木下 美明 -トップマネージメント-

木下 美明 TMG副社長に聞く2009.01.15

2009年の、エンジン寿命の延長はどのような影響がありますか?

我々がエンジン1基あたり3戦使用という情報を受け取ったのは昨年11月の初めのことであり、その後12月の半ばに、最高回転数を18000rpmに制限するという、更なるエンジン寿命に関する変更を知った。技術的な視点から言わせて貰えば、完璧な仕事をこなすには時間が十分ではなかった。エンジン開発は凍結されているが、エアボックスや排気系、燃料といった範囲でまだやれることは残っており、我々は2009年に向けて、エンジンの効率改善のために多くのエネルギーを注いできた。それだけに新たに与えられたこの挑戦は自然な流れだろう。

この変更は信頼性に影響を与えるでしょうか?

最高回転数を1000rpm落としたとしても、エンジンの使用期間を延ばせば、信頼性の問題が出る可能性は確実に増加する。トヨタにおいて、我々は常に高い目標に向かってアプローチしており、昨シーズンもエンジンに起因するリタイアは無く、目標であった100%のエンジン信頼性を達成できた。レギュレーションが変更されても、全体的な信頼性というのは、変わらず我々の目標であり、実現できると確信している。昨年と同じように、信頼性やパフォーマンスの点で妥協することなく、アグレッシブにエンジンを使えるチャンスが巡ってくることを望んでいる。

このレギュレーション変更で、結果的にエンジンを変更することは許されたのですか?

いかなる変更であれ、信頼性を目的としたものであれば、原則としてエンジンの要素を変更することは許される。しかしそのような変更を、冬季オフシーズン中のテストや、開幕戦ですら間に合わせるのは容易ではない。新しいクランクシャフトの設計と製造について考えただけでも、3ヶ月以上を要するものであり、これまで誰もそんなに短期間にエンジンの変更を行ったことはないはずだ。時間は最も重要だ。テスト走行も制限されることになったので、特に厳しい状況になっている。

パフォーマンスへの影響は?

我々はこの変更によって、パフォーマンスに一切の影響が起こらないことを望んでおり、それこそが目標だ。使い方を抑えれば、エンジンの寿命を延ばすこと自体は簡単だ。ピストンのような部品については、エンジンの最高回転数を18000rpmに下げることで、その寿命を延ばすことは出来るが、シリンダーブロックやクランクケースのような鋳造部品も含めると、信頼性は語れない。F1のエンジンは、シャシーとギアボックスを繋ぐ構造要素として、強度が要求される部分なので、エンジンの寿命を50%伸ばすと、その分振動や縁石からの衝撃などが多くかかることになる。新型車を投入するときは必ず、細かい初期トラブルに見舞われることが予想される。それは車体からエンジンにかかってくる負荷を100%予測することは不可能だからだ。

標準ECUについて、現在では完全に理解していますか?

F1においては、完璧な仕事というものはあり得ない。また、我々は常に改良を求めており、どんなパーツであれ、現状のものに満足することは決してない。標準ECUについては、我々は現時点ではより上手く使いこなせるようになっている。我々は標準ECUのポジティブな面を学び、その限界も学んだ。昨年はこのデバイスを使いこなすために多くの開発をこなし、非常に忙しいシーズンを過ごしてきた。それは非常に費用のかかる過程であった。今年は標準ECUを使う2年目のシーズンとなるが、コスト削減の視点から、その利点を実感し始めることになるだろう。

これまでにKERSにどれだけのエネルギーを費やしてきましたか?

KERSでは、この小さなデバイスに非常に大きな機械的負荷がかかることになりそうなので、電子的な面だけでなく、機械的な面でも高い技術と、多くのスタッフが必要になった。その頂点には、我々にとって全く新しい分野のデバイスである、エネルギーの保存装置がある。我々はKERSが安全に、かつラップタイム向上に繋がるように、細かなチューニングの作業を全力で続けている。

KERS開発においてはどこに焦点を当ててきましたか?

我々は最初から、安全性において完璧なデバイスを作り上げることに焦点を当てていた。デバイスだけが安全であればいいと言うものではなく、スタッフのトレーニングも必要だ。我々はまだ工程の最終段階にある。開発は進行中であり、我々は研究と改良を続けている。

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