いつも応援ありがとうございます。TF106Bのデビュー戦となりましたモナコGPの報告をいたしましょう。
●TF106Bのデビューレースで好成績を目指す
スペインGPのあとで2台のTF106Bをポールリカールに持って行き、テストをしました。レースドライバーのふたりがモナコ仕様のテストをしたあと、テストドライバーのふたりが引き継ぎ、カナダ仕様のテストを行っています。4日間のテストは無事に終えることができました。モナコにはTカー(スペアカー)として3台目のTF106Bも持ち込んでいます。
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今回登場したTF106Bはフロントサスペンションの改良がメインテーマ。プッシュロッド(タイヤにかかる力を伝える構造物)の取り付け位置が変更されたため、TF106にはなかった車体上面のコブのようなものが見えるのがパッと見てわかる違いとなっている。 |
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シャシーナンバーで言えば、TF106/06、07、08ですね。テストでは06と07を使用しましたが、モナコでは07をラルフが、08をヤルノが運転します。08はテストの時点ではまだ本格的に走れる状況ではなかったのですが、チームが頑張って間に合わせてくれました。
そのTF106Bですが、フロントサスペンションが変更になっています。2005年のTF105からTF105Bに変更する際、フロントサスペンションの構成を変えましたが、バランスの取り方には目をつぶったところがありました。TF106もTF105Bを踏襲していましたが、TF106Bではフロントサスペンションの構成を変え、高いレベルでバランスさせています。両ドライバーともいい感触を持ってくれましたので、設計の狙いが達成できていると思っています。
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空気の力によって路面に車体を押し付けるダウンフォースが不足しがちなモナコでは、追加ウイングを導入して、少しでも不足分を補う。その他、サイドポンツーンにも同様な処置をモナコスペックの空力として採用している。 |
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また、モナコはダウンフォースが重要なので、特別な仕様のパーツが付いています。ドライバーのヘルメットの上、エアポッドの周辺に3枚ウィングが付いているのが分かるでしょう。サイドポンツーンの処理も変更しています。これらはあくまでもモナコ仕様です。イギリスへはもっとすっきりした形で持ち込みます。
モナコはTF106Bのデビューレースですので、なんとしても好成績を残したいという気持ちで臨みました。
●フリー走行ではTF106Bの走り込みに集中
特別なスケジュールで行われるモナコGPは、他のGPでは金曜日にあるフリー走行を1日早く木曜日に行います。その木曜日のフリー走行では、クルマの確認に集中しました。メカニカルなトラブルや電気系のトラブルに気をつけなければいけないのですが、問題なく1日の走行を終えることができました。いつもなら初日の午前中はインスタレーション(機能チェック)だけで終えるのですが、ヤルノのクルマは初めて走るということもあり、朝のセッションから積極的に走りました。
当然、いつものように予選~レースで使うタイヤを決めなければいけません。さらに、これまでの延長線上とはいえ、モナコ用の空力パッケージを持ってきていますので、そのあたりのバランスも見る必要がありました。路面のグリップが低かったことや、タイヤや重量の関係もありますので、タイムだけを見ていただくと「なんだ」と思われるかもしれませんが、十分手応えのある1日でした。
●予選での目標は2台揃ってトップ10入り
午前中のセッションはもともとレースの準備に専念すると決めていたんですが、それにしてもタイムが出なかったですね(ヤルノ19番手、ラルフ21番手)。でも、それには考えがあったからです。ドライバーはふたりともベテランですから、ニュータイヤを履いたときの状態について想像することができます。必要があればニュータイヤを履かせる準備はしていましたが、その必要はなくセッションを終えました。
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TF105に対してフロントサスペンションを改良して登場したTF105B、さらにリアサスペンションに手を加えてTF106へと発展。そしてTF106BではTF106に対して前後バランスの均衡化を図ったバージョンとなっている。 |
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予選では2台ともトップ10圏内に残れるかなと思っていましたが、残念なことにラルフが予選2回目のセッション中の1本目のアタックでうまくタイヤを使うことができず、11番手止まりになりました。非常に残念です。ヤルノはもう少し上を狙っていたんですが、8番手タイムになりました(予選後にルノーのジャンカルロ・フィジケラの降格処分とフェラーリのミハエル・シューマッハーの予選除外処分により、ヤルノ6番手、ラルフ10番手にそれぞれスターティンググリッドが繰り上がっている)。
ほんの少しの差なんですが、ドライバーにしてみればタイムアタックに入ったときに、自分の思ったとおりのウォームアップができなかったのが結果に響きました。事前にポールリカールでテストを行いましたが、ポールリカールとモナコでは路面の状況が違います。当然、状況が異なることは分かっていましたし、TMGに帰ってからも準備をしたのですが、ちょっと合わせ込め切れなかったかなと思っています。
●無念のトラブル―しかしながら収穫も得られたTF106デビュー戦
決勝では表彰台圏内を順調に走行していただけに、メカニカルなトラブルのせいでヤルノに申し訳ないことをしたと思っています。ポンプなのか配管なのか、正確な原因はまだ分かりませんが、ハイドローリック(油圧系)であることは間違いありません。油圧が突然落ちたのですが、するとクラッチも動かなくなり、パワーステアリングも効かなくなります。
本当に突然でした。リタイアする前のラップでエンジニアがドライバーに無線で「調子はどうだ」と連絡をしました。するとヤルノから「今はプッシュしていない」と返答ありました。プッシュすれば後ろのクルサードとの間隔が空くから問題ないと。その交信があった直後に止まってしまいました。
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レース中にパフォーマンスが安定しない状態も見られたTF106だが、TF106Bではそのような不確定要素は見られず、レース終盤になってもヤルノ、ラルフともに良いペースで走っていた。しかし、ヤルノは無念のトラブルでストップ、17位という成績に終わった。 |
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その前のレース戦略を振り返りますと、ホンダのルーベンス・バリチェロに前を押さえられていたヤルノが、同時にピットストップを行いました。少し前の周で入れたらどうかという考えもありましたが、難しいところでしたね。あの時点では1分19秒から20秒で周回していましたが、バリチェロが目一杯走ってあのペースだったのか、それともセーブしていたのか分かりませんでしたから。給油をすれば当然ペースは落ちますので、リスクを考えて早めにピットインする作戦はとりませんでした。
一方、ラルフはスタートがすべてでしたね。ヤルノのスタートもそうでしたが、給油回数を減らす1回ストップの作戦で燃料を多く積んでいましたので、スタートはうまくいかなかったのかなと。その後はどうしても前を走っているクルマのペースに影響されてしまいます。ラルフもヤルノももっとペースは上がったと思います。
結果につながらなかったのは残念ですが、ずっと安定したペースで走れましたので、今回から投入したTF106Bに対する収穫を得ることができました。僕らもクルマも、1戦1戦着実に成長していきますので、今後とも応援よろしくお願いします。
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