10月17日(日)、2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦ラリー・スペインの最終日デイ3が、スペイン北東部、サロウのサービスパークを中心に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(ヤリスWRC 33号車)が総合2位で、セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(1号車)が総合4位で、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)が総合5位でフィニッシュ。オジエはドライバー選手権、チームはマニュファクチャラー選手権首位の座を守りましたが、スペインでのタイトル決定には至りませんでした。
ラリー・スペインの最終日デイ3は、サービスパークの西側エリアで、2本のステージをサービスを挟むことなく各2回走行。4本のステージの合計距離は50.90kmと、3日間で最短の1日でした。ステージの周辺は朝から雲が多くどんよりとした天気でしたが、3本目のステージまではドライコンディションが保たれました。しかし、ボーナスの選手権ポイントがかかる最終のパワーステージでは、スタート後ほどなくして雨が降り始め、路面は一部がウェットコンディションとなりました。
デイ2終了時点で首位のライバルと16.4秒差の総合2位につけていたエバンスは、最終日の4本のステージを手堅く走行。日が昇る前にスタートした、オープニングのSS14では3番手タイムを記録し、ボーナスの選手権ポイントがかかるパワーステージのSS17でも3番手タイムを刻み、総合2位でフィニッシュ。優勝はなりませんでしたが、オジエとのポイント差を24ポイントから17ポイントに縮め、次の最終戦ラリー・モンツァに逆転タイトル獲得の可能性を残しました。
総合4位のライバルと1.2秒差の総合3位につけていたオジエは、渾身の走りでタイム差を拡大しようと試みましたが、逆転を許し総合4位でフィニッシュ。それでもドライバー選手権首位の座は守り、依然有利な立場で次のシリーズ最終戦に臨むことになりました。
エバンスが総合2位、オジエが総合4位でフィニッシュし、またボーナスポイントを得られるパワーステージでそれぞれ3番手、4番手のタイムを記録したことにより、チームはマニュファクチャラー選手権首位の座を守り、2位のライバルチームとの差は47ポイントとなりました。最終戦で獲得可能な最大ポイントは52ポイントのため、今回の結果によってまた一歩マニュファクチャラーチャンピオンに近づきました。
なお、ロバンペラが総合5位に入ったことで、ヤリスWRCは3台がトップ5フィニッシュを達成。ロバンペラは、パワーステージで5番手タイムを記録し、ボーナスの1ポイントも獲得しました。なお、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムによりヤリスWRCで出場の勝田貴元は、SS16で5番手タイムを記録するなど、終盤調子を上げてラリー・スペインをフィニッシュしました。
<<豊田 章男 (チームオーナー)>>
ラリー・スペインの前、ヤリ-マティは私にメッセージを送ってくれていました。
「チーム代表となって、もう一度、マニュファクチャラーズタイトルを掴みアキオとお祝いするのが自分の夢です」
3年前のヤリ-マティはとても苦しいシーズンを送っていました。最終戦でようやく初勝利をあげ、その勝利でチームタイトルが決まり、当時そのことが本当に嬉しかったのを覚えています。その日、静岡県でラリーに出ていた私はその知らせを聞き、絶叫するように喜び、そのままお祝いのメッセージを送っていました。あの歓喜の絶叫が”代表としてのモチベーション”に繋がり、チームを勝利へ導く一助になればとても嬉しく思います(笑)次の最終戦モンツァ、ヤリ-マティの夢が叶うと信じています。一緒に喜びましょう!
ドライバーズチャンピオンも今回は決まりませんでした。セブとジュリアン、エルフィンとスコットには最後の最後まで悔いのない走りをしてもらいたいと思います。チームはそのために最高のクルマを準備してあげてください。次のラリーはヤリスWRCが走る最後の大会です。2017年WRCに再参戦した時から、我々が言い続けていたのは「常に”今のヤリス”が一番強くなるようにしよう!」という言葉でした。「最後に走るヤリスが一番強かった」とドライバー達にも、ファンの皆さまにも言ってもらえるような戦いを最後に見せたいと思います。チームのみんな、最後までよろしくお願いします!
