シリーズチャンピオンの谷口信輝選手が今シーズン5勝目を独走で飾る
2014年のGAZOO Racing 86/BRZ Raceのフィナーレとなる第10戦の決勝が行なわれた。
前日の曇空から一転して雨模様となってしまった鈴鹿サーキット。路面は終日ウエットコンディションとなった。
まず、午前8時45分にスタートが切られたのが決勝Bレース。
ポールポジションスタートのNo.555今村大輔選手が1周目から2位以下を大きく離す展開となった。他車に比べて2秒以上も速いペースで走行する今村選手は、8周の周回を独走して2位に20秒の差を付けポールトゥーウィンを飾った。2位には7番手からスタートしたNo.20中井秀彰選手、3位には6番手スタートのNo.2河野利尚選手が入っている。
決勝Bレースから2時間のインターバルを経て開催された決勝Aレース。
相変わらず小雨が降りしきる状況で、路面コンディションはウエット。ただ、コースに川が流れるほどの悪状況でなかった。
ポールポジションスタートのNo.1山野直也選手は、順調なスタートを決め1コーナーをトップで通過。2位はNo.82谷口信輝選手が僅差で続く。S字に入ると2番手スタートのNo.82谷口信輝選手がプレッシャーを掛け始め、ダンロップコーナーで並び掛けるとデグナーの1つ目で谷口選手がトップに立った。この直後に、後続集団で発生したクラッシュによりセーフティカーが入り、谷口選手を先頭に隊列が整えられる。1周のセーフティカーラン後にレースは再スタートが切られた。
好スタートを切った谷口選手は、3周目には2位の山野選手と5.5秒の差を付けることに成功した。独走する谷口選手の後方でレースを沸かせたのが7番手スタートのNo.610元嶋佑弥選手。セーフティカーが入った時点で5位まで順位を上げていて、4周目には4位を走行していたNo.10佐藤晋也選手を抜く。続いて、5周目にはNo.962織戸学選手、6周目には山野選手まで抜き2位までポジションをアップ。
トップの谷口選手は、その後も安定したペースで走行し8周の決勝Aレースをトップでゴール。今シーズン5勝目をマークした。
2位は、BRZ勢で今シーズン初の表彰台となる元嶋選手。3位には終盤に山野選手を抜いた織戸選手が獲得している。
この鈴鹿サーキットラウンドで2014年のGAZOO Racing 86/BRZ Raceは全10戦を終了した。
シリーズチャンピオンは、すでに谷口信輝選手が獲得していて、2位も青木孝行選手となっていた。最終戦までもつれ込んだシリーズ3位争いは、最終戦で表彰台に登った織戸選手が逆転で獲得した。
チャレンジプログラム、
難しいウェットコンディションの中で2台ともチェッカーを受ける
第7戦の岡山国際サーキットからスタートしたチャレンジプログラムは、GAZOO Racingが提供する初心者向けのサポートカリキュラムになる。
参戦するドライバーは、ヘルメットなどの安全装備とライセンスさえ用意すれば、誰でも気軽にレースに参戦できる。今回は2名のドライバーがチャレンジプログラムに参加。
No.102の菅沼聡選手は、草レースやサーキット経験は豊富だが公式レースは未経験で、鈴鹿サーキットを走行するのは3回目というドライバー。チャレンジプログラムが発表されてすぐに応募を行ない、第8戦の富士スピードウェイは抽選から漏れてしまったが、この最終戦で念願のエントリーとなった。
予選では、サーキット走行経験者らしく2分35秒620の好タイムを記録。それでもクラス24番手で上位陣には一歩及ばず。決勝Bレースに駒を進めることになった。
8位スタートとなった決勝レースでは、1周目にスピンを喫し15位まで後退してしまう。だが、そこから追い上げて12位でフィニッシュ。
「走行経験の少ない鈴鹿サーキットでしかもウエット路面だったため緊張はしましたが、レースは楽しめました。メカニックさんの的確なサポートや、プロドライバーのレクチャーを受けることで安心してレースに参戦できました」とチャレンジプログラムの印象を語ってくれた。
もうひとり参加者のNo.103太田健選手は、GAZOO Raingのウェブサイトでチャレンジプログラムを知ったそうで、地元に近い鈴鹿サーキットラウンドにエントリー。20代のころにレーシングカートの経験があり、自らのクルマでサーキットを走っていた。だが、最近はサーキット走行からも離れていてブランクがあるという。鈴鹿サーキットの走行経験は、菅沼選手と同様に数回程度。それでも金曜日に行なわれた公式の練習走行と事前に行なわれたスポーツドライビングレッスンで鈴鹿サーキットを走れたことで自信は付いたという。
予選は満足いく結果ではなかったというが、2分36秒872でクラス27位。決勝Bレースに進出することになった。
13番手スタートとなった決勝レースは、1周目の混乱を上手く切り抜けて8位までポジションをアップする。その後も好バトルを繰り広げて、最終的には10位でチェッカーを受けた。
「予選はもう少しタイムアップしたかったのですが、1周の距離が長い鈴鹿サーキットなのでまとめるのが難しかったです。決勝は、ウエットコンディションでしたが、想像よりもグリップ感がありバトルを楽しめました。スタートよりも順位があがりましたし満足しています」。
このようにレース初心者を手厚くサポートするチャレンジプログラム。来年度も実施する予定となっていて、86/BRZレースだけではなくカテゴリーを拡大することも検討している。詳細は今後発表されるので、GAZOO Racingのウェブサイトをチェックして欲しい。
KOTA RACINGを率いる佐々木孝太選手がエントリー
GAZOO Racing 86/BRZ RaceにBRZ勢で最大規模のチーム体制として参戦しているKOTA RACING。スーパーGTではSUBARU BRZに乗るレーシングドライバーの佐々木孝太選手が率いるこのチームは、若手やジェントルマンドライバーの育成を目的にしていて、初年度の昨年からエントリーを続けている。
普段は監督としてレースに接している佐々木選手だが、今回の最終戦にはドライバーとしてエントリーした。
「普段は監督としてKOTA RACINGのドライバーにアドバイスを行なっていますが、ドライバーとして実際にレースをすることで、これまで以上のことを教えられるのではないか」という思いから参戦したという。
昨年の第5戦十勝スピードウェイラウンドにも参戦していて2位を獲得している。それ以来の実戦となり、1年の間にどれだけレースのレベルがアップしたかを体感したようだ。
予選では、チームのエースドライバーとなるNo.610元嶋佑弥選手には劣ったが、2分33秒381をマークしクラス9番手で総合18位を獲得した。
決勝レースは、KOTA RACINGのドライバー達を率いるかのように中団グループを走行。レースの実戦で、育成ドライバーがどのように走っているのかを確認したようだ。
「昨年、エントリーした十勝スピードウェイラウンドに比べて、格段にレースのレベルがあがっています。監督としても分かっていましたが、予選はかなりシビアになっています。タイヤと車両のベストな状況は、1周しかありません。そのタイミングを感じてベストタイムを刻むことが、予選で上位に進出するカギになります。またコースの状況を読む力も必要で、今回の予選ではどれも上手く噛み合いませんでした。決勝は、ウェットコンディションということもあって安全に走ったので結果は伴っていません。それでも、レースに参戦することで得られることは多かったです。チームのドライバーにはセッティングなどで、詳細なアドバイスができたと思います。そのことでチームとしては、表彰台やファステストラップなどの今シーズン最高の結果が得られました」と、1年ぶりの参戦となった86/BRZレースのハイレベルさと、ドライバーとして参戦したことでチームにもたらした好影響について語ってくれた。