● 東富士研究所の役割を教えてください。 モータースポーツ部エンジン主査 永井洋治:「TMGはレース活動に焦点を絞っています。レースで競争力を得るには5馬力、10馬力が大事になるのですが、それを研究するのが東富士研究所の役割です。どういう燃焼にしたら効率が良くなるのかなど、原理原則を研究し、得た技術をレース部隊であるTMGに投入しています」
● 研究・開発の領域はエンジンだけなのでしょうか。 永井:「当初はエンジン開発を一所懸命やっていましたが、それだけでは不十分だと、車両開発も行うようになりました。車両については、空力と運動解析がメインです」
森谷:「空力関係は週に1回TMGとミーティングを行っています。先行開発がメインですが、計算には時間がかかりますので、現行モデルの開発でTMGをサポートする場合もあります。そういったやりとりをテレビ会議を通じて行っています」
1. エンジンシミュレーション試験 実験棟の一室からF1のエンジンサウンドが聞こえてくる。シフトアップとシフトダウンを繰り返すなど、まるで本当にサーキットを走っているようだが、これは「サーキットパターン・シミュレーション」という実験を行っているからだ。
● この試験のメリットを教えてください。 佐藤:「例えば、サーキットパターンのシミュレーションを行っているときでも、ピストンの状態を時々刻々と測れることです。こうすることでより実走行に近い状態での解決策を見つけられるようになりました」
● 2005年シーズンで記憶に残る出来事はありますか。 原本:「冷却風を増やす方法にルーバーの設置があるのですが、付ける場所によって空力性能が落ちてしまいますので、ダウンフォースの値を維持したままいかに冷却風を増やすかに苦労しました。TMGの風洞できちんと結果が出たときにはホッとしました」
こうしてトヨタ東富士研究所の活動を見渡してみると、F1カーの開発において、同研究所の受け持つ役割の大きさに気づくことだろう。日本とドイツ、拠点は遠く離れていても、実質的には一丸となって動き、その過程でグローバルに展開するトヨタの総力が結集しているのだ。
そして、トヨタ自動車(株)本社地区の生産部門でもF1に携わっている者たちがいる。 エンジンの要の部品であるシリンダーヘッドやシリンダーブロック、クランクシャフトを作っている。加工精度はある程度機械を使って上げることができるが、最後は匠の仕事が必要になる。その、匠の仕事──技能、技術に優れた匠達が仕上げた部品が、TMGに送り出されている事も、改めてここで紹介させていただく。
表舞台に立つことはないのでそうとは気づかないが、実に多くの日本人スタッフがその活動を支えているのである。
CONTENTS
toyota-f1.comインタビュー