土曜日の予選でサスペンションのトラブルに見舞われたヤルノは、結局予選第1セッションで脱落し、上位進出は望み薄となる困難な状況となっていた。チームは予選終了時からレースのスタートまでの間にこのトラブルを修復しなければならず、しかも、F1スポーティング・レギュレーションの規定により、ヤルノはピットレーンからのスタートを余儀なくされる。
「もちろん理想的な状況とは言えなかった」と話すヤルノ。「だがこのインディアナポリスでは自分たちが速いクルマを手にしているという自信があったし、ここは追い越しが可能なサーキットでもある。スタート直後の1コーナーで起こったアクシデントのせいでセーフティーカーが導入され、それが自分に都合良く働いてくれた。セーフティーカーがピットに戻った後も、1回ストップを選択していた私のクルマは搭載燃料がかなり重かったにもかかわらず、上位集団と同じペースを難なく維持することができたし、自分たちがいいところまで行けそうだということもわかっていた」
「私は満足するということを知らない人間だから、表彰台に上がれたら更に良かったと思う部分もあった。でも最後尾からスタートしてルノーから5秒後ろの4位でフィニッシュできたのだから満足すべきなのだと思う。残りのシーズンに向けて、この結果はチームにとっていい励みになったし、また、われわれは着実に進化を続けていると言えるだろう」
いっぽう、8番グリッドからスタートしたチームメートのラルフ・シューマッハーは2回ストップ作戦を選択。レースでは30周目と53周目にピットインし、ヤルノのすぐ後でフィニッシュできるかと思われた。だが全73周の残りわずか11周となったところでメカニカル・トラブルのためリタイヤとなる。
「厳しいレースだった。相当に暑かったしね」と話すラルフ。「最後にピットインするまで私はフェルナンド・アロンソの前の5位を走行していたし、そのままフィニッシュしてかなりポイントを稼げるはずだった。私のクルマはブレーキに問題が生じていたのだが、チームは左前輪のホイールのベアリングに問題があったことを発見した。シーズン前半はずっと厳しかっただけに、今回ポイントを獲れればよかったのだが……。ただしすくなくともわれわれのパフォーマンスのレベルは非常に勇気づけられるものだった」
レースではスクーデリア・フェラーリ・マールボロが圧倒的な速さを見せ、ミハエル・シューマッハーがチームメートのフェリペ・マッサを従えて2004年以来となる1-2フィニッシュを達成。タイトル争いでトップに立つフェルナンド・アロンソとの差を残り8レースで19ポイントにまで縮めた。3位はマイルドセブン・ルノーのジャンカルロ・フィジケラ、4位のヤルノの後ろは5位がルノーのアロンソ、6位がラッキーストライク・ホンダのルーベンス・バリチェロ、7位がレッドブル・レーシングのデビッド・クルサード、8位がスクーデリア・トロロッソのイタリア人、ヴィタントニオ・リウッツィとなった。
2005年の異常事態を体験していたアメリカのF1ファンは、スタート直後の1コーナーで発生した多重クラッシュを息をのんで見つめていた。一瞬にして7台がリタイヤとなったこのアクシデントでは、BMWザウバーのニック・ハイドフェルドのクルマはグラベルを5回も転がってしまった。幸いにもドライバーは全員無傷だったものの、この結果、ファン‐パブロ・モントーヤ、キミ・ライコネン、マーク・ウェバー、クリスチャン・クリエン、フランク・モンタニー、ニック・ハイドフェルド、そして人気の母国ドライバー、スコット・スピードがその場でリタイヤとなった(このときの接触の影響でジェンソン・バトンも3周でリタイヤ)。
パナソニック・トヨタ・レーシングのシャシー部門シニアゼネラル・マネージャー、パスカル・バセロンは次のように述べている。「またしてもラルフがリタイヤに終わったのは非常に残念だ。彼の戦略とレース序盤にバリチェロの後ろにつかまっていたことを考えれば、今日のラルフは非常にいいレースをしていたと思う。2回目のピットストップではアロンソをかわしていただけに、今回のトラブルはかなり痛かった。コースのほうは、タイヤのタレも少なく、ヤルノの1回ストップ戦略にうまく合っていた。わずか数秒の差で表彰台を逃したとはいえ、ヤルノは素晴らしい仕事をしてくれた」
これからF1世界選手権は再びヨーロッパへと戻り、次回は7月16日にフランスGP決勝を迎える。
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