全日本ラリー選手権第7戦 RALLY HOKKAIDO 選手権屈指のサバイバルラリー
日本初挑戦のベイツが2位表彰台

2024.09.09(月曜日)- 17:00配信

9月6日(金)〜8日(日)にかけて、北海道帯広市を拠点に2024年シーズンの全日本ラリー選手権(JRC)第7戦「RALLY HOKKAIDO」が開催され、TOYOTA GAZOO Racing Australia(TGRA)から参戦したハリー・ベイツ/コーラル・テイラー組(GR YARIS Rally2)が2位、TOYOTA GAZOO Racing(TGR-WRJ)の眞貝知志/安藤裕一組(GR YARIS GR4 RALLY DAT)、大竹直生/橋本美咲組(GR YARIS GR4 RALLY)はそれぞれリタイアに終わっています。

初めて走る日本の道で、実力を遺憾なく発揮したベイツ選手/テイラー選手
初めて走る日本の道で、実力を遺憾なく発揮したベイツ選手/テイラー選手

「人材育成」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の実践を目的に、全日本ラリー選手権に参戦するTGR。2024年シーズンは、2023年の知見をフィードバックし、進化を果たしたGR YARIS GR4 RALLY DATで、トップカテゴリーのJN-1クラスにエントリーしています。

2024年、TGR-WRJは、各地域のラリーを現地現物で学び、交流を深め、国内ラリーをさらに盛り上げるべく、TGRAとNeal Bates Motorsport(NBM)と相互交流をスタート。8月には、若手育成ドライバーの大竹選手が、オーストラリアラリー選手権第4戦ギップスランドラリーに参戦しました。この相互交流により、今大会にベイツ選手とテイラー選手がGR YARIS RALLY2で出走。大竹選手もGR YARIS GR4 RALLYでJN-1クラスにエントリーし、眞貝選手を含めた3台体制での参戦となります。

シーズン2戦目のグラベル(未舗装路)ラリーとなる「ラリー北海道」は、かつて世界ラリー選手権(WRC)やアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)としての開催実績もある大会です。20kmを超えるスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間であり、タイムが計測されるコース)や、平均速度が100km/hを超える高速SSなど、様々な性格を持つ厳しいルート構成が特徴です。チームは前戦ラリー・カムイから、約2カ月という長いインターバルを活かし、4WDシステムとGR-DATのアップデートを実施。過酷なラリー北海道に臨みました。

90.30kmという選手権屈指の長距離を走行するラリー初日、ベイツ選手はSS4でエンジンのポップオフバルブにトラブルが発生しながらも、2番手を堅守。一方の大竹選手はSS2で転倒し、クルマにダメージを負ったものの、5番手で初日を終えました。車両の進化に大きな手応えを語っていた眞貝選手は、SS6後の給油時にオイル漏れが発覚。残された距離とトラブルの度合いを勘案し、デイ離脱を決断しました。

前日から一転、4SS、13.24kmという短距離勝負となる最終日。2番手のベイツ選手はSS9、SS11、SS12でSSトップタイムを獲得。初挑戦である日本のラリーでJN-1クラスの2位表彰台を獲得しました。再出走を果たした眞貝選手は、最終SSにおいてエンジン関係の警告灯が点灯、トラブルの拡大を避けるために、再びクルマを止めることとなりました。大竹選手は順調に5番手を走行していましたが、こちらも最終SSの終盤でトラブルが発生、リタイアを余儀なくされました。

■ハリー・ベイツ(ドライバー)
素晴らしい週末になりました。初めて参戦するラリーで色々な経験ができましたし、ポディウムにも上がって、トヨタにこのリザルトを持ち帰ることができて、とてもうれしいです。土曜日の午後はクルマにトラブルも出ましたが、それがなければ新井大輝選手と、もっと接戦ができていたと思います。私のクルマを担当してくれたメカニックたちはみんな素晴らしく、今回の日本での参戦を支えてくれました。北海道のSSはすごく楽しめましたが、轍がすごく深く、轍にしっかり入ってアタックするのが楽しかったです。そして、応援してくれたファンの皆さんがとても印象的でした。たくさんのオーストラリア国旗が振られているのを見て、自分をとても歓迎してくれていると感じました。ラリーファンの皆さん、ありがとうございました。

