NORTH AMERICA 2015
#08
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View from the Far North

Report 2015.11.30-12.18 From TIMMINS To ANN ARBOR

極北の地の先に見たもの

新車両の開発時に、コールドテストが多く行われるというカナダ、オンタリオ州ティミンズから、フランス語圏のケベック州を経由して、セントローレンス川沿いに北上していく。冬のカナダの特徴は、その融雪剤にある。主に塩を使ったその薬剤は、雪を溶かしてくれるものの、シャーベット状となった雪は巻き上げられてクルマを汚し、大敵であるサビを誘発する。頻繁に洗車することがもとめられる環境で、実際にどんな変化が現れるのか。メンバーは走破の途中に立ち寄る駐車場で、一般車両に釘付けになっていた。

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雪のない、雪国の道。

望んだほどの雪がなくとも雪国の道であることを、川沿いの街リモースキーから北大西洋岸のハリファックスまでの道で実感する。長い距離のハイウェイに融雪剤の効きを高めるための傾斜、カント(横断勾配)が強くつけられている。走行車線と追い越し車線の境が頂点となる山型のカントは、アメリカでも見られないもの。そのわずかな傾斜にハンドルを取られないような安定性が、クルマに求められる。重要なのは、世界中どこを走っても「まっすぐに走る性能」であることにたどり着く。待望の雪が降り始めると、クルマによって圧雪され、融雪剤によってシャーベット状になる。刻々と変わる雪道の状況を体感することになった。

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祝福の雪景色。

街と街をつなぐハイウェイを走っていると、人や物流の流れの変化が明確に感じられる。五大湖の周辺は豊富な水に恵まれているため、寒冷地でありながら人口が多く集中しているのだ。カナダでもトップクラスの交通量である401号線を走り、オタワやトロントといった大都市を経由して、チームは旅の最終目的地、アメリカのミシガン州アナーバーへとたどり着いた。40℃を超える砂漠から、-20℃の極北を結んだ北米走破。長く過酷な旅の終着点には、彼らを祝福するかのように細かな雪が空を舞っていた。

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Column

声を形にするということ。

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「この走破で感じたことを伝えていくとき、その結果を“目に見えるもの”として求められるかもしれない。私自身も皆さんと同じような経験をしてきた。しかし自信を持って、感じたことを伝えてほしい。それがもっといいクルマづくりに繋がる。」ゴールテープを切った走破メンバーを前に社長の豊田はこう話した。例えば、不快な「ノイズ」と心地良い「音色」の違いとは何だろうか?安全と安心の違いは?“クルマの楽しさ”は数値だけで表せるわけではないのである。

世界を走るため、小さな声に耳を傾ける。

世界中を走るクルマをつくっていくために、トヨタは世界の道とドライバーの声を拾い上げていかねばならない。小さな声に耳を傾けること。これもまた、数値化し効率的に行っていける作業ではない。しかし、その声に応えさらに「もっといいクルマ」を考え続けることでこそ、トヨタのクルマは進化していく。クルマづくりは、世界中の声を形にしていくことだ。そのために、トヨタはどんな厳しい道であろうと走り続けるのである。答えは、道の先にしかない。