ニュルブルクリンクへの挑戦 2007
チャレンジカップレースレポート

2014.03.18 ニュルブルクリンクへの挑戦2007

ニュル24時間耐久レースの前哨戦~岡山/チャレンジカップコース

本番に向けて、経験を積むとともに、“レースの楽しさ”をチーム全員で共有する

NSC OKAYAMAチャレンジカップレースは「フレッシュマン(新人ドライバー)の登竜門」と位置づけられているレースである。「年間8回シリーズで開催されるこのレースは、豊富なカテゴリーのレースを開催し、ベテランと若手が毎回、熱いバトルを繰り広げる」(以上、岡山国際サーキットのホームページより引用)。わがTeam GAZOOからも4名の選手がエントリー。全員、無事完走を果たした。コースから次々に戻ってくる選手をパドックのみんなが拍手で迎え、健闘を讚える。じつにアットホームな雰囲気である。 そんな選手の中に、Team GAZOOのチーム運営のサポートを担当しているジョニーの姿があった。「完走おめでとうございます」と声をかけると、照れくさそうに笑いながら「チームから、一回走ってみないかと、誘われましてね。 もともとクルマが大好きだから、迷惑にならない範囲でと思って出場してみたんですが、とても楽しかったです」と出走の経緯を話してくれた。 そしてその裏には、本来はチームの遠征の手配やスケジュール管理などを担当しているサポーターのジョニーが、実際にドライバーとしてレースを経験することで、ドライバーの気持ちを理解し、彼らにとってより良いサポートをしたいという意図があった。「レースに出て同じ経験をしたことで、ドライバーやメカニックの人たちとの距離がぐっと近づいた。これで僕もチームの一員になれたような気がする」という。全員で楽しさを共有し、同じ経験を通じて、お互いを理解しあう。クルマが好きな人が集まって、とにかくみんなで楽しもう!これが、Team GAZOOの方針なのだ。

また、ジョニーの他にもレースを初めて経験した人間もいる。今回のOKAYAMAチャレンジカップレースに参加したメカニックは2名。彼らは今日がデビュー戦で、ピット作業をするのは初めてだという。「メカニックを含めて、レース出走の運営全般を自分たちの手でやってみる」これがチームの基本方針なのだ。 そして、そんな素人の彼らをTOM'S(トムス)の人たちがサポートしていた。 本番のドイツではTOM'Sのサポートなしに、すべて自分たちでやらなければいけない。今回のレースはメカニックにとっても本番に向けた貴重な修練の場なのである。

テーマは“安心・安全な走行で無事完走”

パドックの中を慌ただしく歩き回り、メンバーにさまざまな指示を送るとともに、冗談を飛ばしながらチームの雰囲気に気を配る初老の男性がいた。この人こそ、ニュル・マイスターの異名を持つキャップである。今回、Team GAZOOにおいてはチームリーダーとして、レースの経験のない若いドライバーたちの育成・指導を担うだけでなく、自らもドライバーとしてニュル24時間耐久レースに出場する。 そんなキャップに、ぜひ聞こうと心に決めていた質問をぶつけてみた。 それは、他に誰もいないテストコースを走行する評価ドライバーと他のクルマとのバトルを繰り広げるレースドライバーとの違いについてである。 「キャップにとってレースに出るということは、フィギュアスケート選手をスピードスケートのレースに出ろというものですか?だって、ふだんは他のクルマと競うなんてことはやらないですよね」。そんな奇妙な問いかけに対し、キャップはにっこり笑って、「むしろ逆だね。僕たちは評価ドライバーとして、いつもニュルのテストコースでは、ベンツやBMWなど外国のメーカーを相手に、ぎりぎりの状態でのバトルを繰り広げているんですよ。彼らの目の前で、トヨタの車のすごいところを見せつけてやろうと、それこそ大和魂でコーナーに突っ込んでいく。ときとして、スピンしてコースアウトすることもあります。 一方、今回のニュル24時間耐久レースのテーマは“安心・安全な走行で無事完走すること”。だから、自分のペースを守って、コンスタントに走って、次のドライバーにたすきを渡す。これが実は一番難しい。人間にはみんな闘争本能がありますからね。相手がいるとついつい熱くなってしまう。その気持ちをどれだけ押さえ込むことができるのか?今回、OKAYAMAチャレンジカップレースで訓練しているのもそういう狙いなんです」と話してくれた。 「ウチのドライバーはみんな知識やテクニックは一流のものを持っています。それをレースという場で、自分の気持ちをコントロールして、きちんと発揮できるのか?メカニックも含めて、それが大事なんです。」

自分との戦いに集中せよ!

午後からは『チャレンジカップ2時間耐久レース』が開催された。Team GAZOOからは2台のアルテッツア(Aチーム:キャップ・ギッチー・タッケー/Bチーム:モリゾウ・カツーン・ヒラリン)が出走。マシンはニュル仕様のものではないものの、同じアルテッツアでのエントリーであり、本番に向けた前哨戦であった。スタート直後、ポルシェとS2000の2台が飛び出し、いきなり1周目からデットヒートを展開。一方、我らがTeam GAZOOのアルテッツアは、チームの方針通り、後方で自分たちのペースを守り、しっかり走っていた。 「スタートは全体にみんなゆっくりだったんです。だから、密集の中で、ぶつからないように気をつけました。とにかく最初の1周が大事ですから、余計な欲を出して前にいこうなんて考えずに、クルマの調子を確認しながら、自分のペースを掴むことを心掛けました」とドライバー交代の後、Aチームの第一走を担当したギッチーが振り返ってくれた。 「最初の1周で自分のペースが掴めれば、あとはコンスタントに自分の走りができる。そうすれば、そこそこいいタイムで走る自信はあります」という。 なるほど、チームの方針は徹底されている。 「駅伝と一緒で、ここぞというときに勝負をかける。そのために前を走るクルマをじっくり観察して、ドライバーの心理を読むことも大事なんです」とキャップ。 「とにかく次のドライバーにつなぐことだけを考えて走りました」と語るのはAチームの第二走を担当したTeam GAZOOの紅一点タッケー。 「キャップに誘われて、チームに加えてもらいました。みんな実戦を積み重ねる中で、チームがどんどん強くなっていくのを実感しています。本当にいい経験をさせてもらっていると感謝しています」という。また、ニュルヘの抱負について、ヒラリンは「これまでやって来たことをふだん通り、本番でもやり抜くだけです。ただ、夜間走行の経験はないのはちょっと不安ですかね。一応、今年に入って、筋トレははじめました。体力をつけなくっちゃいけないですからね」と語ってくれた。

さて、くだんの『チャレンジカップ2時間耐久レース』であるが、なんとBチームがツーリングカーM2クラスで3位に入賞し、表彰台に立つという、誰も予想しなかったうれしい誤算があったが、無事、2台とも目標の完走を果たしたことを報告しておく。