パナソニック・トヨタ・レーシングにとって今回のレースはいわば自分たちの足元を確認するための一戦となってしまった。
週末を通してTF106はグリップ不足に悩まされ続けており、ロングランとなるレースでは予選以上の速さが期待されていたものの、それもかなわなかった。レースにはドライバーの2人それぞれが別々の戦略で臨むこととなり、可能な限り多くのデータを取れるよう、ラルフは3回ストップ、ヤルノは2回ストップを選択した。
「もちろんもっといい形でシーズンのスタートを切れればと思っていた」と話すラルフ。「だが今われわれが置かれている現状を踏まえた上で、今後のレースのためにこのレースからできるだけ多くのことを学べるよう、セットアップに関する情報を最大限に収集することにした」
レース序盤、2台のTF106はお互いがかなり近い位置を走行していたが、燃料が軽いラルフのアドバンテージを生かせるよう、ヤルノはラルフを先行させた。
「タフな午後になってしまった」と打ち明けるヤルノ。「レースの最後まで懸命にプッシュし続けたが、やればやるほど自分が遅くなっていくように感じた。このクルマに関してわれわれが特に何かを間違えたはずはないのに、とにかくグリップが得られなかった。こういった状況でレースをするのはかなりきついし、今後のレースに向けてこれからチーム全体が懸命に仕事をしていかなければならないのは明らかだ」
レースに勝ったのは、ミハエル・シューマッハー(スクーデリア・フェラーリ・マールボロ)をわずかの差で抑えたディフェンディング・チャンピオンのフェルナンド・アロンソ(マイルドセブン・ルノーF1チーム)だった。3位はキミ・ライコネン(チーム・マクラーレン・メルセデス)、4位はジェンソン・バトン(ラッキーストライク・ホンダレーシングF1チーム)、5位はファン‐パブロ・モントーヤ(チーム・マクラーレン・メルセデス)、6位はマーク・ウェバー(ウィリアムズF1チーム)、7位は今回がデビューレースだったニコ・ロズベルグ(ウィリアムズF1チーム)、そして8位がクリスチャン・クリエン(レッドブル・レーシング)となった。
2006年開幕戦の厳しい結果について、シャシー部門テクニカルディレクターのマイク・ガスコインは次のように話した。
「レース・ペースはもっといいと予想していた。テストでは相当な量のロングランをこなしたし、ライバルチームに関するあらゆるデータとの比較もできていたので、自分たちの位置も推測できていた。だが今回はまったくその予想レベルに到達していなかった。現段階ではその理由もわからない。レース後にわれわれのクルマのタイヤを確認してみたが、まるで新品のような状態だった。ブリヂストンのスタッフもわれわれと同じくらい驚いていたが、もちろん彼らに対する批判は何もない。ブリヂストンを履いたクルマが2位になったわけだし、しかもあと一歩で優勝するところだったんだからね。だがわれわれは明らかにタイヤを使いこなせていなかった。われわれの何が間違っていたのか、何かヒントになるような情報を提供してもらえないか、すでにブリヂストンに依頼している。クルマに何も悪い所がないのにとにかく遅い、というコメントがドライバーから返ってくるのは普通のことではない。ダウンフォースが足りなかったとか、そういったことが要因として考えられる、という状況でもない。とにかくこの問題を解決できることを願っている」
今年のF1カレンダーはきつい日程が組まれており、序盤から大陸をまたいだ連戦となっている。第2戦のマレーシアGPは、わずか7日後に暑くて湿気の多いセパン・サーキットで開催される。 |