6月15日(日)現地時間午後4時、フランスのル・マン・サルト・サーキットで開催されていたFIA世界耐久選手権(WEC)第4戦、第93回ル・マン24時間の決勝が、長い戦いを終えてゴールを迎えました。

33万2千人もの大観衆が見守る中、8つのマニュファクチャラーから出場した21台のハイパーカーが激しい戦いを繰り広げた今大会、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は6度目の勝利を目指しました。チームは、トヨタのル・マン初挑戦から40周年を迎え、効果的なチーム戦略や緻密なドライビング、そしてファイティングスピリットでライバル達に挑みました。しかし、上位チームの圧倒的なレースペースと不運がTGRの前に立ちはだかりました。
小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリースのGR010 HYBRID 7号車は、残念ながら予選で16番手に終わり、スタート直後の1周目に他の車と接触する波乱のスタートとなりました。しかし、苦闘の末にポジションを10上げて6位でフィニッシュ。
一方、セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のGR010 HYBRID 8号車は、一時レースをリードし、トップ4争いを繰り広げていましたが、メカニカルの問題により20分以上のロスが発生、上位争いからは脱落してしまいました。それでも8号車は修復後も粘り強く走り続け、最終的に16位でチェッカーを受けました。
14日(土)午後4時、好天の下でスタートしたレースは、スタート直後から各所でバトルが展開。2台のGR010 HYBRIDは序盤から着実にポジションを上げていき、8号車がトップ6に入った一方、7号車はスタート直後に他車と接触し、車体にダメージを受けました。また、ピットレーンでのスピード違反で50秒のストップ・アンド・ゴー・ペナルティを受け、大きく順位を落とすことになりました。
8号車はソフトタイヤでの好ペースを活かし、夜間走行中に表彰台を争える位置まで浮上。さらに、レース中盤にセーフティカーが導入されたことで、各車の差が縮まり、新たなチャンスが生まれました。8号車は200周到達を前に一時首位を走行し、7号車も遅れを取り戻してトップ10圏内に浮上しました。
翌朝を迎え、レースが残り4分の1となる頃、8号車は強力なチームワークでポルシェ、フェラーリとの上位争いに加わりました。7号車も8位まで順位を上げましたが、首位争いをしている数台のレースペースが非常に速く、GR010 HYBRIDにとっては厳しい戦いが続きました。
残り4時間のところで、ピットアウトした直後に8号車の左前タイヤが突然脱落するという不運なアクシデントが発生。この影響で、8号車の上位フィニッシュの夢はここで絶たれてしまいました。ドライバーの平川は残った3輪でゆっくり走行しながらピットに戻り、メカニックたちが一丸となって迅速に左前の足回り部品を交換、7周遅れの19位でコースに復帰しました。
7号車は最後までプッシュを続け、小林の猛追によって、一時は1分以上の差があったキャデラック12号車を射程圏内に捉えるまでに迫りましたが、終盤にドライブスルーペナルティを受けてしまい、追い上げもそこまで。386周を走破し、小林は6位で24時間のチェッカーを受けました。また8号車はトップから7周差の16位でフィニッシュしました。
TGRはWECでの今季初勝利を目指し、4週間後の7月13日(日)に決勝が行われる第5戦サンパウロ6時間に挑みます。
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
はじめに、今年のル・マンへの挑戦を支えてくれたファンの皆様、パートナーの皆様、そしてトヨタの従業員全員に心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。厳しいレースになることは予想していましたが、実際、本当に厳しい戦いでした。勝利をつかむためにあらゆるチャンスを活かそうと努力しましたが、その機会は訪れませんでした。フェラーリに3連敗し、残念に思っています。来年はもっと強くなって、違うマインドで戻ってきたいと思います。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
6位という結果はもちろん期待していたものではありませんが、スタートポジションを考えると、これが精一杯だったと思います。16番手グリッドから追い上げて6位でフィニッシュできたのは、チーム全体の努力のおかげです。24時間レースは常に厳しいものですが、もっと良い結果を期待していただけに、今年は本当に残念です。我々は勝利に必要なパフォーマンスが不足していましたが、チームはいつも通り最後まで全力で戦いました。今回は勝利をつかむことができませんでしたが、来年はもっと強くなって戻ってこなければなりません。
