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カナダGP レースの舞台裏
2007年6月11日(月)

●冨田チーム代表の送別パーティー
今月でパナソニック・トヨタ・レーシングのチーム代表の職務を終え、新たに富士スピードウェイの会長に就任する冨田務をお祝いする会がパドックで行われました。富士スピードウェイは今年30年ぶりに日本GPを開催することになっています。

冨田務はエンジン開発エンジニアとして1969年にトヨタに入社し、1987年からずっとトヨタのモータースポーツ活動を指揮してきました。1996年には取締役に昇進し、その後、2003年にジョン・ハウエットとともにF1プログラムを直接統括するため、ケルンに本拠地を置くパナソニック・トヨタ・レーシングに移籍しました。

今回のカナダGPが彼にとって最後のレースとなったため、チームは彼に特製ケーキと、新しい職務での活躍を祈るレースチームのスタッフ全員がサインした旗をプレゼントしました。レース終了後、冨田務は次のようにコメントしました。「今日獲得したポイントは私へのうれしい送別プレゼントになりました。今後に向けてチームの最善と幸運を願っています。今度は富士スピードウェイでお会いしましょう!」

ライバルチーム周辺で見つけたニュース
レース後の最大の関心事はロバート・クビサの容態についてでした。BMWザウバーのチーム代表、マリオ・タイセン氏は「レース中、私はメディカルセンターにいたのですが、その時点ですでにロバートは病院へ搬送されていました。コースドクターは彼に大きなケガはなく、身体の内部にも特に異常はないと言っていました。ロバートは会話もでき、その言葉通りに腕や足を動かすことができていたそうです。ただしモントリオールの病院で全身の検査をする予定だと言われました」とコメントしています。

レースではルイス・ハミルトンが優勝を飾り、またもや表彰台を獲得。これで彼は初めてタイトル争いの単独トップに躍り出ました。カナダGPを終えた時点で彼は48ポイントとなり、チームメートのフェルナンド・アロンソに8ポイント差、フェラーリの直近のライバルであるフェリペ・マッサには15ポイント差をつけています。コンストラクターズ選手権では、88対60でボーダフォン・マクラーレン・メルセデスがスクーデリア・フェラーリ・マールボロをリード。いっぽうパナソニック・トヨタ・レーシングは6位となっています。

レースリポート
モントリオールで開催されたFIA F1世界選手権第6戦カナダGPではアクシデントが多発し、難しいレース展開となりましたが、そんななかパナソニック・トヨタ・レーシングのラルフ・シューマッハーは8位入賞を果たし、1ポイントを獲得しました。

今回のレースでは4度もセーフティーカーが導入されましたが、そのなかでもっとも深刻な状況だったのはロバート・クビサのアクシデントです。サーキットからの当初の報告によると、彼は片足を負傷したものの、意識は明瞭で安定しており、モントリオールの病院で全身の検査を受けるということでした。

クビサはヤルノと争っていたのですが、ショックを受けたヤルノはレース後次のように語っています。

「レース序盤、私はグリップ不足に悩まされていました。セーフティーカーが入ったときはロバートのほうが私より速かったですね。私は自分の走行ラインをキープしたのですが、バックミラーで最後に彼を見たとき彼は私の左側にいました。その後、私のクルマの後部に何かが当たったのですが、私には何が起こったのかまったくわかりません。私に見えたのは、かなり長い間コース上にとどまっていたメディカルカーだけで、彼のことが心配でした。ですから彼が大丈夫だと聞いてほっとしています」

「その後タイヤがパンクしてしまいました。原因はロバートとのアクシデントかあるいは(彼のクルマの)破片が散らばっている個所を通過したためかもしれません。レース中はポイント圏内で走行していたのですが、終了近くになってから最後のピットストップに呼ばれ、その時点で私のレースは終わりでした。私はピットインし、集中力を失い、そして壁にまっすぐ突っ込んでしまったのです。今回は難しいレースでしたし、終わってくれたことを本当にうれしく思います。このような一日の後ですから、レースそのものは重要ではありません」

この週末は金曜日のフリー走行でヤルノが2度もサスペンションの破損に見舞われるなど、トヨタにとって不穏な滑り出しとなっていました。最初にサスペンションが破損した後、チームは原因を調査する間、ラルフもピットに戻るよう指示しました。その後、チームはセットアップを変更することでこの問題を回避しています。

問題が生じたカーブの縁石を避けることにしたため、ラップタイムで10分の2~3秒程度損をすることになりましたが、そうした状況にもかかわらずヤルノは予選10位という素晴らしい結果を出してみせました。いっぽうのラルフは2レース連続で予選第1セッションを通過することができませんでした。第1セッションでは赤旗が振られたためコースが渋滞してしまい、そのせいでラルフはクリアラップがとれなかったのです。

この結果ラルフは後方の18番グリッドからのスタートとなりました。これは彼の潜在能力を反映した結果ではありません。ラルフはレースで懸命にプッシュし、さまざまなドラマが起こったレース展開をうまく自分のほうへと引き寄せ、最後はチームに1ポイントをもたらしました。

「レースの前はポイントが獲れるなんて思ってもいませんでした」とラルフ。「スタートがあの位置からでしたから、第1スティントを長く引っ張るために燃料を満タンにしたのです。直線スピードが遅かったため最終シケインがかなりキツかったのですが、おかげでいくつも順位を挽回できました」

カナダGPでは現在センセーションを巻き起こしている新人ドライバーのルイス・ハミルトンが初優勝しました。マクラーレン・メルセデスの彼は、予選でポールポジションを獲得し、レースでも最初から最後までトップの座を譲りませんでした。BMWザウバーのニック・ハイドフェルドは予選で見事3番グリッドを獲得し、レースではうまくこのチャンスを生かして2位に入りました。3位には1回ストップ戦略をうまく活用したアレクサンダー・ブルツが入り、ウィリアムズに2年ぶりの表彰台をもたらしました。

各F1チームはこれからまっすぐインディアナポリスへと向かい、2週連続で開催される来週末の北米ラウンド第2戦に備えます。