アクシデントを乗り越え、クラス2位を獲得
予選3位で迎えた決勝。スタート前に行われたGAZOO Racing 86/BRZ Raceにダブルエントリーの井口卓人選手はアクシデントによる負傷でS耐を欠場。蒲生尚弥/松井孝允選手の2人で5時間の戦いに臨んだ。
スターティングドライバーは蒲生選手、レース序盤に他車に接触されスピンアウト、一時はクラス16位まで順位を落としたが、その後の怒涛の追い上げによってクラス2位に浮上し松井選手にドライバーチェンジ。松井選手も冷静なドライビングで2位を死守して蒲生選手にバトンを渡した。蒲生選手はあと一歩でトップに並ぶタイム差まで縮め、最終スティントの松井選手にチェンジ。しかし、その後クルマの調子が上がらず追い上げはここまで。その後、クラス3位(埼玉トヨペット86)の追い上げも振り切ってゴール。井口選手のアクシデントを乗り越えてST-4クラス2位獲得となった。
蒲生選手は「松井選手と気持ちを切り替えてレースに臨みました。途中で接触されたのは残念でしたが、それ以外はいいレースができたと思います。もてぎは86が苦手なコースですが、そこでの2位獲得は大きいと思います」。GAZOO Racingで初めてロングスティントを走り切った松井選手は、「勝ちたかったのが本音ですが、まずは表彰台に立ててよかった。ただ、自分の中では反省点もいくつかあったので次に生かして成長できれば…。菅生ではミスなくいければ、結果もついてくると思います。また、ニュル24時間耐久レースに向けていい経験になりました」と語ってくれた。
一方、チーム代表の三塚隆は厳しい表情を崩さず、「2位を獲得しましたが、私としては勝てるレースだったので反省点も多いです。クルマも人も次に向けて成長させる必要があります」と、次への課題も見えた開幕戦であった。
若手だけの「挑戦」が始まった
昨年までドライバー兼監督であった影山正彦選手は監督業に専念し、蒲生尚弥/井口卓人選手に加えて松井孝允選手の若手トリオで臨む2015シーズン。
第1戦は影山監督がドイツで開催のVLN1(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)参戦のため欠席。ただ、ドイツから「3人で力を合わせればどのチームにも負けないポテンシャルは十分にある。シリーズを見据えて初戦を戦って欲しい」とメッセージを送ってくれた。
3人の中でエース的存在の井口選手は「若手だけでのチャレンジはプレッシャーも感じますが光栄に思っています。3人はセットアップの考え方も近いので、年長の僕がリードしていきたい」と。
蒲生選手も「これまでは影山選手を中心にやってきましたが、今年は僕も遠慮せずに言いたい事を全部言って、いいクルマに仕立てて結果を残したいです」と語る。
松井選手は今年からGAZOO Racingに本格的に加入したドライバーだが、フォーミュラトヨタ参戦時代はトムススピリット所属だったので、ある意味“古巣”へ戻ったわけだ。「蒲生/井口選手とは8年くらいの仲で、『どこが速い?』、『どこが遅い?』などを聞きやすい関係です。チームひとつになって結果を出すことが大事ですが、一人のドライバーとして評価してもらえるように心がけています」。
一方、チーフメカニックの八重樫利博は「3人共にまだまだ遠慮がち。『ああしたい』、『こうしたい』、『やってみたい』と、もっと自分の意見を言ってほしい。今後の成長に期待したいですね」と厳しい目で見ていた。
見た目の違いは僅か、走りは激変の2015モデル
昨年のマシンも「速い」と言われていたものの、ドライバーがギリギリの走りをすることで何とかタイムが出ていたという感じだった。
今年のマシンは見た目こそ昨年のマシンと大きく変わらないが、細かい部分は様々なアップデートが行われ、速さと乗りやすさのバランスが向上。具体的には86がS耐デビューした時から抱えていたウィークポイントであった、コーナリング中のフロントの抜けが改善されており、良く曲がる上にタイヤにもやさしいマシンへと進化した。ドライバーも「クセもなく凄く乗りやすいクルマに進化している」と語る。ドライビングに集中しやすい環境作りという意味では、ニュルのマシンからS耐のマシンに受け継がれている(その一方で、S耐のマシンの整備性の良さはニュルのマシンにフィードバックされる)。そういう意味では、今年のマシンはS耐とニュル24時間のノウハウをクロスオーバーさせたマシンとも言える。
2015年は「人とクルマを鍛えて」で戦う
チーム代表の三塚隆は去年までニュル24時間も担当していたが、今年はS耐に専念となる。
「昨年のマシンから劇的な変更はありませんが、よりいいクルマに仕上げるために色々なトライをしています。これまで富士スピードウェイでのテストとS耐公開練習でクルマの改善点もハッキリしましたので基本性能を引き上げるために細かな改良を施しています。今回は95%くらいの仕上がりですが、誰が乗ってもその領域に持って行ける懐の深さや、ベストラインでなくても安定して走れるクルマに仕上がっています。ドライバーも『今年のマシンは、乗りやすい上に運転が楽!!』と言っています。細かい積み重ねが良いフィーリングに繋がっているのでしょう。クルマ作りに関しては若手もコメントをシッカリ言えるようなっているので問題ありません。もちろんライバルの中には我々よりも一発が速いマシンもありますが、我々は一発の速さよりもトータルを重視し、『チェッカーを超える時にどこにいるか?』ですね。また、メカニックに関してもこれまで以上に事前にトレーニングを行っています。ドライバーがコースで10秒縮めるのは難しいですが、ピット作業なら簡単にできますので、ピット作業などもあらゆる状況を想定したテストも行っています。2015年はドライバー頼みでもクルマ頼みではなく「人とクルマの総合力」で戦います。特にヒトを育てることを通じて、結果も出せるように頑張っていきたいです」。