楽しみにしています。
WEC第2戦スパ・フランコルシャン6時間 決勝結果(総合順位)
順位 | No. | ドライバー名 | チーム/車種 | 周回 | トップとの差 |
1 | 7 | マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ホセ・マリア・ロペス |
TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID |
103 | |
2 | 36 | アンドレ・ネグラオ ニコラス・ラピエール マシュー・バキシビエール |
アルピーヌ・エルフ・チーム/ アルピーヌ A480-Gibson |
103 | 27.473 |
3 | 31 | ショーン・ゲラエル ロビン・フラインス レネ・ラスト |
WRT/ Oreca 07-Gibson |
103 | 1:06.185 |
4 | 41 | ルイ・アンドラーデ フェルディナンド・ハプスブルク ノルマン・ナト |
リアルチーム by WRT/ Oreca 07-Gibson |
103 | 1:40.676 |
5 | 38 | ロベルト・ゴンザレス アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ ウィル・スティーブンス |
JOTA/ Oreca 07-Gibson | 103 | 1:48.571 |
リタイア | 8 | セバスチャン・ブエミ ブレンドン・ハートレー 平川亮 |
TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID |
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