ファイナルラップのバトルを制しNo.962織戸選手がシーズン2勝目をマーク
「GAZOO Racing 86/BRZ Race」第9戦の予選と決勝が、オートポリスで10月12日開催された。
今シーズン最大の勢力を維持したまま九州に接近する台風19号の影響を受けながら開催された第9戦オートポリスラウンド。
予選、決勝ともに一日で開催されるワンデーイベントとして行なわれた。
9時半にスタートが切られた予選には41台が出走。強風は吹き付けるが、雨はまだ降っていない状況でのコースインとなった。序盤でトップタイムを出したのはNo.30青木孝行選手で、2'13.753のコースレコードをマーク。その後は雨が降り始めタイムを伸ばす選手は現れず、No.30青木選手がポールポジションを獲得した。2位にはNo.10佐藤晋也選手、3位にはNo.97小河諒選手が続いた。
4時間のインターバルを経て行われた決勝レース。昼前から降り出した雨によってコースは完全なウエットコンディションとなった。
ポールポジションスタートのNo.30青木選手は、ややスタートダッシュが鈍り、2番手スタートのNo.10佐藤晋也選手に並びかけられた。だが、抜くには至らず、No.30青木選手がトップで1周目を通過。2周目に入ると、ホームストレートや2コーナーなどでクラッシュが発生した影響でセーフティカーが入る。その後、3周に渡りセーフティカーランが行われ、5周目にリスタートが切られた。
No.30青木選手はリスタートを上手く決めたが、その後方でNo.962織戸学選手が、No.10佐藤選手を抜きトップを追撃する。No.30青木選手とNo.962織戸選手の差は周回を重ねるごとに縮まり、ファイナルラップ突入時にはコンマ2秒差まで接近する。そして、最終周のジェットコースターストレートでNo.962織戸選手が仕掛け、No.30青木選手をパスしたが、コーナー出口で挙動を乱しNo.30青木選手がトップを死守。残りは登りセクションのみとなる。各コーナーを両者がサイドバイサイドで通過し、最終コーナー手前でついにNo.962織戸選手がトップを奪い、そのままチェッカーを受けた。2位はNo.30青木選手、3位にはこちらも最終周で逆転したNo.97小河選手が入った。
5位までが1秒差以内という、稀にみる混戦を制したのはNo.962織戸選手で、今シーズン2勝目を飾った。
次戦は、今シーズンの締めくくりとなる最終戦。11月8日(土)9日(日)に鈴鹿サーキットで開催される。
チャレンジプログラム参加者が好レースをみせる
第7戦から始まった、レース初心者の参戦サポートを行う「チャレンジプログラム」。
内容は、GAZOO Racingが86レースカーを用意し、86/BRZレースに参戦してもらうというもの。公式レースに参戦したことのない人を対象にしている。
練習走行から専属のメカニックがサポートとアドバイスを贈ってくれ、タイヤは2セットが用意される。GAZOO Racingのレーシングドライバー(今回は影山正彦選手)によるアドバイスを受けられるなど、しっかりとしたサポート体制が魅力となる。
今回参戦したのは、No.102の松岡 幸宏さんとNo.103中島 功さんのふたり。松岡さんは、普段からBRZに乗っていてオートポリスのフリー走行で腕を磨いているという。24歳と若いが、高校生まで約10年間カートレースに参戦していた経験を持っているドライバーだ。
一方の中島さんは、過去にサーキット走行の経験はあるが、しばらくサーキットから足が遠のいていたそうだ。だが、昨年からオートポリスでNAロードスターのレースを楽しんでいるドライバー。
ふたりとも、予選、決勝が行われる前々日の金曜日から練習走行を開始。金曜日、土曜日の2日間で計5回の走行を行い、松岡さんは「普段乗っているBRZと86は同じクルマとはいえ、だいぶ動きが異なるので、乗り方を変える必要がありました」。
中島さんは「ロードスターは1tを切る軽量マシンなのでブレーキングポイントやコーナリングスピードが異なり、慣れるのに時間が掛かりました」。
