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Rd2. Grand Prix of Malaysia
grand prix
新居章年リポート
2006年3月19日(日)
 

応援ありがとうございました。第2戦マレーシアのリポートです。

●2戦目できっかけをつかみたい
前回のレース、バーレーン戦では散々な結果でしたから、もう失うものはないという気持ちでした。では前回何が悪かったのか。直ぐにTMG(ドイツ・ケルン)へ戻りいろいろ調べてみました。その結果は、はっきり言って、「コレ」というものがないのです。ひとつひとつの要素はそんなに悪くない。冬のテストを通じてもそうでしたが、前回のレースを通じてもそう。要するにバランスの取り方がいけなかったのだろうという判断をしました。

それともうひとつ、バーレーンの金曜日、路面コンディションが砂っぽいのであまり走らなかったのです。そのせいもあって、自分たちのポジションが正確に分からなかった。ですので、今回は金曜日から元気に走り回ることにしました。暑いのでドライバーは大変だと思いますが、前回よりエンジンの回転数も上げ、周回数も増やそうという考えでいました。その中でクルマの基本的なことをもう一度見直すという作戦です。

いずれにしても、それほど深刻なムードにはなっていません。本来のパフォーマンスを引き出してやろう、今すぐハードを大幅に変える必要はない、というのがその時点での考えでした。

●朝から元気に走った1日目
予定通り、午前中のセッションから元気に走り回り、距離を延ばすことができたと思います。遅いじゃないか(ヤルノ11番手、ラルフ17番手/第2プラクティス)と言われても仕方ないタイムで、私たちも満足していませんが、手応えはありました。タイヤがうまく使えたということです。まだ先はあると思っていますが、少しずつ進んでいる手応えを感じています。

今回のマレーシアGPでは積極的に走り込んで、空力やサスペンションにおいて様々なトライを行い、目指すべき方向性が見えてきた。  

前回はある程度プログラムを絞り込んで走ったのですが、今回は最初から絞ることなく、色んなことにトライしました。空力のスペックも、足回りもいろいろ試して見ました。空力についてはダウンフォースを増やしたり減らしたり、足回りについてはキャンバー(路面に対してタイヤの垂直方向の角度)やトー(路面に対してタイヤの水平方向の角度)を調整しました。走ってみて少しシャープすぎたので、ちょっとキャンバーを立ててみる(路面に対して垂直に近い角度にする)といったような内容ですね。

収集したデータを検証し、土曜日のセットアップに反映します。エンジンに関しての懸念はありません。暑いので温度管理をしっかりしないといけないのですが、心配はしていません。

●攻めの姿勢をキープ
土曜日に何をやるかについてはじっくり考えました。結果、ラルフはクルマのバランスに手応えを感じていましたのであまり触らずにおきました。ヤルノの方はまだナーバスなところがありましたので調整をして走らせました。また、空力面では前日にやり残したことがあったので少しトライをしました。トライをした結果、効果は確認できたのですが、ラップタイムの向上にはつながらない。クルマのセットアップも詰め切れなかったので、元の状態に戻して予選に臨みました。

予選の最初のセッションは、開始直後から走り始めました。前日と同じように、あまりけちらずに行こうということです。タイヤもどんどん使いました。とにかく、Q3(予選第3セッション)につなげようということです。

ラルフに関しては、午前中からクルマの状態に手応えを感じていたので、予定通りに進んだかなと考えました。ヤルノはアンダーステアを訴えていたので、フロントウィングを調整しながらの走行になりました。結局、ヤルノはクルマを仕上げきることができず、13番手。午前中、彼にはいろんなテストをやらせたので、少し時間が足りなかったのかなと思っています。

ラルフについてはいい感触を得ていましたが、Q3まで行けると思った瞬間にクルマが止まってしまいました。正確な原因はまだつかめていませんが、エンジンであることは間違いありません。タイムとしてはあの時点で10番手以内を確保していました。あと少しは更新できたと思っていたので、少し残念です。

ただ、他のクルマがエンジンを交換する関係で、ヤルノはトップ10以内からのスタート、ラルフは予選後のエンジン交換なので最後尾からのスタートとなりました。戦いとしては厳しいですが、少しでも上位を狙うつもりでいました。

●見えてきた明るい光
結果的には1点でもポイントが獲れて良かったと思います。先週のレースは散々な結果だったのですが、ここに来て、少し光が見えるようになってきました。土曜日はラルフのエンジンが壊れ、レースは最後尾からのスタートになったのですが、ラルフは非常に力強く走ってくれましたし、終盤は上位と遜色ないラップタイムで走れました。今後のレースへ向けて、その前途が明るくなってきたのかなと感じています。

一方、ヤルノはレース序盤に他車に接触され、ディフューザーを損傷してしましました。それが原因でクルマが不安定になってしまい、ラルフに比べればペースが上がりませんでした。

公式リリースなどでも公開されている事実ですが、実は今回は2台とも2回ストップ作戦だったのです。ラルフのピット回数が多いのではないか、と思った方もいらっしゃると思いますが、ラルフの最初のピットストップは予定外でした。ピットのモニターでエンジンに変調の兆しが見られたので早めにピットに入れて調整しました。これがなければレースの展開はどうなったかという話もありますが、そんな予定外のピットストップがありながらもいいペースで走れましたので、ドライバーはよく頑張ってくれたと思います。

  ラルフは最後尾からスタートしてポイント獲得の8位。予定外のピットなどがあったが1週間前と比べるとよい状況となった。さらに前進して第3戦オーストラリアGPに挑む。
また、最後尾からのスタートなので、1回ストップの選択肢もあると思われるかもしれませんが、ラルフは予選でQ3まで残っていますので、予選前に申請した以上に燃料の補給をすることができません。1回ストップをするとすればピットスタートを選択する以外にないのですが、グリッドからスタートした方が得策だろうと判断しました。結果的に、ラルフは1周目でずいぶん順位を上げましたので、正しい判断をしたと思っています。

開幕戦を終えた直後に比べれば先行きは明るくなりました。だけどまだ、今回の結果が本物かどうか、じっくり取り組んでいかなければいけないと思います。次回の第三戦、オーストラリアGPは寒くなることが予想されますので、南仏のポールリカールにて低い温度を想定してしっかりテストをし、タイヤを含め十分に準備をして第三戦の地へ向かいたいと思います。次のレースも応援よろしくお願いします。

第2戦を迎えた新居章年。チームは開幕戦での不振から脱し、調子も上向きだ。