FIA世界耐久選手権(WEC)が3年ぶりに富士スピードウェイで開催されることとなり、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のハイパーカー GR010 HYBRIDがホームコースである富士スピードウェイでの初レースに挑みます。
前戦モンツァから約2か月、2022年シーズンのWECも全6戦中、残すところ2戦となりました。今第5戦は、6時間レースとして静岡県の富士スピードウェイで行われます。富士スピードウェイは東京から西に100kmほどの富士山麓に位置し、WECのレースが行われるのは2019年以来となります。TGRはこのホームコース「富士」での5連覇を目指します。
2020年シーズンのWECはここまでの4戦で激しい接近戦が繰り広げられています。7月にイタリア・モンツァで行われ、劇的な結末となった第4戦を終えた時点で、TGRはマニュファクチャラーズランキングで2位のアルピーヌに対して15ポイント差の首位を維持しています。
今季のル・マン24時間を制したセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のドライブするGR010 HYBRID 8号車は前戦モンツァで2位フィニッシュを果たし、ドライバーズランキングでは首位アルピーヌを10点差の2位で追っています。一方、2021年シーズンのWECチャンピオンである小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスの7号車は今季2勝目を目指しレース終盤まで首位を走行していましたが、他車との接触により3位フィニッシュに終わりました。
小林と平川は、既に今年、富士スピードウェイでスーパーフォーミュラのレースを戦っています。平川は4月の開幕戦で、2020年にSUPER GTで勝って以来となる富士での勝利を飾りました。
ハイパーカーとして初のル・マン24時間制覇を成し遂げた2021年のGR010 HYBRIDは、展示車としてイベントに登場することはありましたが、この週末、ついに日本のファンの皆様の前で、実際にレースを戦う姿が初披露されます。
ここ富士でのWEC戦は、チームにとって単なるホームレースという以上の意味を持ちます。GR010 HYBRIDのパワートレーンは富士スピードウェイにほど近い、東富士研究所で開発、また製造されました。この週末は東富士の多くの仲間にとって、GR010 HYBRIDがレースで戦う姿を初めて目にする機会となります。
1周4.563kmの富士スピードウェイは、今季WECが開催される中では最も1周が短いサーキットですが、1.5kmに渡る長いメインストレートを持ち、そしてまた、TGRにとってはこれまでWEC富士8戦中7勝と、最も成功したサーキットでもあります。勝利を逃したのは、TGRにとって厳しいシーズンとなった2015年のみでした。
歴史的にも、富士スピードウェイはトヨタの耐久レース車両開発において非常に重要な役割を担ってきました。トヨタ初の本格スポーツカー、トヨタ2000GTは1967年の24時間レースと1000kmレースでその速さと耐久性を証明し、両レースを制しました。1968年と1969年にはトヨタのモータースポーツ黎明期を彩った伝説の名車、トヨタ7が1000kmレースで勝利を飾っています。
1980年代には、ル・マンスタイルの耐久レースシリーズが日本でも行われるようになり、全日本スポーツプロトタイプ選手権への参戦でスポーツカーレースへと復帰したトヨタは、富士スピードウェイでは表彰台中央の常連となりました。そして、1982年には富士スピードウェイで初めて世界スポーツカー選手権が行われました。
富士山の麓に位置する富士スピードウェイは2005年に大規模な改修を受け、コースレイアウトも変更されましたが、その後、2012年に初めて現行WECのイベントが開催されて以来、レイアウトの大きな変更はありません。そして今、首都圏から最も近くに位置するサーキットである富士スピードウェイは、新たな総合モータースポーツリゾート施設として成長すべく、博物館やドライビングセンター、各種エンターテインメント施設やホテルなどが建設されている最中です。
熱狂的な日本のモータースポーツファンの皆様にとって初めてとなる、ハイパーカーが富士スピードウェイを走行している姿を観戦できるのは、9月9日(金)のそれぞれ90分間にわたる2度の公式練習セッションからです。翌10日(土)は午前中の最終練習走行で予選及び決勝レースへの準備を整え、午後3時よりハイパーカークラスの予選が行われます。6時間で争われる決勝レースは、11日(日)の日本時間午前11時にスタートが切られます。
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー)