■眞貝知志(ドライバー)
前戦で感じたDレンジでの要改善点が、4WDの制御と合わせて良く動くようになってきて、ほぼすべての場面で思いどおりの変速をしてくれるようになってきました。初日のSS6まではクルマの調子も良く、気持ち良く走ることできましたが、SS6後のリエゾン区間でオイルが漏れているのを確認し、SSの残りの距離とクルマへのダメージを考えて、デイ離脱をした方がいいだろうと判断しました。その夜にはチームにしっかり修復してもらい、翌朝は問題なくスタートできたのですが、最終SSでクルマの警告灯がつき、リタイアを決めました。結果は残念ですが今回の学びは今後のターマックラリーにも還元できると思いますし、次戦でもDレンジをしっかりと活用したいと考えています。

■大竹直生(ドライバー)
SS2の序盤でアウト側に膨らんで、転倒してしまいました。ダメージはあったのですが、そのまま走り続けることができましたし、皆さんに修復していただいて初日を終えることができました。トラブルが出なかったステージでは良いタイムで走ることもでき、初日5番手という結果には、悔しさもありましたが、スピード的には満足の行くところだったと思います。2日目最初の池田SSを総合3番手のタイムで走れたのはうれしかったです。音更のSSでもクルマと対話しながら、順調に走ることができました。残念ながら、最終SSでマシントラブルから出火し、リタイアとなってしまいました。オーストラリア選手権ではハリーさんたちに、すごく助けていただいいたので、今回は僕たちがホスト側になって、協力することができました。ハリーさん自身も楽しんでくれたようで、僕もうれしいです。

■皆木俊(眞貝号エンジニア)
前回のラリー・カムイを走る中で得られたグラベル路面特有の課題に対して、2カ月の間にデータ解析をしてテストを重ねました。対策の方向性を見極め、GR-DATの制御や4WDの制御に改良を加えてラリー北海道に臨みました。眞貝選手からは非常に乗りやすくなって、ギヤ選択もドライバーの意図と一致するというコメントをいただきました。Dレンジではギヤ選択に悩む必要がなく、アクセルとブレーキ、ステアリング操作に集中できるというメリットがあります。MレンジよりもDレンジで走りたいと言っていただけたのは非常に大きな成果だと思います。次戦以降も、これまでのターマックでの実績と、グラベルで得た知見を合わせ、さらにブラッシュアップしていきたいと思います。

■今泉弘行(眞貝号メカニックリーダー)
今回は眞貝選手の車両のメカニックリーダーを務めました。初めてのリーダーとして、自分たちが何をするべきかしっかりと共有して引き継ぎをしてきました。メンバーが作業した内容をしっかりと確認する時間を設け、万全の体制で送り出すことを心がけました。初日のトラブルに対しては、問題が起きた箇所以外についてもこまめに確認し、制限時間を目いっぱい使って安心安全なクルマを出すことができました。しかし最終日にもトラブルが発生してしまい、選手には申し訳なく思います。今後の改善方法についてはメンバーとも話をしているので、次戦に向けてしっかり織り込んでいきたいと思います。

■坂本祐樹(大竹号エンジニア)
普段は眞貝選手の車両のエンジニアを担当していますが、今回は大竹選手の車両のエンジニアを担当しました。8月のオーストラリアで完走したクルマをそのまま日本に戻して修理と整備を行い、北海道に臨みました。初日に陸別のSSでクラッシュしてしまいましたが、大竹選手は“何があってもクルマをサービスに持って帰る”という思いで、きっちりサービスまでクルマを戻してくれました。最終的にはリタイアということになってしまいましたが、JN-1クラスのMT車両で全日本ラリーに参戦するのは久しぶりなので、その点でも貴重なデータを得ることができたと思います。MT車とGR-DAT車、両方の強みと違いを、2台走らせることで明確に見て取れました。次戦は眞貝選手の車両担当に戻る予定です。最終戦もしっかり準備をして臨みたいと思います。

■古市准也(大竹号メカニックリーダー)
8月のオーストラリア遠征に帯同し、今回大竹選手の車両のメカニックリーダーを務めました。最終SSでリタイアということになってしまい、選手には申し訳なく思っています。初日のダメージ修復作業などについては、自分がリーダーとなって各メンバーに声かけをして、逐一みんなと共有するかたちで取り組みました。もし判断に迷っていれば、作業を止めるのか、やりきるのかを自分が判断して、サービス時間内に送り出せました。やはりオーストラリアで他の環境を知ることができ、メカニックとしてのレベルが高い方々と一緒に作業をしたことで、自分の意識も目線を高くすることができたと思います。

