なぜ、
TOYOTA GAZOO
Racingは
ラリーへ挑むのか

世界には様々な道がある。激しい凹凸が続く荒れ果てた未舗装路、ハイスピードなコーナーが連続するアスファルトの峠道、新雪の下にアイスバーンが隠れるスノーロード。そういった一般の人々が普段走る道で「いかに速く走るか」を競うのが、ラリーというモータースポーツだ。まさに私たちが目指す「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を実践する場であり、最高の舞台といえよう。
ラリーは、基本的に市販車をベースとした車両で競われる。ドライバーがあらゆる道を走ることでクルマが壊れ、それをラリーで規定された時間内でメカニックやエンジニアが直す。そのような厳しい環境で課題を解決し、クルマの性能を向上させると、今度は違うところに不具合が生まれ、またそれを直す。これを繰り返すことでラリーに関わる人材の技術が向上し、そこで得た知識や経験を市販車開発にフィードバックするというサイクルが生まれるのだ。トヨタ自動車会長の豊田章男がWRC参戦を宣言し、この開発プロセスを経て、WRCで勝つためのクルマとして誕生したのが「GRヤリス」である。
もっといいクルマづくりと、そのクルマをつくる技術と人を鍛える。私たちがラリーに挑む一つの理由が、そこにあるのだ。
そして昨今のモータースポーツは、サステナブルに変貌を遂げようと進化を始めた。WRCのトップカテゴリーでもハイブリッドとカーボンニュートラル燃料の導入などが行われている。私たちも挑んでいるカーボンニュートラル社会実現への多様な取り組みは、モリゾウこと会長の豊田自らがハンドルを握った水素エンジン試作車「GR YARIS H2」のWRCデモランで、世界的にも大きな一歩も踏み出した。
「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」と「サステナブルなモータースポーツの実現」。
TOYOTA GAZOO Racingはクルマとモータースポーツを未来に繋ぐため、今後もラリーに挑み続ける。

世界のラリーと
TOYOTA GAZOO
Racingの
車両ラインアップ

FIAが管轄し、長い歴史を誇る世界最高峰のラリー「FIA世界ラリー選手権」、通称WRC。現在のトップカテゴリーは2022年に採用された新規定「Rally1」の車両により競われている。そのWRCを頂点とし、ヨーロッパや中東、アジア・パシフィックなどの地域で開催されている「FIA地域(リージョナル)選手権」や、各国の自動車連盟の管轄下で開催されている「国内選手権」、その配下には「国内地方選手権や県単位での選手権」などに分類され、ラリー界を形成しており、それぞれのラリーでは、参戦可能な車両がレギュレーションで定義されている。
TOYOTA GAZOO Racingでは最高峰のWRCに挑んでいるGR YARIS Rally1 HYBRIDに続いて、世界中で若手やジェントルマンドライバーからのニーズが高まっているRally2車両「GR Yaris Rally2」を開発して販売開始。また国内に目を向けると、GR YARIS DAT(ダイレクトオートマチック)コンセプトや、GRヤリス CNコンセプトを2022年からラリーチャレンジの現場で試験を行い、2023年には全日本ラリーへGR YARIS GR4 DAT Rallyを投入。ここで鍛えられた技術は新開発8速AT「GR-DAT」として2024年1月発表の進化型GRヤリスへと受け継がれている。
これらの車両開発にはプロドライバーだけではなく、ジェントルマンドライバーや一般競技ユーザーに近いドライバー、トヨタ自動車社員のドライバーなど、各レベル層のドライバーとの開発推進をはじめ、ラリー現場の最前線ならではのもっといいクルマ・人材づくりを進めている。
そして、様々なカテゴリーに参戦できるGRラインアップに加えて、将来的にはRally3、Rally4仕様の車両開発に取り組むことをモリゾウが宣言したように、TOYOTA GAZOO Racingのクルマづくりは、「自分たちが勝つためのクルマづくり」から「お客様が勝つためのクルマづくり」という新たなステージへ挑戦することで、ラリーの競技人口の拡大に貢献し、モータースポーツ文化の醸成していく。

