Latin America 2016
No.01 Navigating the land of sand 視界を遮り、車内へと入り込む土埃
生活道で巻き起こる、土埃のホワイトアウト
埃の質が、日本と南米大陸ではまったく違う。ダートを走ると土埃によってフロントガラスが白く煙り、対向車が来ているかどうかさえわからなくなる。乾燥していれば非常に細かい埃はクルマの中に入り込み、雨が降れば粘土となってタイヤにまとわりつく。ブラジルのアマゾンを切り開いたプランテーションの町を走りながら、お客様品質部の梅津は通常よりも車間距離を長く取って安全を確保しつつ、こう話していた。
「もしも日本でこの道の写真だけを見せられたら、特別な場所なんだと思ってしまう。でも、ブラジルでは一本入ったら、猛烈な土埃が巻き上がる。この道が、生活道なんですよね。その事実を体感しています」
モクモクと侵入し、うっすらと積もる
細かな土埃が車内に入り込んでしまうという問題は、ブラジルだけに限った話ではない。その他の南米の国々でも同様の問題を抱えていた。特に国土の75%が未舗装路と言われるボリビアでは、走破隊の白い車体が半日と持たず茶色くなってしまう。ダートを2日連続ハイラックスで走った車両技術開発部の安達は、こうこぼしている。
「乗り込んだときには綺麗だったオーディオパネルが、2時間走っただけでうっすらと埃を被り、汚れてくる」
アルゼンチンでも大きな問題となっていたのは、車内に埃が入り込むダストエントリーだった。車両技術開発部の上野は、リアシートバックの脇から「モクモクと侵入してくる埃」に衝撃を受けたと語った。窓を閉め切って内気循環にしていたとしても、うっすらと細かな土埃が積もっていく。
改善のきっかけとなる、あの道の体感
それぞれの国で多寡の差はあれども、とにかく埃の細かさを実感する旅となった。エアフィルターを交換する頻度も、日本で想定されている10倍という国がほとんどだった。毎日清掃をしている走破隊でさえ、車内にうっすらと埃が積もっていくことに嫌気が差す。けれど、その土地で暮らす人々は、この状況が日常なのだ。
ある者はシートの裏側まで写真に収め、ある者はその細かな土埃をペットボトルに入れて日本へと持ち帰っていた。体感した問題は、もう他人事ではない。なぜならばあの道を走っている現地の人々の顔が浮かび、“あの道”の体感が今も残っているからだ。
crew’s VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの
独自の埃入り対策として、ベントダクトに厚さ40mmのスポンジを取り付けていた。しかしここの砂埃は非常に細かいようで、スポンジでは目が荒すぎ、効果が薄いそうだ。今度はエアコン用フィルターを取り付けトライしてみるとのこと。ブラジルの路面の砂は非常に細かく、砂と言うより粉に近い状態。粒子が小さく難しいようにも思えるが、﹁他メーカーはここまで入らない﹂とディーラーも現地クルーも口にするということは、技術的には解があるのだろう。
2016.8.25 田原工場 品質管理部/藤島裕一
未舗装路が65%も占めるボリビアでは、ドアハンドルだって当然土埃まみれ。車に乗り込もうと手を掛けた時、一瞬嫌な気持ちになってしまう。例えばワイヤレスキーのロック解除ボタン長押しでドアが少し開いてくれたら手が汚れずに乗車できるかもしれない。そんなことを考えていた時に乗車したLC200とLX。バックドアだが、インナーハンドルのおかげで手を汚さずに閉じられたのは嬉しかった(でも開く時はやっぱり汚れるのだが)。
2016.10.11 車両技術開発部/金森貴史
走行後の室内の汚れが気持ちよく無い。ここに来るまでのほとんどのガソリンスタンドにはモップがある。窓が頻繁に砂まみれになるので、それを洗い落とすために置いてあるのだ。こんなところからも、現地での使用環境がよくわかる。
2016.11.18 鋳造生技部/上本昌彦