WRC 第5戦 ラリー・ポルトガル デイ4 オジエが前戦クロアチアに続き今シーズン2勝目を獲得
エバンスは総合6位でドライバー選手権2位の座を守る

2024.5.13(月)- 1:40配信

5月12日(日)、2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・ポルトガルの競技最終日デイ4が、ポルトガル北部マトジニョスのサービスパークを起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(GR YARIS Rally1 HYBRID 17号車)が優勝。エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)は総合6位で、前日のデイリタイアから再出走した勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)とカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)は、それぞれ総合29位、総合31位で完走しました。

ヴァンサン・ランデ、セバスチャン・オジエ
ヴァンサン・ランデ、セバスチャン・オジエ

ラリー・ポルトガルの最終日は、ポルト近郊マトジニョスのサービスパークを起点に、2本のステージを途中にサービスを挟むことなく各2回走行。4本のステージの合計距離は62.18kmでした。日曜日を迎えたポルトガル北部の空は雲が多く、ステージの一部は濃い霧に覆われるなど、視界があまり良くない中で戦いがスタートしました。

前日のデイ3で、総合2位のオィット・タナック(ヒョンデ)に11.9秒差をつけて首位に立ったオジエは、霧に覆われたデイ4オープニングのSS19でベストタイムを記録。タイム差を18.1秒に拡げました。続くSS20では3番手タイム、SS21では4番手タイムとややペースを落としましたが、それでも差は10.1秒。そして迎えた最終ステージのSS22を4番手タイムで走り抜いたオジエは7.9秒差でリードを守り切り、前戦クロアチア・ラリーに続く今シーズン2勝目を獲得。開幕戦ラリー・モンテカルロでの総合2位を含め、今季出場した3戦全てで表彰台に登壇することになりました。また、今回の優勝によって、オジエのラリー・ポルトガルでの通算優勝回数は「6」となりました。オジエは既に2017年の優勝で伝説的なドライバーであるマルク・アレンの持つ5勝の最多勝利記録に並んでいましたが、今回の優勝により単独トップとなりました。TGR-WRTとしては、WRCのカレンダーに含まれなかった2020年を除き、ポルトガルではこれで2019年から5大会連続となる優勝となり、オジエを含めて4人のウイナーを輩出することになりました。また、WRCとして開催されたラリー・ポルトガルでのトヨタの通算優勝回数は「8」となり、ランチアとシトロエンが持つポルトガル最多勝利記録に並びました。

土曜日のデイ3で総合6位に順位を上げたエバンスは、スーパーサンデーでのポイント獲得を目標に最終日に臨みました。しかし、最後から2本目のSS21でクルマの冷却系にダメージを負い、リエゾン(移動区間)でそれを修理して最終ステージを走行。総合6位の座を守り切り、貴重な選手権ポイントを獲得しました。その結果、エバンスはドライバー選手権2位の座を守りましたが、首位とのポイント差は24となりました。

デイ3でデイリタイアを喫した勝田とロバンペラは再出走を果たし、勝田はスーパーサンデー5位、ロバンペラはスーパーサンデー6位でポイントを獲得。さらに、ボーナスの選手権ポイントを獲得可能な最終SSの「パワーステージ」では、ロバンペラが3番手タイム、勝田が5番手タイムで両者ともポイントを獲得しました。マニュファクチャラー選手権では依然僅差の戦いが続いており、TGR-WRTはランキング2位に後退しましたが、トップのチームとは4ポイント差につけています。

なお、サポート選手権のWRC2では、ヤン・ソランス/ロドリゴ・サンフアン組(テオ・マーティン・モータースポーツ)が、GR Yaris Rally2にWRCイベントでの初優勝をもたらしました。また、スペイン人ドライバーのソランスにとっても、WRC2での優勝は今回が初でした。

<<豊田章男 (TGR-WRT会長)>>
セブ、ヴァンサン、2連勝おめでとう!

