No.06 Different cities, different needs 市街地で運転作法を学ぶ

都市の違いは、国民性の違い

高度や地形など、大地そのものに関わる自然環境が異なるだけではない。都市環境も日本では想像もできないような違いに驚かされることの連続だった。例えばペルーのリマ市内。モトタクシーと呼ばれるオート三輪や乗り合いバスが入り乱れ、初めて見る光景にコーポレート戦略部の上田は戸惑いが隠せない。
「急な割り込みや急停止が当たり前の世界。信号機が故障した交差点もポットホールだらけの荒れた路面も、標識なしで突然現れるスピードブレーカーも、放し飼いの犬の飛び出しも、リマのドライバーには日常の1シーン」

現地ドライバーに運転を学ぶ

では、日本の常識では考えられないような光景に出会ったときにどうすればいいのか。冷静に安全を担保しつつ、その土地を案内してくれたドライバーたちから吸収すればいい。ブラジルのサンパウロでは「車線変更ですり抜けていくバイクを巻き込まないように注意し、ミラーを当てられないように狭い車線でもなるべく幅をあけておくことを学んだ」と、第2先進安全開発部の水瀬。現地ドライバーの運転の仕方を知ることは、その国のクルマの使われ方を知ることでもある。

アルゼンチン人はレース好き

アルゼンチンのブエノスアイレスでも、狭い路地で安全を確保しながら走っていたら、「現地の一般車に抜かされていった」とコーポレートIT部の野中は言う。アルゼンチンでは8割がMT車であり、ドライバーはとてもレース好きの国民性だという話が腑に落ちた。市街地を走ることはそのまま、その国にどんな人々が暮らしているのかを知ることでもある。南米では、市街地でクルマが止まる度、果物売りの子供や窓を拭こうと試みる人々がひっきりなしにやってくる。

道は作れないクルマは作れる

ブラジルを走った車両技術開発部の松尾は、最後のミーティングで現地のメンバーが語った言葉にとても感銘を受けたという。
『荒れた道がたくさんあるけれど、道は国が作るもの。僕たちには作れない。でも、その道にあったクルマを自分達は作ることができる』

同じ志を持つ仲間が南米大陸でも実直にクルマと向き合っていることに胸が熱くなる。ポットホールだらけのひどい渋滞の市街地は、それだけクルマを必要とする人々がいるという証なのだ。

crew’s VIEW 南米大陸で隊員たちが得たもの

サンパウロ市内の小高い丘の上には、たくさんの人が住み、傾斜も急だ。この傾斜に路駐しているクルマへ乗り込む際に、「あれあれ?」と、どこを持てばいいのか迷ってしまう。ランクルやタンドラなど、デカイクルマには当たり前のように付いているBピラーのグリップが無い。上り坂ということがこんなに苦痛を引き起こすとは考えられなかった。ここでは坂道が日常化しており、ONE FAMILYとして手助けしたい。特に主流の小型乗用車にもオプションでもいいから選択肢を提供したい。
2016.8.23 電子制御基板技術部 / 白濱信幸

【写真】ハイビーム点灯車とのすれ違い

走破中に見かける一般車両を見ると、輸入された中古車を左ハンドルに改造したクルマが多い。特にボリビアに入ってから見るクルマは半分ぐらいがそうなのではないか。特に人気の車種は「カローラバン」。リアサスがリーフサスであることが人気の理由。日本から輸入され、中古車として販売される価格は約7,000ドル。後継車のプロボックスは人気が無く、安い。「新しい方がいいに決まっている」という日本の当たり前は、この国では通用しない。
2016.10.10 車両技術開発部 / 早川幸輝

【写真】擦れ跡が残るサイドウォール

通りすがりの街は、現地クルーの話によると、アルゼンチンの中でも貧しい部類に入る街らしい。路面はガタガタ。補修してあっても、傷んだ部分だけが直されているので、波状路みたいに定期的に振動が伝わる。子供が果物をドライバーに「買ってくれ!」と言っている。街並みや建物を見ても、発展途上な地域だと分かる。こうした地域でも売れるクルマの価格について物凄く考えさせられた。クルマを買えない人に対しては、レンタカーやカーシェアといった仕組みを構築して社会に貢献し、“クルマで人を笑顔に”できたらと思う。
2016.11.28 ユニット先行制御システム開発部 / 近藤央