No.02 Local voices make our cars better 現地の言葉は“改善”の宝庫

野生動物を保護するために

5大陸走破プロジェクトの一つの目的は、日本とは異なる自然環境の中で、クルマがどうやって使われているかを知ることにある。その使われ方が極端であればあるほど、「もっといいクルマ作り」へのヒントになるはずだ。

ブラジルでは、ブルーマカウという絶滅危惧種の青いインコの保護活動をしている人々と共に野生動物が暮らすオフロードを走った。トヨタはブルーマカウ・プロジェクトの活動の初期からサポートしている。雨季には水位が30cmにもなるような砂地を走り、CV車両実験部の大泉は、過酷な状況下では先端技術が求められているわけではないことを知る。
「彼らがクルマに求めているのは、ノーエレクトロニクスでした。パワーウィンドウもA/Tも、水が侵入して壊れてしまう可能性が高いのであれば、使うことができない。自分たちで直すことができる単純な構造が求められている」

塩の湖とランクル

ボリビアのウユニ塩湖では、現地のガイドから話を聞くことができた。彼らが過酷な環境で使う道具として選んだのは、やはりランドクルーザー。塩湖や砂地、あらゆる条件下で走行することを考えると、ランクル以外には考えられないという言葉をもらった。ただし、塩によるサビや、目一杯の荷物を乗せて荒地を走ることから足回りのパーツを3ヶ月に一度換えなければならないなど、激しい使い方を聞くうちに、メンバーの表情が厳しくなる。「ランクルの敵はランクル。終わりのないクルマなんです」と車両技術開発部の宮崎は語る。

世界の果てのトヨタユーザー

チリのアタカマ砂漠では5000mを超える高地で走るハイラックスと出会い、世界最大規模のエスコンディーダ銅鉱山では300台が働き続けている。ブラジルのプランテーションではサトウキビやジャガイモを積載し、アルゼンチンの油田では月に3000kmもの距離を走る。

その土地によって使われ方は違い、必然、ダメージを受ける箇所も変わってくる。バンパーが外れ、足回りがへたり、小石によってボディに亀裂が入り、塩害に悩まされる。その過酷な使用環境を実際に走り、直接話を聞くことでしか伝わらない事柄がある。同時に、世界の果てのような極地にもエンドユーザーがいることの喜び。トヨタで働く者にとって、これほどの矜持はない。

crew’s VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

我々は試験車を大切に扱う様に教わった。評価でダートを走った後はすぐに洗車し、駐停車する時はハンドルを真っ直ぐにして止めるのが当たり前。現地クルーの指摘で気になったことがある。左ハンドルのペルーでは、運転手がシートポジションを合わせる時に、腕時計がドアに当たって邪魔になるという。トヨタの検査では、腕時計は車両を傷つけないように外すのが決まりだ。お客さまの使い方を想定しながら評価するはずが、過去の慣習に縛られ過ぎると、実際とは違った使い方をしていることがあるかもしれない…。
2016.10.1 車両技術開発部 / 森本知昭

【写真】懸念点を休憩時に共有することも

ウユニ塩湖のユーザーインタビューにて。実際に車両を見せてもらうと、オイル漏れかと思うほどベタベタのエンジンルーム。実際は塩害防止でエンジンオイルと軽油を混ぜたものを塗布しているらしい。またバッテリーは固定用のステーが壊れたため、自作のダンボールボックスで処置。メーカー推奨とはかけ離れた使い方だが、これが現地ユーザーの使い方であり、不満のポイントでもあるように思う。大変参考になる。
2016.10.10 三好工場・明知工場工務部 / 安永秀俊

【写真】ダンボールでの応急処置 / 振動によって破損した箇所

この日伺ったOILカンパニーではトヨタ車を使い、30万キロを使い切る。日々オフロードメインの構内を行き来し、OILラインのメンテでは斜面を登るなどタフさを求められ、ロールバー、アンダーガード、 泥ヨケが当たり前に付いており、ダート、ラリー車両のようになる。国地域、ユーザー毎に要望は多様だろうが、破損防止や便利な機能を追加していることに違いはない。情報共有し、ベース車両への反映やオプション提案の充実につながると良い。
2016.11.15 鋳造生技部 / 上本昌彦