木下隆之連載コラム クルマ・スキ・トモニ 154LAP

2015.07.28 コラム

日産自動車が地球を救う!?

ウルトラマンXの強い味方達だ

「太陽から発生したウルトラフレアが地球をつつみ、地底や海底で人形の姿で眠っていたスパークドールズが怪獣となって復活した。続々と現れる凶悪怪獣や侵略宇宙人に対抗すべく、人類は超科学メカを装備した特殊防衛チーム「Xio(ジオ)」を結成する」。

「結成された特捜チームXio(= Xeno invasion outcutterssf)とは、未知なる怪獣に対抗するために作られた地球防衛組織UNVERの実働を担う防衛チームだ!現場での闘いだけでなく、回収したスパークドールズの研究・分析も行っている頭脳派科学集団でもあるのだ」。

(一部、サイトから抜粋 :「新ウルトラマン列伝」http://m-78.jp/x/)

 なんだかこうして原稿を書いているだけで、ワクワクするよ。童心に戻れる。

 7月14日から放送を開始する「ウルトラマンX」に、日産が車両を提供する。そのお披露目が「東京おもちゃショー2015」でなされた。ウルトラ世代のひとりとして、興奮のまま東京ビッグサイトに足を運んだのである。気分は、ランドセルを背負った小学3年生ってかんじだ。

  • 地球を悪漢から守ってくれるのがこの3台。ウルトラマンXの強い味方だ~!
    地球を悪漢から守ってくれるのがこの3台。ウルトラマンXの強い味方だ~!

電気自動車が活躍する時代になったんだなぁ

 日産が提供するマシンは3台。オペレーションXが地球の平和を守るための防衛戦闘車両は、ベースが日産車なのである。

 Xio隊員たちが、調査や作戦時の移動手段とするのが「ジオアトス」。リーフがベースだ。ルーフのアトスレーザーで応戦も可能だ。全長:4.4m 最高時速:200km/h 定員:5名。

 電気自動車のリーフに攻撃的イメージはないけれど、フロントには得体の知れない金色の牙が装備されているし、ルーフのレーザービーム砲が勇ましい。

 e-NV200をベースにしているのは「ジオアラミス」。ブルー基調に塗られ、ワゴン型特捜である。大人数での作戦行動や物資の輸送で活躍するらしい。ルーフ上の二連砲・アラミスレーザーで巨大な敵を撃破せよってなことだ。全長:4.4m 最高時速:180km 定員:7名。すげ~、180km/hも出るんだ!

 ひときわ大柄の「ジオポルトス」はe-Nt400テストトラックがベースだ。そのスタイルから想像できるとおり、高い収容力と走破能力を誇る、オフロード走行や大型装備の運搬と、幅広く利用されるらしい。サンダーバードでいったら2号ってことなのかも。スモーク弾や照明弾も発射というから勇ましい。全長:6.8m 最高時速:150km/h 定員:3名(+コンテナ内に最大8名)。

  • 「ジオアトス」はリーフがベース。こうして見ると、スーパーターボエンジンを搭載してそうだ。
    「ジオアトス」はリーフがベース。こうして見ると、スーパーターボエンジンを搭載してそうだ。
  • 巨大なリアウイングかと思ったら、なんだかわからない突起。その理由は番組で明らかにされるのだろう。
    巨大なリアウイングかと思ったら、なんだかわからない突起。その理由は番組で明らかにされるのだろう。
  • e-NV200がベース。イエローキャブに特殊防衛マシンにと、活躍は忙しい。
    e-NV200がベース。イエローキャブに特殊防衛マシンにと、活躍は忙しい。
  • 「ジオボルトス」も立派な電気自動車。助手席のカネゴンのような生物はなんだ?
    「ジオボルトス」も立派な電気自動車。助手席のカネゴンのような生物はなんだ?

障害なきデザイン

 びぇ~!書いてて興奮してくる。この3台が、地球を襲う悪漢から我々を守ってくれるわけだ。過激な爆破攻撃をかわしながら、泥濘地や草むらを疾走するのである。

 実車を見るかぎり、実際にレーザー砲は発射されそうも…(いや、夢を壊すのはやめよう)、されるに違いない。日産が提供するのはすべて電気自動車だけど、効果音として、ガソリンエンジンらしいエキゾーストノートが轟いたりして、などと想像するのは楽しい。

 内装はシンプルそのままだったのが残念だった。中身も本気を見せてほしかったような気がするけど、衝突安全や環境性などまったく無視して、自由に改造された3台のモデルを眺めていると、そのおおらかさが羨ましくなる。

 リアルの世界では、こんな派手な突起物は安全上許されないし、ルーフにこんなレーザー砲がニョッキリしていると、タワーパーキングは辛いよな~、などと現実的に考えてしまう自分が惨めである。自動車業界に長く居座ると、心まで純粋さを失っていくのである。ああ悲しい!