ポルトガルのどんなに厳しいグラベルでも、セブは終始落ち着いた走りを見せてくれました。痺れるような接戦が続いていても、サービスに戻ってきたセブは、ファンに笑顔で応えてくれていました。なにかトラブルが起きても、エンジニアたちに落ち着いて状況を伝え、クルマをまたコースに戻していってくれました。そして、誰よりも速いタイムでゴールに帰ってきてくれる。そんな”真のプロ”の仕事をしてくれるドライバーがチームにいてくれることを本当にありがたく思います。セブ、今回も、ありがとう。

ラリーポルトガルでは、他にも”悔しかったこと”と、”嬉しかったこと”がひとつずつありました。悔しかったのは、他の3台が無事には走りきれなかったこと。昨年も優勝はできたものの、他の2台は走りきれませんでした。今年こそは”全車がトラブルなく走り切る”ことを目標としていましたが、悔しい結果となってしまいました。そんな中でも嬉しかったことは「どんなトラブルが起きても、チームが以前より落ち着いていた」と私の耳に伝わってきたことです。今回も様々なトラブルが起きましたが、みんなは常に冷静でいることに努め、解決方法を見出そうとしていたそうです。チームの成長を感じられることを本当に嬉しく感じます。

メンバーひとりひとりが強くなることでチームは強くなっていきます。チームが強くなることで、GR YARIS Rally1 HYBRIDは”もっといいクルマ”になっていきます。そして、GR YARIS Rally1 HYBRIDが”もっといいクルマ”になれば、他のトヨタのクルマも”もっといいクルマ”になっていきます。

今シーズン、まだまだ厳しい戦いが続きますが、チームのみんなと成長を続けていければと思います。

追伸:スコットへ
忘れ物には気をつけましょう! 笑
でもバックアップは素晴らしかったね。

追伸:エルフィンへ
私のコ・ドライバーも忘れ物が多いから気持ちはわかるよ!
僕たちドライバーももっとコ・ドライバーをサポートしていこう! 笑

<<ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)>>
ラリーで勝った時は、いつだって特別な気持ちになります。今回のポルトガルでもセブとともに勝利を手にし、この素晴らしいイベントでの勝利を継続できたことをとても嬉しく思います。このようなイベントでのセブの素晴らしいアプローチと、プレッシャーがかかる状況での戦いかたを目にすることができたのは素晴らしいことですし、彼が8回も世界王者になったこと、そしてポルトガルで6回優勝した理由がよく分かりました。もちろん、マニュファクチャラー選手権では思うようにポイントを獲得できなかったので、全体としては少々複雑な気分です。それでも、このような状況であるからこそ、次のイベントでは巻き返さなければなりません。

<<カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 HYBRID 69号車)>>
昨日は残念な一日になってしまいまいましたが、クルマを修理してくれたチームには心から感謝していますし、重要なポイントを取り逃してしまったことを申し訳なく思います。今日はラリーに復帰できて良かったですが、出走順が早く、路面をクリーニングしながら走るのは予想以上に大変なことでした。パワーステージでは本当にベストを尽くしましたし、いい走りができたとも思います。それでも路面のクリーニングの影響により、自分よりも後に走ったドライバーたちはより速いタイムを出していました。とはいえ、数ポイントを獲得できたのでチームの助けにはなれたのではないかと思います。望んでいたような週末にはなりませんでしたが、より強くなって戻って来るつもりです。

<<エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 HYBRID 33号車)>>
今朝は、昨日よりは少し調子が良かったのですが、3本目のステージでクルマの下部に岩が当たりラジエーターを破損してしまいました。その後、EVモードで走行を続けなくてはならず、なんとか修理してフィニッシュすることができましたが、残念ながら今日のポイント加算は叶いませんでした。クルマのフィーリングは間違いなく良くなったのですが、まだいくつか改善すべき課題が残っています。それでも、この週末で答えをいくつか見つけることができました。次のサルディニアでは巻き返し、より力強く戦えるように頑張ります。