日本のファンの皆様の前で、やっと初めてGR010 HYBRIDが実際にレースを戦うところを見ていただけることになり、とても興奮しています。ここ数年WEC日本ラウンドがなかったのは残念でしたが、それだけにこの週末は特別なものになります。レースだけでなく、トヨタ自動車の仲間、特に東富士のGRパワトレ開発部のメンバー、そして、日本のパートナー関係者などチームにとってとても大切な皆様とお会いできる機会でもあり、いつも支えてくださっている方々にお礼の言葉を届けたいと思っています。前戦モンツァでは速さが足りず、残念ながら勝利を逃してしまったので、さらに強くなって富士に挑む必要があります。もちろん、我々の目標はチームとして両タイトルを勝ち取ることですが、この週末の勝利も望んでいます。ハイパーカーのバトルは激化しており、レースはチャレンジングな混戦になるでしょうが、それがチームをより強くしてくれます。日本のファンの皆様の前で、表彰台の中央に返り咲くべく全力を尽くします。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー)
モンツァでのレースから随分時間が経ったように感じますが、その間にリフレッシュして充分な準備と共に、残り2戦に立ち向かいます。我々7号車にとってはこれまでのところ、ベストなシーズンとは言い難い状況ですが、全力でプッシュを続け、クリーンなレースで富士ではトップ争いをしたいと思っています。富士は我々のホームレースであり、これまでに多くの勝利を重ねてきたので、今年もその再現を願っていますが、それが簡単でないことはモンツァで証明されました。ハイパーカーの競争レベルはより厳しいものとなっており、何よりも8号車はいつも最強のライバルです。日本のファンの皆様に最高のレースを見ていただくべく、頑張ります。
ホセ・マリア・ロペス(7号車 ドライバー)
また日本に行くことができるのを嬉しく思います。レースをするのにも素晴らしい場所ですし、何より日本の熱狂的なモータースポーツファンの皆様と過ごすことができるのは最高です。TOYOTA GAZOO Racingのホームである日本にチームの一員として訪れることで、なかなかヨーロッパのレースには来るのが難しい日本の多くの仲間と会うことができる、特別なイベントでもあります。富士は素晴らしいサーキットで、私自身レースでの良い思い出があります。長いストレートを持つレイアウトは、高速性能に優れる我々のクルマに合っていると思いますし、力強い戦いができる週末になると思います。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー)
富士は我々にとって特別なレースであり、私自身幸運にも3勝を挙げているので、個人的にも相性の良いサーキットです。当然チームにとってとても重要なレースであり、2019年以来のWEC戦ということもあり、ホームレースである富士では力強いレースをすることが重要です。東富士の仲間はチームにとって大きな存在なので、彼らと再び会えるのも楽しみですし、彼らと好結果を祝えるよう全力を尽くします。今シーズン、ハイパーカーの競争は激しさを増しているので簡単ではないでしょうが、正しいセットアップを見出し、クリーンなレースを戦わなくてはなりません。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー)
我々が2019年に勝利を挙げて以来、随分間が空いてしまっただけに、ようやく富士に戻れることに興奮を抑えきれません。熱狂的な日本のファンの皆様はいつも独特の雰囲気を生み出してくれますし、何よりもTOYOTA GAZOO Racingにとってのホームイベントということで、本当に歓迎されていることを感じます。富士は有名なロングストレートを持つコースなので、GR010 HYBRIDであの1.5kmのストレートを全開で、母国ファンの前で走るのは本当に素晴らしい気分になると思います。シーズンも残すところ2戦となりますが、ドライバーズ選手権では首位を10ポイント差で追っているので、目標はその差を縮めることであり、勝利でそれが叶えられれば最高です。
平川 亮(8号車 ドライバー)
富士ラウンドは私にとってWECで初めての母国開催レースであり、日本のファンの皆様の前でレースをするのを本当に楽しみにしています。私自身はSUPER GTやスーパーフォーミュラ、それ以前のジュニア時代から数多く富士でレースを戦ってきていて、WECシリーズの他のどのサーキットよりも富士のことはよくわかっています。そして、何度も良いレースを戦い、今季も既に勝利を挙げているので、今週末に向けては十分に準備ができていると感じています。シーズンは残り2戦となりますが、我々はドライバーズ、マニュファクチャラーズの両選手権でタイトルを争っており、富士でもプッシュを続けます。我々の目標は明確で、また勝つために、最大限の努力をするだけです。