86GRMN

インプレッション / IMPRESSION

本当に勝てるクルマ、速いクルマというのは、
乗り心地がいい。

――まずは走らせてみて、フィーリングとしてはどのようなクルマでしょうか?

影山:今、ニュルを走っているんですけど、路面はチョイ濡れです。非常に難しいコンディションで走っているんですけど、もう僕は笑顔で走れています。それがこのクルマのポテンシャルを表していると思います。つまり「非常に扱いやすい」という事がまず僕の第一のセールスですね。スポーツカーというと足が硬い、定常域では乗り心地が悪くて難しいというイメージを持たれているんですけど、僕の経験の中から、勝てるクルマ・速いクルマというのは乗り心地が良くて扱いやすいクルマなんですね。24時間レースで優勝するクルマももちろんそうですが、やはり守備範囲が広くてどんな路面コンディションにも対応してくれる、それでいてドライバーに疲労度が少ないというクルマが、本当に速くて強いクルマだと思います。

――その扱いやすさ、乗り心地の良さはどこからきているのでしょう?

影山:一つ一つ挙げていったらキリがないですが、まず一番大事な部分で「ボディの剛性」、人間でいうと一番メインになる骨格の部分の完成度が増したというか、最終的な完成形が出来たということですね。定常域の乗り心地も非常に良くなっていますし、ココ一番ほしいなって所でも腰がありますし、ボディ剛性が上がっていますので、仕上がりのいいサスペンションを活かすことができるんですね。せっかくいいサスペンションがついていても、ボディに逃げてしまうとまったく意味がないんですが、ダイレクトに支えてくれていますので、足まわりの良さがちゃんと活かされていますね。

縁石を踏んでもボディに衝撃がこない。
これ程、しなやかなサスペンションはなかなかない。

――本当に楽しそうに運転されますね。

影山:いや楽しいですねぇ。こんなにしなやかで、サスペンションが気持ちよく動いてくれるっていうクルマはなかなかないですよ。気持ち良くないですか?すごく乗り心地しなやかですよね。足の動きが細かい所を吸収してくれて粘りがあるんですよね。レーシングカーからフィードバックしたクルマって言うとサスペンションのストロークがないっていう風に思われるかと思うんですけど、本当にいいクルマってこうやって動くんですよね。縁石踏んでもですね、ボディに衝撃が来ないですね。いいクルマって、いい足がついてるクルマって、縁石乗ってもボディに全然影響が及ばないんで縁石に乗れるんですよ。このまま、また24時間このクルマでいきたいくらいですね。

――そもそも影山さんと86の出会いはどのようなものだったか教えてください。

影山:僕と86の最初の出会いはプロトタイプからですね。最初にニュルに来た時に、なんのクルマでレースに出るのかって聞かされずに来まして(笑)、ガレージで初めて対面したのが唐草模様の86でした。ブレーキローターも新品でしたし、キャリパーもどう見てもレース用じゃなくて、本当にノーマルのキャリパーが前後共ついていましたし、フェンダーの中を覗いてもまったく走った形跡がない状態で運びこまれていたので、逆に言うとですね「あっ本気でニュルで86を鍛えるんだな」っていうのがその時の僕の印象でしたね。それから86でニュル参戦が始まったんですが、年々やはりクルマのポテンシャルが上がって、我々ドライバーの要求にどんどんどんどん答えていただいて、86の完成度・信頼性も向上していきましたし、その意味で86GRMNはニュルで本当に育てられた、鍛えられた本当のクルマですね。

