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Rd9. Grand Prix of Canada
grand prix
新居章年リポート
2006年6月25日(日)
 

いつも応援ありがとうございます。北米ラウンドの初戦、カナダGPの報告をいたしましょう。

カナダGP用に新しい空力パーツが投入された。フロントウイングはこれまでの中央、ステー取り付け部分前後のウイングの湾曲が緩やかだったのに対して、新しいものは中央が尖った形になっている。  

●シーズン折り返しの1戦でこれまで以上の結果を狙う
カナダはこれまで経験してきたサーキットと違い、ストップ&ゴーの性格を持っていますので、フロント、リアともに専用のウィングを持ち込みました。また、ブレーキにも非常に厳しいサーキットですので、冷却関係もそのつもりで準備しています。去年のレースでは、ヤルノ(トゥルーリ)のクルマにテレメトリーの故障があり車両の状況が把握できず、終盤でブレーキトラブルが発生しましたが、今回、そのあたりはしっかり肝に銘じています。レース中もしっかりモニターし、必要があればブレーキの前後配分などをコントロールすることも考えていました。

今シーズンは開幕戦でつまずきましたが、その後は進歩を遂げ、確実にキャッチアップしていると思います。2006年シーズンの折り返しなので、ここでしっかりいい結果を出す意気込みでカナダへとやってきました。

●ヤルノにトラブル発生。厳しい初日となる
金曜日はなかなか厳しい一日だったと思っています。路面はそんなに良くないだろうと思っていましたが、予想以上に悪かったというのが実感でした。アレッ? という感じがありましたね。気温が低いこともあってタイヤのウォームアップ性能が悪かったので、ウォームアップを良くしたりするような調整をやりながら午後のセッションに臨みました。
 
2回のフリー走行が行われる金曜日、ブレーキまわりの作業を行うメカニックの様子を見守るラルフ。激しいブレーキングが繰り返されるモントリオールではブレーキへの負担が他のサーキットとくべて非常に大きい。

午後は日が出てきたので路面温度も上がり、コンディションはだいぶ良くなりました。セッション後半になればなるほどタイムが出る状況になったと思います。我々は2回目の走行も早めに活動を始めました。ブレーキへの負荷の確認や空力の確認をしながらタイヤの評価を行いました。

そのあたりは順調に進んでいたのですが、セッションの終盤でヤルノにギヤボックスのトラブルが発生し、予定していたロングランができなかったのが残念です。結果としてはメカニカルな部分のトラブルなのですが、それがどのような原因で起きたのか、入念に調べる必要があります。

この先、クルマに不具合が出ないようにしっかりしないといけないですね。P1(フリープラクティス1回目)、P2、P3、Q(予選)と何もなく走るのが当たり前ですから。成績がもうひとつなのは、そこができていないこととリンクしているのではないかと思っています。しっかりできるようひとつずつ見直します。

ヤルノもラルフ同様、ピット内での作業を見守る。昨年の決勝では、ヤルノ車の状態を無線で知らせるテレメトリーのトラブルでブレーキ周辺の異常が把握できなかったため、事前に兆候をつかむことができなかった。  

●ヤルノが今季最高予選ポジションの4番手を獲得
今シーズン最高のグリッドを獲れたのは良かったと思います。ヤルノは頑張ってくれました。前日のトラブルを克服してくれたチームのみんなにも感謝したいと思います。

反対にラルフ(シューマッハー)は午前中のプラクティスからバランスがうまくいかなくて、予選でもそれを引きずってしまいました。午前中に比べればコースの状況は好転したと思うのですが、予選2回目のセッションに行った2回のアタックでタイムを更新することができず、トップ10に入ることができませんでした。ほんのちょっとの差だったのですが、非常に残念です。

スタートに関して言いますと、これまでバルセロナ、モナコ、シルバーストンと立て続けに最初のポジションをキープできていません。良かれと思ってやったことが裏目に出たり、ホイールスピンが多めに出てしまうなど、理由はいろいろですが、それは理解していますので、ここカナダのスタートには期待していました。

レースへは当然上位を目指して頑張るという気持ちで臨みました。厳しいレースになるだろうと予想していましたが、やはりラルフにはポイントを獲れる位置まで上がってほしいし、ヤルノも当然表彰台を目指してほしいという気持ちでした。

●うれしさ半分のポイント獲得劇
決勝ゴール後の感想は?と言うと、うれしさ半分ですね。ヤルノが今年初めてポイントを獲得してくれて、本当に良かったと思います。予選で4番グリッドを獲得、レースではいろいろ苦しんだところがあって、フェラーリの2台には抜かれてしまいました。それでも、非常に良く頑張ってくれたと思います。今回のレースでクルマのパフォーマンスが確実に上がっているのを実感できましたし、ドライバーもそれに応えるよう頑張ってくれました。

当然、思い浮かべていたのはもっと上のポジションでしたが、予想したとおり厳しいレースになりました。上位にリタイアがない状態だと4番手を保てるかどうか難しいとは思っていました。レース終盤、フェラーリの(フェリペ)マッサが2回目のピットに入るのではないかと期待しましたが、結局は1回ストップでした。マッサとヤルノの差が10秒以内なら逆転もありえると思ったのですが、セーフティカーが入った時点で、これはだめだなと思いました。

スタートは、まあ普通でした。そんなにびっくりするほど良くはなかったですね。まだまだやることはあると思っています。そしてレースのペースですが、ヤルノにしても今回は満足できるものではなかったと思います。第1スティントの最初の方でタイヤにグレイニング(ささくれ摩耗)が出てペースに苦しんだこともありますし、レース中盤はエンジンにミスファイアが出ました。ミスファイアに対してはピットからドライバーに指示を出して対応しました。クルマもタイヤも決して完璧な状態ではなかったということです。ヤルノは「もっと行けた」と思っているでしょう。

 
久々にポイント獲得することができたヤルノに対して、ラルフは苦しいレースとなった。グリップ不足に悩まされ、最終的にはリタイアを決定。ヤルノと違うタイヤを選んだことが裏目に出てしまった。

一方ラルフですが、スタート直後からグリップがないということでした。実はラルフの好みでヤルノとは違うタイヤを選んだのです。結果論ですが、もしヤルノと同じタイヤを選んでいれば、同じような走りができていたと思います。一応、ラルフのピットストップの際に足回りの確認をし、異常がないか調べたのですが、問題はないだろうと思っています。しかし、改善の兆しが出なかったので、最後はドライバーと相談し、ピットに戻しました。

すぐまたアメリカでレースがありますが、全体の流れとしてはパフォーマンスの向上が確認できています。次のレースは2台そろって入賞できるよう、いいレースをしたいと思いますので、次週も応援よろしくお願いいたします。

北米2連戦に挑む新居章年。ラルフは失速したものの、ヤルノが今季初ポイントを獲得し、TF106Bの戦闘力を確認することができた。次戦アメリカGPにも期待が膨らむ。