■矢野和也(大竹号メカニック)
オーストラリアから戻ってきたクルマを修理して、北海道に向けた準備を進める作業を行ってきましたが、整備自体は大きな問題なく、予定どおりに終わらせることができました。初日のサービスでは、ボンネットが閉められなかったり、ウインカーが切れていたりすると公道を走れませんので、クルマのダメージを考えながら、どういう対応をしようかとシミュレーションして臨みました。20分という短いサービスでしたが、走らせられる状態まで持っていくことができました。大竹選手は初日を無事に完走してくれましたが、それに応えきれなかったことは残念に思います。

■田中直樹(ベイツ号メカニック)
8月のオーストラリアの遠征にも参加し、今回はNBMの方々のサポートをさせてもらいました。ベイツ選手の車両の右リヤ全般を担当しましたが、以前にも会っているので、コミュニケーションを取りながら作業をすることができました。日本とは部品の名称が違ったり、独特の言い方があったりするのですが、やることはクルマの整備ですから、感覚的に通じるものがありました。事前に作業の内容がしっかり決まっていて連携もよく、判断力の早さを学ばせてもらいました。一方で、チームの方々はラリーも整備作業もすべて楽しんでやっているので、雰囲気が明るいです。「enjoy!」とよく言われましたし、明るく楽しくやっていこうというのが印象的でした。

■丸田智(チーフメカニック)
まず、ハリーさんはクルマにトラブルがありながらも最低限のペースダウンに抑え、さらに結果を残せるという点はさすがオーストラリアのチャンピオンだなと思います。メカニックの方々も、場所が変わっても同じようにクルマを走らせられるところは経験豊富なチームで動きも全然違いましたし、見習うべき部分だと思いました。北海道の前のオーストラリアからのつながりを考えてチーム編成と動きを考えたので、本番前は少しバタバタしましたが、ニールさん、ハリーさんから感謝の言葉をいただけたので何よりでした。一方で我々のチームは2台とも最終的にリタイアしてしまったのは、選手たちに申し訳なく思っています。今回の反省をしっかりと行い、原因を見極めて同じことを繰り返さないように取り組んでいきます。

■古島淳一(GR Garage札幌西)
会社としてTGRラリーチャレンジなどに参加はしていますが、全日本ラリー選手権にメカニックとして参加するのは初めてです。眞貝選手の車両を担当しましたが、限られた時間の中で修復するという意味では非常に緊張感も高く、リモートサービスも初めての経験でした。全体的にレベルが高く、整備作業について指示役から作業する人まで、段取りの素晴らしさについては大きな学びとして吸収できたと思います。GR Garageはお客様にサービスを提供するなかで、クルマを楽しむ選択肢を増やし、サポートすることが求められていると思います。そのスタッフもスペシャリストでなくてはならないと思っていますし、今回参加させていただいたことは非常に勉強になりました。

全日本ラリーの上位選手と競り合い2位となったベイツ選手(右)とテイラー選手
全日本ラリーの上位選手と競り合い2位となったベイツ選手(右)とテイラー選手
過酷なラリーでダメージを受けた車両を修復する凄腕技能養成部のメカニックたち
過酷なラリーでダメージを受けた車両を修復する凄腕技能養成部のメカニックたち

全日本ラリー選手権第7戦 RALLY HOKKAIDO

JN-1クラス最終結果

  1. 1 新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)

    1:06:09.5

  2. 2 ハリー・ベイツ/コーラル・テイラー(GR YARIS RALLY2)

    +49.1

  3. 3 奴田原文雄/東駿吾(GR YARIS RALLY2)

    +1:30.2

  4. 4 新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)

    +2:03.6

  5. 5 鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)

    +3:42.7

  6. 6 福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)

    +3:59.1

  7. 7 柳澤宏至/竹下紀子(トヨタGRヤリス)

    +4:28.4

  8. 8 金岡義樹/塙将司(シュコダ・ファビアR5)

    +9:33.7

  9. 9 ヘイキ・コバライネン/北川紗衣(GR YARIS RALLY2)

    +11:54.9

  10. R 眞貝知志/安藤裕一(GR YARIS GR4 RALLY DAT)

  11. R 大竹直生/橋本美咲(GR YARIS GR4 RALLY)

  12. 参戦14台、出走14台、完走9台

TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGRヤリスで全日本ラリー選手権に参戦し、将来の車両開発に活かします。