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トヨタ自動車の研究施設とモータースポーツ部
Features
Higashi Fuji Technical Center at the forefront of R&D in Japan
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トヨタ自動車の研究施設とモータースポーツ部

参戦初の表彰台を獲得するなど、2005年シーズンはポジティブに締めくくることができたが、活躍を支えたのがトヨタ自動車株式会社の研究施設で働くエンジニアたちである。これまでメディアでは彼らの活動がほとんど公開されてこなかったが、それは、彼らの活動がいわば“裏方”だからだ。表舞台=サーキットを主な活動のフィールドとするのがTMGなら、彼らがそこで力を発揮できるよう念入りに準備をするのが、先行開発に携わる日本人エンジニアたちである。

先行開発部隊の概要を理解していただくために、あらためてトヨタF1の組織を紹介したい。

我々パナソニック・トヨタ・レーシングは、ヨーロッパをメインに開催されるF1に参戦するレーシングチームである。運営は通称TMG(トヨタ・モータースポーツ有限会社)が行っている。本拠地はドイツ・ケルンだ。

トヨタ自動車株式会社は日本に本社がある自動車メーカーで、年間700万台以上(2005年度3月期)の自動車を製造・販売している。販売台数の3分の2は日本以外のマーケットでの実績であり、ヨーロッパや北米など、世界各地に生産拠点がある。

東富士研究所全景 量産車の研究施設と同じ敷地の中でF1の先行開発が行われている。  
ヨーロッパを活動の主な舞台とするため、F1活動の前線基地をヨーロッパに構えることは、戦略上、非常に重要な意味を持ってくる。一方で、世界に行き渡るトヨタ車の先行開発の中枢が現在でも専門の設備や人材が集積する日本に置かれているように、F1の先行開発も日本で行われている。実は量産車もF1も先行開発は同じ拠点で行われているのだ。

トヨタ自動車(株)東富士研究所
日本最高峰を誇る富士山のふもとにある東富士研究所は、トヨタ自動車の量産車に関する先端研究・先行開発を行う施設である。200万坪の広大な敷地には、1周4キロの周回路や、最新設備を備えた研究棟が立ち並んでいる。そして、この研究所の中に、F1に関する先行開発を行っている部署がある。それがモータースポーツ部だ。


東富士研究所には、量産車の操縦性や安定性、乗り心地に影響を与えるボディやシャシーの技術開発をはじめ、低燃費、低公害につながるパワートレーンの研究開発、環境やエネルギー問題など、将来を見据えた研究開発が行われているが、その一角を占めるのが、F1の先行開発に携わる「モータースポーツ部」だ。

モータースポーツ部 略歴


モータースポーツ部 F1での具体的な活動
実戦部隊であるTMGは、目の前のレースに集中して活動を行っている。一方、モータースポーツ部はTMGが目前のレースに集中できるよう、長期的なビジョンに基づいた先行開発を担当している。例えば2005年シーズン、明日の1秒を短縮するためにTMGが努力をしている間、モータースポーツ部では2006年から導入される2・4リッター/V8エンジンを睨んだ先行開発を行っていたのだ。

F1の速さを決定づける要因として空力の重要性が脚光を浴びるようになると、東富士研究所ではエンジンだけでなく車両の先行開発も受け持つようになった。TMGと東富士研究所との業務のやりとりは、衛星回線やメールを通じて行うのが基本だが、「互いに顔を付き合わせて議論をするのが最善」だという考えのもと、東富士研究所のエンジニアが短期出張ベース、あるいは出向者として日本とドイツを頻繁に行き来している。TMGの技術コーディネーション担当ディレクターとして、参戦以来、TMGと東富士研究所との技術の橋渡し役を務めた高橋敬三をはじめ、多くの東富士研究所モータースポーツ部出身者が、F1活動に携わっている。

CONTENTS

研究施設内部を一部公開 詳細..

toyota-f1.comインタビュー

マイク・ガスコイン、東富士研究所を語る 詳細..