ニック・デ・フリース(7号車 ドライバー):
このル・マンというレースでは、優勝こそがすべてであり、そのためにあるのです。我々は本当に頑張りましたが、残念ながらスピードが足りませんでした。今大会はずっとドライコンディションで、セーフティカーも1度しか入らない比較的クリーンなレースだったので、上位を争うにはレースペースが必要でした。しかし、我々にはそれがありませんでした。でも、これもレースの一部です。全てを出し切り、全力で挑んだ結果ですので後悔はありません。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
我々にとっては、間違いなく残念なレースとなりました。もっと良い結果を目指していましたが、それでも優勝争いに加わることができませんでした。安定したペースで走れていたことや、ペナルティを受けなかったおかげで、技術的な問題が発生するまでは上位争いに留まることができました。しかし、あのアクシデントで上位争いからは脱落してしまいました。それがなければ5位くらいでフィニッシュできていた可能性もあったと思います。今回何が起きたのかを分析し、来年に向けて改善点を見つけなければなりません。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
当然、我々は上位を争うという大きな期待を持ち、このレースでの勝利を目指していました。しかし、圧倒的にレースペースが不足し、クルマの信頼性のトラブルにも見舞われてしまいました。それでも、我々は最後まで全力で戦い、ずっと努力を続けてくれたチーム全員を誇りに思います。クルマのパフォーマンスが不足していたにもかかわらず、夜間には一時首位を走り、表彰台を争える位置で戦うこともできました。この2週間、チーム全員が素晴らしい仕事をしてくれました。数日後には再び集まり、今回のレースでの経験を活かして、来年の巻き返しに向けて準備を始めます。
平川亮(8号車 ドライバー):
本当に厳しいレースで、過酷な24時間でしたが、我々は最後までチーム一丸となって戦い続けました。私がステアリングを握っていたときにトラブルに見舞われたのは不運で、苦い経験となりました。今、我々にできることは前を向いて、次のサンパウロ戦に向けて最善の準備を進めることだけです。ファンの皆様、スポンサーとパートナーの皆様、チームのみんな、そしてトヨタの従業員の皆様に感謝いたします。2026年のル・マンに向けた準備は今から始まります。共に頑張りましょう。
WEC第4戦 ル・マン24時間 最終結果(※)
順位 | No. | ドライバー名 | チーム/車種 | 周回 | トップとの差 |
1 | 83 | ロバート・クビサ イーフェイ・イエ フィル・ハンソン | AFコルセ/ フェラーリ 499P | 387 | |
2 | 6 | マット・キャンベル ケビン・エストレ ローレンス・バンスール | ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ/ ポルシェ 963 | 387 | 14.084 |
3 | 51 | アレッサンドロ・ピエール・グイディ ジェームス・カラド アントニオ・ジョビナッツィ | フェラーリAFコルセ/ フェラーリ 499P | 387 | 28.487 |
4 | 50 | アントニオ・フオコ ミゲル・モリーナ ニクラス・ニールセン | フェラーリAFコルセ/ フェラーリ 499P | 387 | 29.666 |
5 | 12 | アレックス・リン ノルマン・ナト ウィル・スティーブンス | キャデラック・ハーツ・チームJOTA/ キャデラック V-Series.R | 387 | 2:18.639 |
6 | 7 | マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ニック・デ・フリース | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 386 | 1 Lap |
16 | 8 | セバスチャン・ブエミ ブレンドン・ハートレー 平川亮 | TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID | 380 | 7 Laps |
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