最初はレースカーの乗り方に戸惑ったようだが、両者ともにスポーツ走行の経験は豊富なので、すぐに順応していった。
迎えた日曜日の予選は、松岡さんが27位、中島さんが29位のグリットを獲得。予選中に雨が降りだし難しいコンディションになったことで、練習走行よりもトップとのタイム差が開いてしまったことを悔やんでいた。
決勝は雨足も強くなり、コンディションはさらに悪化。それでも、両者ともに確実にゴールを目指す冷静なレース運びを行う。クラッシュやトラブルなどで5台がリタイヤした中で、松岡さんは26位、中島さんは30位で無事にチェッカーを受けた。
松岡さんは「無事にゴールできて良かったです。途中でスピンしてしまいヒヤッとしましたが、しっかりとレースを楽しめました」。
中島さんは「もう少し上位を狙いたかったですが、雨が降ってきてしまい、思ったようなレースができませんでした。ですが、週末を通してメカニックさんがしっかりとサポートをしてくれたため安心してレースが楽しめました」と笑顔。荒れたレースながら無事にチェッカーを受け楽しんでいる様子が伺えた。
井口卓人選手が地元のオートポリスでスポット参戦
2014年のGAZOO Racing86/BRZレースは計10戦が予定されていて、そのうち8戦は富士スピードウェイや鈴鹿サーキットといった本州のサーキットで開催されている。第5戦の十勝スピードウェイと、今回のオートポリスが本州以外で実施されるラウンドで、本州のサーキットまでは遠征できないが、地元で開催されるならばエントリーしてみたい、というオーナーが参戦している。
年間10戦が組まれているが、フル参戦してシリーズを追わなくとも、地元のサーキットで開催されるときにエントリーして楽しむという方法もあるのだ。
そんなオートポリスにスポット参戦したエントラントの中に、GAZOO Racingからスーパー耐久やニュルブルクリンク24時間レースにエントリーしている井口卓人選手がいた。井口選手は地元が福岡県柳川市で、オートポリスは勝手知ったるサーキットなのだ。
井口選手によると
「オートポリスラウンドにエントリーしたのは、まずは地元で開催される86/BRZレースを盛り上げたいという気持ちでした。それと、今回はスーパーGTでタッグを組ませてもらっている佐々木孝太選手の『KOTA RACING』からエントリーしているのですが、それはBRZのエントリーがもう少し増えればいいな、という思いからです」。
地元の利を活かしてという訳ではないが、九州とBRZ勢を盛り上げたい気持ちからエントリーを決めたようだ。
86/BRZレースに関しては「ボクも講師という立場から何度も見させてもらっていますし、実際に練習走行でレースカーを走らせたこともあります。トップのドライバーのレベルは非常に高いですし、すんなりと上位に入り込めるとは思っていません」とハイレベルな戦いをみせる上位陣と勝負するのは難しいと語っていた。
走行途中から雨が降ってきた予選では、それなりにまとまったラップで走れたというように、2'14.656をマークしBRZ勢の最上位となる7位を獲得した。
7位からスタートした決勝は途中で6位まで順位を上げたが終盤で失速してしまい8位でフィニッシュ。
「決勝は、雨が断続的に降っていると予想してウエットセッティングで走ったのですが、セーフティカーが入った後は雨足が弱くなり路面が乾いてしまいました。それで路面状況とセッティングが合わなくなってラップタイムが落ちてしまいました。こうなると上位陣を抑えることは難しく2つほど順位を落としてしまいました」と、やや不完全燃焼のようだったが、初の86/BRZレースを堪能していた。
また、「2年目を迎えている86/BRZレースですが、ドライバー個人のレベルアップはもとより、昨年から参戦しているチームはセッティングなどの総合力が上がっていて、ドライバー、チーム、サポーターのすべてが揃っていないと勝てないレースになっています」とも。
トップドライバーでもスポット参戦では、簡単に結果がでないほどレベルの高い86/BRZレース。ハイレベルなプロドライバーやチームと一緒の土俵に比較的手軽に参加できるのも、このレースの魅力のひとつといえる。