Category

カテゴリー紹介
WRC - FIA 世界ラリー選⼿権
世界中のあらゆる道が戦いの舞台となり、半世紀の歴史を誇るラリー競技の最高峰「FIA 世界ラリー選手権(FIA World Rally Championship=WRC)」は1973年に創設された。トヨタは初年度からプライベーターを支援する形で出場。その後、マニュファクチャラーとしての参戦を開始。日本メーカー初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得するなど三菱やスバルとともに日本車の全盛時代を築いたのち1999年でワークス活動を終了。2017年に復帰以降は幾度もの戴冠を重ね、トヨタのWRC参戦史に再び新たなページを刻み続けている。
JRC - 全⽇本ラリー選⼿権
全日本ラリー選手権は、国内ラリー競技最高峰として1979年に始まった。その舞台は北海道から九州まで、日本各地を転戦して行われている。2012年にGAZOO Racingとして参戦開始。以降、トヨタ自動車社員が監督、エンジニアおよびメカニックとして参加し「人材育成」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を実践するとともに、「ラリーファン」の裾野を広げる活動も行っている。2021年にはGRヤリスを最上位のJN1クラスに投入し、初戴冠という栄誉を勝ち取った。
またTOYOTA GAZOO Racingは2024年から、JN2クラスのサブカテゴリーとして若手育成を目的とした「MORIZO Challenge Cup」を新たに設置。FIA世界ラリー選手権(WRC)で活躍できる日本人若手ドライバーの発掘・育成を目的とした新たな活動を開始した。
ラリチャレ - TOYOTA GAZOO Racing
ラリーチャレンジ
2001年にTRDヴィッツチャレンジとして始まった入門者向けラリーで、WRCや全日本ラリーと同じSS(スペシャルステージ)方式で行われている。誰でも手軽にエントリーできる参加型ラリーをコンセプトに日本全国で開催されており、スポーツカーだけでなくオートマチック車でも参加可能であることで参戦者も多く好評を博している。舞台が一般公道というラリーの特徴を活かし、近年は観戦と地域観光を「ラリーツーリズム」という新たなラリーの魅力発信の取り組みも行っている。

