欧州走破で知った奥深きクルマ文化 A lesson in European car culture

ポルトガルをスタート地点にドイツ、イギリスを経て厳冬期の北欧へ。欧州走破では、クルマがそれぞれの国に深く根付いた“文化”であることを体験していった。例えば、ドイツのアウトバーン。時速無制限のエリアが設定され、運転者は自らの技量に合った速度でクルマを走らせる。そこには整然としたルールとマナーがあり、美しく流れるようにクルマが走っている。そして、文化の土台となっているのは、「走る」「止まる」「曲がる」というクルマの基本性能の高さだった。

求められる性能が日本とは違う

高い車速のカントリーロードが続き、ラウンドアバウトで減速し、次の街へと道が続いていく。ヨーロッパの多くの一般道においても日本とは違う車速域を使って走っていることを知った。マイナス20度を下回るような北欧の雪道でも、求められるレベルの高さは変わらない。突然現れるトナカイの群れ、対向車が巻き上げる雪煙に瞬時に対応することが絶対に必要な条件。クルマは、文化であると同時に、そこで暮らす人々のライフラインでもある。

クルマの未来を夢想する

パーキングには日本に比べればはるかに多いEV車用の充電施設があり、クルマの未来を予感させる。クルマ文化発祥の地であるヨーロッパを走ることは、蓄積された文化を知ることでもあり同時に、クルマの未来を走ることだったのかもしれない。

走破地

ヨーロッパ大陸

走破国

23カ国

走破距離

20,800 km

走破メンバー

141名

走破日数

55日間

  • TEAM1:2017年8月28日–9月21日
  • TEAM2:2017年9月20日–10月19日
  • TEAM3:2017年11月29日–12月22日

走破車両

のべ9車種

  • C-HR HV
  • ヤリスHV
  • プリウスPHV
  • アイゴ/カローラ
  • GT86
  • ランドクルーザー200
  • プロエース/オーリスHV
  • RAV4 HV
  • MIRAI

No.1

The challenge of winding hills ワインディング登攀で求められるもの

From Granada to Mojacar 30, August 2017

スペインのシエラネバダ山脈の麓は、世界各国からプロトタイプが集まる開発の最前線。標高700mから2500mへと登る長いワインディングが続く。C-HR HVを運転したエンジニアリング情報管理部の宇佐美は、「この坂を登るには、やはりパワーが必要なんですよね」と語る。まずは道が求める性能を知ることがクルマづくりの第一歩になる。

No.2

Different views on acceleration 加減速の速度域の違い

From Barcelona to Avignon 4, September 2017

高い車速で走り、ラウンドアバウトで30kphほどに減速し、また一気に加速する。TMEに所属する三輪は言う。「完全に止まった状態から50kphに加速する日本と違い、ヨーロッパでは30kphから100kphへと加速する性能が求められるんです」。一般道においても、ヨーロッパは車速が高い。加減速の速度域の違いを体に馴染ませていく。

No.3

Data versus the real thing データと実際の道の違い

From Praha to Stuttgart 15, September 2017

ハンガリー、ポーランド、チェコと毎日違う国を走ると、環境がガラリと変わる。東欧の田舎道では、パッチワークのように舗装されていた。日本ではパソコンでボデー強度のシミュレーションを行っている車両実験部の藤井は、「ヨーロッパの道は世界中で見れば“いい道”なんです。でも実際は厳しい」。その凸凹道を毎日、高い車速で走っていく。

No.4

Beauty on the autobahn 速度無制限の道の美しさ

From Stuttgart to Nürburgring 18, September 2017

ドイツのアウトバーンが「美しい」と、凄腕技能養成部の関谷の目には映っていた。スムースにレーンチェンジをし、速度の速いクルマと遅いクルマが混在していても秩序が保たれている。その“美しさ”を実現しているのは、ドライバーのクルマへの意識と基本性能の高さ。その姿を「クルマがクルマらしく走れる国」と関谷は、表現した。

No.5

The autobahn and car culture 高速で感じるクルマ文化の本質

From Cologne to Stuttgart 25, September 2017

クルマ文化とは、単にクルマの性能が高いことを指すのではない。トヨタ自動車九州設計部の前田がアウトバーンで感じたのは、「意思の重要性」だという。「ウィンカーを出し意思表示をしたら、必ず入れてくれるんです」。高速で走りながら他のクルマと意思疎通ができること。成熟した人とクルマの関係を知ることも、走破の目的の一つ。