<<セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 HYBRID 17号車)>>
このラリーでまた優勝することができて素晴らしい気分です。記録を更新できたことも嬉しいですし、この瞬間を楽しみ、大切にしなければなりません。既に数年前にマルク・アレンの5勝という優勝記録には並んでいましたが、そのことに満足していなかったわけではありません。なぜなら彼は自分にとってレジェンドですし、とても尊敬していましたから。それでも、いつ記録を更新するのかと何度も聞かれ続けてきましたが、ついに実現しました。今回もみんなにとって激しい戦いになり、クルマの中でリラックスできる瞬間はありませんでした。100%のフィーリングが得られない時は最大限のリスクを冒すことなく、それでも常に優勝争いに加わることができていました。自分たちのマネージメントは、パーフェクトに近かったと自負しています。

<<勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 HYBRID 18号車)>>
もっといい結果を得ることができたはずなので、昨日のリタイアは、もちろんとても悔しいです。それでも今回クルマのフィーリングは、昨日のあの瞬間までは非常に良好でした。今日は何本かのステージでハイブリッドが使えず、出走順も良くなかったので簡単ではありませんでしたが、そのような状況でも数ポイント獲得できたのは良かったです。今回は毎ステージ、全力でプッシュし続けた結果、多くのことを学ぶことができました。ポジティブな収穫もあったので、今はもう次のサルディニアに集中していますし、しっかりと準備をしてプッシュし続けます。

<<ラリー・ポルトガルの結果>>
1 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) 3h41m32.3s
2 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +7.9s
3 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +1m09.8s
4 アドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア (フォード Puma Rally1 HYBRID) +1m47.8s
5 ダニ・ソルド/カンディド・カレーラ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +2m48.9s
6 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +6m36.0s
7 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シトロエン C3 Rally2) +11m48.4s
8 ヤン・ソランス/ロドリゴ・サンフアン (トヨタ GR Yaris Rally2) +11m52.9s
9 ジョシュア・マッカーリーン/ジェームズ・フルトン (シュコダ Fabia RS Rally2) +11m56.1s
10 ラウリ・ヨーナ/ヤンニ・フッシ (シュコダ Fabia RS Rally2) +13m40.3s
29 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +1h10m33.8s
31 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +1h20m54.4s
(現地時間5月12日16時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)

<<第5戦終了時点でのドライバー選手権順位>>
1 ティエリー・ヌービル 110ポイント
2 エルフィン・エバンス 86ポイント
3 オィット・タナック 79ポイント
4 アドリアン・フォルモー 71ポイント
5 セバスチャン・オジエ 70ポイント
6 勝田 貴元 49ポイント
7 カッレ・ロバンペラ 36ポイント
8 エサペッカ・ラッピ 23ポイント
9 アンドレアス・ミケルセン 14ポイント
10 オリバー・ソルベルグ 12ポイント

<<第5戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位>>
1 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 219ポイント
2 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 215ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 110ポイント

<<次回のイベント情報>>
WRC次戦は、5月31日から6月2日にかけて開催される、第6戦「ラリー・イタリア サルディニア」です。地中海に浮かぶ、イタリアのサルディニア島を舞台とするこのラリーの路面はグラベル。比較的速度の高いステージ構成でありながらも、全体的に道幅は狭く、道のすぐ近くに木や岩がせり出しているため、高いコントロール能力が求められます。路面はその多くが目の細い砂状のグラベルに覆われていますが、ラリーカーが何台か走りグラベルが掃けると硬い岩盤や石が現れます。また、場所によっては深い轍も刻まれるなど、路面の状態が大きく変化するのがこのラリーの特長です。さらに、この時期は気温がかなり高くなることも多いため、選手だけでなく、クルマやタイヤにも厳しいラリーといえます。

69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)
69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)
33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)
33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)
表彰式
表彰式
18号車(勝田 貴元、アーロン・ジョンストン)
18号車(勝田 貴元、アーロン・ジョンストン)

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