追伸 ジュリアンへ
ジュリアンにとっても次が最後のラリーになりますね。モンツァが君にとっても最高のラリーになることを祈っています。その姿を日本で見れたら最高でした。それだけは今も残念でなりません。応援しています。
<<ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)>>
最終的に、今週末の我々には期待していたほどの強さがありませんでした。今後のためにも、なぜ思うようにタイムが出なかったのか、どうすればもっと上手く対応できるのかを分析し、学ぶことが重要です。とはいえ、ポジティブな要素もあります。まず、3台が何も問題なくトップ5でフィニッシュしたこと。また、エルフィンが総合2位に入ったのは彼にとって良い結果ですし、最終戦までドライバーズタイトル争いが続くことになり、チャンピオンシップ全体が盛り上がることになりました。マニュファクチャラー選手権は今回、私たちにとって有利な結果にはなりませんでしたが、次のモンツァでは両タイトルを華々しく獲得したいと思います。
<<セバスチャン・オジエ (ヤリスWRC 1号車)>>
今回は総合4位以上を目標にしていたのですが、それでもドライバー選手権争いにおいては十分なポイントを獲得することができました。今日は接戦となり、最初の3本のステージは全力でトライしたのですが、最後のステージで雨が降ってしまい、そこでリスクを冒さないという私の戦略が功を奏さず、安全に走ることを選びました。それでも、全体的には今週末がタイトル争いにおいてポジティブな一歩になったことは間違いないですし、それが何よりも重要なことです。タイトル争いはまだ終わっていないので、モンツァでは昨年の成功を再現できるように頑張りたいと思います。
<<エルフィン・エバンス (ヤリスWRC 33号車)>>
総合2位というのはポジティブな結果ではありますが、ラリーのスタートがとても良かっただけに、手放しでは喜べません。残念ながら、少しずつ良い感覚が薄れていき、クルマとの完全な一体感を得られなくなりました。今週末は、本当はもう少し速く走れたと思います。ただし、良かったこともあります。ポイント差を縮めることができましたし、タイトルの可能性はまだ残っています。1戦で詰めるには大き過ぎる差ではありますが、昨年自分達が経験したように、最後まで何が起こるかわからないので、モンツァではもう一度ベストを尽くして戦います。
<<カッレ・ロバンペラ (ヤリスWRC 69号車)>>
全体的には、とても良い週末でした。特に金曜日には多くのことを学び、週末が進むにつれて、セットアップと自分のドライビングの両方が良くなっていきました。今日はパワーステージ優勝を目指していたのですが、コンディションがトリッキーで、後続の選手達が走る頃には路面が乾いてしまっていたので、自分にチャンスはありませんでした。完璧なフィーリングを得ることができず、思うようなペースでは走れませんでしたが、自分のベストを尽くしましたし、中身のある週末になったと思います。
<<ラリー・スペイン デイ3の結果>>
1 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) 2h34m11.8s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ ヤリス WRC) +24.1s
3 ダニ・ソルド/カンディド・カレーラ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +35.3s
4 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (トヨタ ヤリス WRC) +42.1s
5 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ ヤリス WRC) +1m31.8s
6 ガス・グリーンスミス/クリス・パターソン (フォード フィエスタ WRC) +4m17.3s
7 オリバー・ソルベルグ/クレイグ・ドリュー (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +4m26.7s
8 ニル・ソランス/マルク・マルティ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +4m34.9s
9 エリック・カミリ/マキシム・ヴィルモ (シトロエン C3 Rally2) +9m49.4s
10 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ ファビア RALLY2 evo) +10m05.9s
(現地時間10月17日15時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
<<次回のイベント情報>>
WRC次戦は、11月19日(木)から21日(日)にかけてイタリア北部で開催される、第12戦「ラリー・モンツァ」です。最終戦は本来「ラリー・ジャパン」として日本で開催される予定でしたが中止となり、その代替イベントとして、昨年初めてWRCとして開催されたモンツァが、今年も最終戦を担うことになりました。ラリー・モンツァは、伝統あるモンツァ・サーキットを中心に行われるターマックラリーです。レーシングコースを含むサーキット内の道と、サーキット外の山岳道路が戦いの舞台となり、今年は、昨年よりも山岳道路の割合が増えているのが特徴です。
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