  • 撮影現場、いや、地球外生物との闘い現場に立ち会い~!
    撮影現場、いや、地球外生物との闘い現場に立ち会い~!

若者のハートにズバリと突き刺さる

 話は飛ぶかもしれないけれど、メルセデスがスーパーマリオとコラボして販売台数を一気に増やしたことが話題になった。メルセデスベンツ日本の上野金太郎社長は、若い世代にメルセデスの良さを訴求したかった。
「本国からは、イメージを壊すのかと叱られましたが、結果がついてきたことでいまでは認めてくれていますよ」とのこと。

 ヒーロー戦隊ものにはクルマは不可欠。過去からも、この手の戦隊番組と自動車会社が組むのはひとつの定番となってもきた。西武警察×日産がいまでも象徴であるように、警察ものや戦闘ものに自動車メーカーが協賛する例は枚挙にいとまがない。

 話をアニメに飛躍させても、例はたくさんある。

 スバルが「放課後のプレアデス」のデザインに関わり、日産が「輪廻のラグランジェ」のロボットをデザイン。ホンダが「わんおふ-oneoff-」に協賛もした。スバルは特にアニメとのコラボに積極的で、ガイナックスとのコラボも記憶に残る。

 若者のクルマ離れに危機感をおぼえた自動車メーカーが、こうして若者の深層心理に取り入る首謀は珍しくないのである。

 僕がかつて、ある自動車メーカーのイメージ戦略に対してアドバイスをしていた頃、「クルマの図鑑」を発刊する出版社への働きかけをして成功したことがある。ページを捲ると、救急車や消防車の片隅にスポーツカーが並んでいる。そのスポーツカーを、とある自動車メーカーの写真を掲載してもらうように根回しした。その図鑑を読んで育った子供達は、スポーツカー=とある実車として深層心理に抱えることになるというわけだ。

  • シャア専用オーリスコンセプトは1.2Lターボ搭載。ウルトラマンXとは違って、市販が前提だからスペックもリアル。
    シャア専用オーリスコンセプトは1.2Lターボ搭載。ウルトラマンXとは違って、市販が前提だからスペックもリアル。
  • アンテナまでシャア専用だ。乗るのはなかなか勇気がいるけど、痛車を思えば…。
    アンテナまでシャア専用だ。乗るのはなかなか勇気がいるけど、痛車を思えば…。
  • 量産ザクモデルコンセプト。シブイ!
    量産ザクモデルコンセプト。シブイ!

実のターゲットは我々オヤジだったりして!

 ウルトラマンXへの車両提供も、そういった手法としては定番だが、コンテンツとして華やかなウルトラマンとコラボする効果は絶大である。

 それだけではない。こうしてウルトラマンで育った僕らオヤジも、興奮させるのである。

「新ウルトラマン列伝、ウルトラマンX」はテレビ東京系で火曜日18:00から放送だよ。いい子のみんな~、幼稚園や学校が終ったら、まっすぐにお家に帰ってテレビの前にスタンバイだよ!オンタイムで見れない人は、録画することも忘れずにね!

 ウルトラマン世代のお父さんも、会社が終ったら残業なんかしないでお家に帰るんだよ~、呑み会もキャンセルするんだよ。いいね~!

  • 頼むぜウルトラマンX。僕らを守ってくれ~!
    頼むぜウルトラマンX。僕らを守ってくれ~!

キノシタの近況

キノシタの近況写真

スーパー耐久第3戦の富士ラウンドに急遽参戦した。ニュルを戦ったTOYOTA GAZOO Racingドライバーが集結。2台の86を走らせたのだ。久しぶりの富士、なかなかいい勉強になったよ。耐久レースはいいね。中身が濃い。見事表彰台に貢献させていただきました!

木下 隆之 ⁄ レーシングドライバー

木下 隆之 / レーシングドライバー

1983年レース活動開始。全日本ツーリングカー選手権(スカイラインGT-Rほか)、全日本F3選手権、スーパーGT(GT500スープラほか)で優勝多数。スーパー耐久では最多勝記録更新中。海外レースにも参戦経験が豊富で、スパフランコルシャン、シャモニー、1992年から参戦を開始したニュルブルクリンク24時間レースでは、日本人として最多出場、最高位(総合5位)を記録。 一方で、数々の雑誌に寄稿。連載コラムなど多数。ヒューマニズム溢れる独特の文体が好評だ。代表作に、短編小説「ジェイズな奴ら」、ビジネス書「豊田章男の人間力」。テレビや講演会出演も積極的に活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本ボート・オブ・ザ・イヤー選考委員。「第一回ジュノンボーイグランプリ(ウソ)」

>> 木下隆之オフィシャルサイト