Cars

車種紹介
GR YARIS Rally1 HYBRID
2017年のWRC復帰で登場したヤリスWRCは、3度のドライバーズ/コ・ドライバーズタイトルと2度のマニュファクチャラーズタイトルという軌跡を残し、新時代への襷(たすき)を繋いだ。四半世紀に渡りWRCのトップカテゴリーを担ってきたWRカー(ワールドラリーカー)に替わり、2022年からはFIA Rally1技術規則に準拠した「GR YARIS Rally1 HYBRID」を参戦させている。スペースフレーム構造のシャシーに全車共通のハイブリッドユニットを搭載し、システム全体で500PS以上を発揮。1.6L直噴ターボ・エンジンには合成燃料とバイオ燃料を混合した再生可能な燃料が、FIA世界選手権の車両として初めて使用されている。WRCから生まれた「GRヤリス」。その「世界で勝つ」という使命を受け継ぎ、2022年〜2023年に2年連続三冠完全制覇を成し遂げたのがこの「GR YARIS Rally1 HYBRID」である。
GR Yaris Rally2
FIA国際モータースポーツ競技規則に準拠するラリー車両ピラミッドの頂点である「Rally1」。この直下にあるのが「Rally2(旧カテゴリー「R5」に相当)」だ。
二輪駆動であるRally3〜Rally5という下位クラス車両と違い、Rally1と同様に四輪駆動であることが特徴であり、WRC直下のWRC2や全日本ラリー選手権の最上位JN1クラスなど、世界中のシリーズや大会で採用されている。
私たちはこれまでもWRC活動および市販車GRヤリスのノウハウを活かして開発を行っている。そして、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりのサイクルから新たに生まれ出たのが「GR Yaris Rally2」である。
GRヤリス
一度は失われたトヨタの“スポーツ4WD”のDNA。私たちは、その復活を目指し2017年にWRCへ復帰。
以降、世界最高峰のあらゆる道で鍛え、壊れては直し、また鍛える。それを繰り返して25年ぶりのドライバーズタイトル獲得に至った。それが「ヤリスWRC」という一つの道標。それは「GR-FOUR」という新たなDNAの創造であり、「GT-FOUR」という伝統の継承となり、「GRヤリス」という原石が誕生した。
BORN FROM WRC、世界で勝つために誕生したGRヤリスは、Rally1 HYBRID〜Rally2〜GRMN〜H2 Conceptという、新たな道を切り拓き始めている。
そして2024年1月、モータースポーツの現場で鍛え上げた新開発8速AT「GR-DAT」を搭載したGRヤリスを発表。幅広いドライバーにスポーツ走行やモータースポーツ参戦を存分にお楽しみいただけるクルマへと、さらなる進化を遂げた。
※写真は2024年1月現在のプロトタイプモデルで、量産モデルとは一部仕様が異なる場合があります。
GRMNヤリス
自らの手で造るスポーツカーを取り戻したい想いから、WRCへの挑戦を経て誕生したGRヤリス。
その原石の進化は止まらない。GRヤリスは、2021年に全日本ラリー選手権で参戦初年度戴冠。それ以外にもスーパー耐久シリーズ、全日本ジムカーナ選手権、全日本ダートトライアル選手権での活躍や、2022年WRC世界ラリー選手権でGR Yaris Rally1 HYBRIDによる三冠制覇など「世界中のモータースポーツでの勝利」という成果を挙げた。そして「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」も止まらない。この極限で戦うプロドライバーの妥協ない要求にエンジニアが食らいつき、「壊しては直す」を繰り返すドライバーファーストの開発により、更なる進化が注ぎ込まれたのが「GRMNヤリス」である。
それは、GRの先頭を走リ続けるクルマである。
特別仕様⾞(KINTO専⽤)GRヤリス“モリゾウセレクション”
ドライバーの運転データやフィードバックという「人」に寄り添うことで改善を重ねる。モータースポーツの現場では、このような絶え間ない進化が存在する。
トヨタとKINTOによる「KINTO FACTORY」は、そこから、お客様一人ひとりにも寄り添い、その進化も提供したいという想いが生まれた。
お客様がすでに購入されたクルマに、その後の技術革新に合わせてソフトウェアの機能をタイムリーに反映するほか、お客様が運転する際のデータをもとに、一人ひとりの個性や好みに合わせてクルマの設定を最適化する。KINTO FACTORYは、この様なお乗りのクルマを「進化」させるサービスをサブスクリプションにより実現させたのだ。
GRカローラ
カローラは、1973年にトヨタのWRC初優勝を飾ったTE25カローラや、1975年に1000湖ラリーを制したカローラ・レビンなど、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の礎を築き、その走りを多くのお客様に愛していただいたモデルである。
「お客様を虜(とりこ)にするカローラを取り戻したい!」とのモリゾウこと会長の豊田章男の強い思いで、GRカローラの開発が始まった。
そしてスーパー耐久シリーズ参戦を通じ、極限の環境下で新技術である水素エンジンを鍛えるとともに車両を総合的に鍛え直した。また、「お客様を魅了する野性味」を追求するため、マスタードライバーの豊田章男を中心に、プロドライバー、社内の評価ドライバー、エンジニア、メカニックが一丸となって、様々な道で走り込みを実施。徹底的に不具合を出し尽くし、改善を重ねることで、「ドライバーと対話のできるクルマ」「ずっと走らせていたくなるスポーツカー」へと仕上げた。それがこのGRカローラである。
GR86
AE86の生産終了から時を経て、2012年に操る楽しさを体感できる「直感ハンドリングFR」として2012年に初代86が誕生。「ドライバーの相棒のようなクルマ」として多くのドライバーに愛され、育てられている。
その伝統を継承しつつ、SUBARU開発陣と切磋琢磨しながら「GRらしい走りの味」を追求した結果、86は「更なる高い次元でのダイレクトで気持ちのいい走り」を持つ「GR86」へと生まれ変わった。
1980年代にAE86が全日本ラリー選手権で活躍していたが、現在も86やGR86がレースやジムカーナのみならず、ダートトライアルやラリーシーンでも、参加型モータースポーツを中心に広く駆け抜けている。
GRスープラ
トヨタのフラッグシップスポーツカーとして、長年愛されてきたスープラ。モリゾウこと豊田章男がニュルブルクリンクで訓練を重ねた時の『特別な旧友』でもあった。そして2002年に生産を中止し、その歴史にピリオドを打った。
Supra is Back
モリゾウが抱き続けた「スープラを復活させたい」という強い想いと、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の精神。そこにTOYOTA GAZOO Racingが蓄積してきた知見やノウハウを注ぎこむ。そして誕生した「GRスープラ」は、究極の“走る愉しさ”を目指した新たなピュアスポーツカーとして現代に復活した。
スープラの名は、全日本ツーリングカー選手権から現代のSUPER GT、さらに世界各地のGT4選手権などGTレースで、古今東西、国内外の様々なサーキットのリザルトに刻まれている。そのイメージが強いが、ラリーシーンにおいてもその戦績を積み上げてきた。1980年代にはMA70型スープラ・ターボがFIA車両規則「グループA」のラリーカーとしてWRCに参戦。そして2022年には全日本ラリー選手権でGRスープラの勇姿が見られた。
旗艦たるスープラは今もなお、世界中のモータースポーツへの挑戦を続けている。