低速から効く空力パーツ。
ニュル優勝車に非常に近い仕上がりになっている。

――ニュルの86と86GRMN、比較していかがでしょう?レースからのフィードバックに関してもお聞かせ願えればと思います。

影山:最終的に去年の24時間レースで86でクラス優勝することができたんですが、その時の86のポテンシャル、乗り心地を含めてですね、非常に近いものに仕上がっていると思います。空力パーツが、フロントスポイラーがまさにニュルで優勝した時のパーツそのものなんですね。非常に回頭性が向上しますし、高い速度だけではなくて、本当に80km/100kmくらいの領域から効果が出るような、通常域の街中でも高速道路走っていても効果を感じていただけるような前後の空力のパーツをつけています。やっぱり空力パーツって、下からリニアに車速に比例して効いてくれるのが一番良くて、高い速度だけ効いて、下にいって抜けちゃうのが最悪なんですね。だからこのエアロは本当に低速から効いてくれるので運転していても全然違和感がないし、安心感が大きいです。(ニュルの登りのコーナーを走りながら)こういう所も大体登りでフロントのダウンフォースが抜けちゃうんですけど非常に前の食いつきがいいですね。また、レース車との比較でいうと、レースの時にはスリックタイヤを履いて走る訳ですが、86GRMNのタイヤはこのクルマ専用にBSさんと共同で開発したPOTENZA RE-71Rというタイヤを履いています。中の構造も特別にこの86GRMN用に作っていただいたタイヤですので、非常にバランスが良いです。

長距離乗っても疲れないシート。
このまま24時間走りたいくらいですね。

――外装だけじゃなく内装もかなり手が加えられています。ツーシーターになり、よりレーシーになりました。

影山:そうですね。シートに関してもレカロさんにこのクルマ専用のモノを作っていただいたんですけど、ホールド感が高くて圧迫感がないんですね。普通スポーツシートというと、かなり覆い包み込まれて、ややもすると圧迫感があって疲労感が出てしまうんですけど、このシートは本当に必要な所だけ支えてくれる、そして固さも適度にありますのでホールド感がありながらも、長距離乗ってもまったく疲労感が少ないシートになっています。本当に1,000km走っても全く疲れないクルマですね。このまま24時間レースをこのクルマで出たいなと思うくらいのクルマに仕上がっています。また内装に関しても、非常に落ち着きのある黒をベースにしてポイントで赤を使って、それを上品に配置して、派手さを抑えつつ特別感を持たせた仕上がりになっていると思います。例えばこのステアリングにしてもアルカンターラ®という素材を使ってまして、通常のバックスキンなんかですと汚れがすごく目立つんですけれど、これは軽く水拭きをしていただくと簡単に汚れが取れるので、いつまでも室内を綺麗にしておける。非常に面白い素材を使っていると思います。

――音もベースの86と比べると随分と変わった印象ですね。軽快になったというか。

影山:4,000回転以上でエンジンの音が急激に変わるんです。排気の部分も手を加えていただいて4,000回転以上では非常に心地良い音、レーシングサウンドと言いますかね、ある意味こう排気音プラス吸気音もあがってるような音が楽しめると思います。

いわば 「究極のナンバー付きレーシングカー」。
いいクルマというのはこういうクルマ、と感じてほしい。

――ニュルを今日1日走ってみて、あらためてこのクルマの魅力はなんでしょう?

影山:総合力ですね。もう何て言うのかな「手の内に入るクルマ」って言いますかね。非常に守備範囲の広い、ドライバーのちょっとしたミスもクルマがカバーしてくれますし、オーバースピードで入っても足の粘りでコースアウトを防いでくれたり、アンダーステアを防いでくれたりっていう良き相棒ですかね。お互いドライバーがクルマを信頼できるっていう懐の深いクルマですね。正直な感想は「究極のナンバー付きレーシングカー」って言えるかもしれないですね。

――今回この86GRMNが100台限定で発売されます。最後に、購入を検討されているドライバーの皆様にメッセージをお願いします。

影山:今回この86GRMNがいよいよお客様にお渡しできるっていうことが、本当にこの上ない喜びです。唐草から始まった僕の86との付き合いですけど、僕が育てたなんておこがましいですけど、このクルマに関わってこれていよいよこの86GRMNが世に出るっていうのはすごくうれしいです。本当に僕が自信をもってお勧めできる「ニュルで安定して速く走れるクルマっていうのは、いいクルマっていうのはこういうクルマなんだ」っていうのをね、皆さんに乗っていただいて是非感じていただきたいなって思います。

※“アルカンターラ®”はアルカンターラ社の登録商標です。