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バーレーンGP レースの舞台裏
2007年4月16日(月)

●嵐のパーティー

木曜日の夜のこと、とにかく“興味深い”としか言いようのないような天候の下、F1パドックにあるパナソニック・トヨタ・レーシングの建物の目の前で、バーレーンGP恒例のウェルカムパーティーが開催されました。

F1ドライバーとチームスタッフのほか、500人以上の地元のVIPが参加したこのパーティーでは、さまざまなライブパフォーマンスが繰り広げられ、参加者を楽しませてくれました。6人組のバンドや何人もの歌手が登場し、さらには電気バイオリン奏者やブレークダンサーもステージにあがりました。また、受賞歴のあるアーティストたちがダンスを披露してくれたことも忘れるわけにはいかないでしょう。

ところがパーティーが中盤にさしかかった頃、ハリケーン並みのとてつもない強風が吹き荒れ始めたのです。その後、ハリウッド映画の演出すら遥かに超越するような強い雨が降り始めました。あるGP2のチームなどは、風で飛ばされた自チームのホスピタリティの天幕を数マイル先で発見したほどでした(本当の話です!)。ですが、見ている側の興をそがないよう、イベントの主催者は雨が降り止むとただちに濡れたステージをタオルで拭き取り、そしてパーティーが続行されました。

バーレーン・インターナショナル・サーキットのチーフエグゼクティブ・オフィサー、マーティン・ウィタカーは今回のパーティーについて次のように述べています。「あの雨は逆にパーティーをさらに盛り上げてくれたと思うね。パーティーの雰囲気はとても友好的で素晴らしかった。雨の間もみんなが高揚した気持ちのままだったしね。このサーキットにとって、F1の皆さんがまたバーレーンに戻ってきてくれたことをちゃんとした形で歓迎するのは重要なことだと私は思うし、われわれは彼らをこういう形で歓待するのが大好きなんだ。それからステージと照明の設置のためにチームの建物の正面のスペースを使わせてくれたトヨタとBMWザウバーには深い感謝の言葉を申し上げたい。かなり大きな騒音をたてたわけだが、それでも最終的にとても楽しい夜になったからその価値はあったと思う」

●ライバルチーム周辺で見つけたニュース
今シーズンからウィリアムズはライバルであると同時にパートナーでもあります。2006年に厳しいシーズンを送ったサー・フランク・ウィリアムズですが、チームが正しい方向へと進んでいる今の状況に関しては満足のようです。1982年のワールドチャンピオン、ケケ・ロズベルグの子息、ニコはオーストラリアで7位入賞し、マレーシアでもリタイヤするまでは6位を走行、またバーレーンでも再びトップ10圏内でフィニッシュしてみせました。

トヨタとの新しい関係について、サー・フランクは次のように述べています。「関係は非常に強力なものであり、素晴らしい状態にある。この関係において自分がどこに立っているのかわからなくなることもないし、トヨタは非常に対応も素早く、大いに手助けしてくれる。もちろんこれはメディア向けのお世辞なんかじゃない。このパートナーシップは非常にうまく機能している」

●レースリポート
バーレーンで開催されたFIA F1世界選手権第3戦で、パナソニック・トヨタ・レーシングのヤルノ・トゥルーリは激しいバトルを展開した末に2戦連続の7位入賞を手にしました。

予選でヤルノは今回もトップ10率100パーセントの記録を更新し、9番グリッドを確保しました。各車が軽い燃料で理想的なパフォーマンスを発揮する予選第2セッションにおいてヤルノが記録したタイムは、予選2位となったマクラーレンのルイス・ハミルトンのタイムからわずかコンマ5秒遅れだったのですが、これがチームのスタッフにとっては大きな励みとなりました。いっぽうチームメートのラルフ・シューマッハーはフリー走行から問題を抱えていました。金曜日にクルマのバランスに満足できなかった彼ですが、土曜日の午前中はトラブルが生じたリアサスペンションを交換するため時間を失ってしまいます。予選は14位となり、日曜日のレースは難しい展開になることが予想されました。

ヤルノはレース全体を通してルノーとバトルを繰り広げます。素晴らしい追い越しを見せてくれたヤルノは、同じイタリア人ドライバーのジャンカルロ・フィジケラをわずかコンマ5秒の差で振り切ってチェッカーを受けました。

「自分に与えられた状況の中で最高のものを引き出すことができたから、この結果はうれしく思っている」と話すヤルノ。「自分の持っている経験のすべてを利用したんだ。クルマのバランスは良かったけど、ストレートで速くなかったから、ずいぶん長い時間、守りのドライビングをしなければならなかった。ミスをひとつも冒さずに、しかもプレッシャーがかかる状況でさらにポイントを獲れたときはやはり満足した気分になれるね」

ヤルノの言葉を証明するように、レースでのスピードトラップの記録によれば、この日最速だったのはヤルノが大変なバトルを展開した相手であるウィリアムズ・トヨタのアレクサンダー・ブルツ(時速313.5キロ)でした。いっぽうでスピードトラップに記録されたヤルノの最速スピードは時速305.6キロだったのです。

いっぽうのラルフは中団グループで厳しいレースを強いられ、12位でフィニッシュしました。

「今日のような順位からスタートするとどうしても渋滞につかまってしまう。今週末は最初から厳しい状況だった」とラルフ。「とにかくこの結果は過去のものにして、バルセロナの前の期間を有効に使わなければならない。スペインGP前には新しい空力パッケージが届く予定だし、今日のヤルノはわれわれにポイントを獲得する力が備わっていることを証明してくれた。だから私もそれに焦点を当ててがんばるよ」

マレーシアで苦しんだフェラーリのフェリペ・マッサですが、予選ではその悪い流れを変えるポールポジション獲得に成功し、レースでも見事スクーデリア・フェラーリ・マールボロに優勝をプレゼントしました。2位はボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンでしたが、これで彼はF1史上初のデビュー戦から3戦連続の表彰台獲得という記録を打ち立てたことになります。また、ハミルトンはこれで選手権ポイントが22ポイントとなり、3戦を終えた時点でチームメートのフェルナンド・アロンソ(今回は5位)とフェラーリのキミ・ライコネン(今回は3位)とともにタイトル争いのトップに並びました。

今回のトヨタのレースについてシャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーのパスカル・バセロンは次のように述べています。「ヤルノは超絶的なドライビングを見せてくれた。とても攻撃的で、前車を追い抜くべきときにそれを実行し、守りの走りに徹しなければならないときにはひとつもミスを冒さなかった。クルマに関してはもうすこしラルフの好みに合うように調整しなければならない。今からスペインまで間に、この課題に懸命に取り組むつもりだ。また、スタートについても見直すつもりでいる。今日もまたスタートで順位を落としてしまい、かなりフラストレーションを感じてしまったからね。ヤルノの予選の速さを見てみると、われわれが4番目に速いクルマを手にできていることがわかるし、レース結果がそれを裏付けている。これからスペインGPまで3週間の間隔が空くが、F1ではいつものことながら、開発のペースはもちろん緩めるわけにはいかない」