No.6

Fun: The key to the future 運転を楽しむ感性こそが、道標

From Düsseldorf to The Hague 3, October 2017

オランダのハーグへと向かう途中で訪れたディーラーで語られたのは、ヨーロッパにおける「EVの波」。HVシステム制御開発部の栗原は、「ストップ&ゴーが少なく、高速で走る状況の多いヨーロッパに適したクルマ」について思いを馳せる。だが、必要なのは燃費性能だけでなく「FUN TO DRIVE」。その感性が、未来へと繋がる道標となる。

No.7

The human element in cars 体験が、クルマづくりの糧となる

From Birmingham to Windermere 9, October 2017

車両開発部の中西は、道路状況だけでなく縁石やガードレールの高さまで調査をしていた。新たに作るテストコースの管理者でもある中西にとっては、目に映るすべてが仕事へと直結している。「人の経験や感覚はすごいんです。機械に負けないアナライザーですから」。欧州走破での“体験”は、テストコースに落とし込まれ、良いクルマづくりへの糧となる。

No.8

Applying the lessons from Europe ヨーロッパで得た、未来への手応え

From Valenciennes to Spa 18, October 2017

凄腕技能養成部の田中は、ヨーロッパのさまざまな場面で要求された「さらにいいクルマをつくれ、今以上にパワーが欲しい」という言葉を、「激励をいただいたように思う」と振り返った。「ヨーロッパのクルマに近づいてきた感触はあるんです。でも、もっとやらなければいけない」。その手応えこそが、いいクルマづくりへの手がかりになる。

No.9

A shared love of cars クルマへの愛を交感する道

From Odense to Hamburg 1, December 2017

ハンブルグへ向かう道中、トヨタ自動車東日本第1実験部の伊藤は、トルコから参加したケマルと話を弾ませていた。「彼、クルマが大好きなんです」。普段、同僚とは分野に特化した話は交わすが、クルマそのものについて語る機会は少ないと伊藤は話す。欧州走破は、世界の仲間達と“もっといいクルマづくり”への信念を確かめ合う道のりでもある。

No.10

Interpreting sensations on the road 道の上の感覚を解き明かす

From Białystok to Kaunas 7, December 2017

“FUN TO DRIVE”のFUNとは何か、走破隊は毎日探っている。延々と続くハイウェイを走った日のミーティングには、「欧州のユーザーは、AT車の良さに気づいているか」という議題が上がった。議論を重ねた末、単調な道を長時間走る場合はAT車の方が楽しいのではという結論に。欧州のメンバー達と走るからこそ深まる理解。クルマを走らせる楽しさに国境は引かせない。

No.11

Driving with all five senses 五感を駆使して走る

From Umeå to Arjeplog 14, December 2017

厳冬期の北欧の道では、対向車が巻き上げた雪が視界を遮断する“ホワイトアウト”が起こりやすい。MSボデー設計部の浦口は、そんな状況を“耳”を使って突破していた。「轍は音が異なります。これまで私にとって、振動音はノイズでした。視界以外の感覚で得られる情報は多々あるんです」。いいクルマづくりへのセンサーは日を追って研ぎ澄まされていく。

No.12

Ensuring a fun drive 走る楽しさの前提にあるもの

From Arvidsjaur to Rovaniemi 18, December 2017

メンバーたちが口を揃えて語るのが“基本性能”の重要さだ。広報部の佐久間は「仕事柄、新車の先進機能に目が行きがちですが、北欧では“当たり前”の性能が非常に大切です」と痛感する。走る・曲がる・止まるに加え、ミラー、ライト、ワイパー、ウォッシャーの性能が安全で楽しい運転に不可欠になる。欧州走破は、クルマを一から見直す道であった。

偉大なる大地、アフリカへ To the vast continent of Africa

長い時間をかけて蓄積され、成熟した“文化”が深く根付いた、クルマ発祥の地を巡る旅は目的地へと無事にたどり着いた。現地で数々の道を走ることでセンサーは磨かれ、研ぎ澄まされた意思はクルマの未来を紡いでいくだろう。だが、走破の旅は終わらない。次なるは、偉大なる大地、アフリカ。クルマの未来を創造するための道のりは続いていく。