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Rd17. Grand Prix of Japan
grand prix
新居章年リポート
2006年10月8日(日)
 

いつも応援ありがとうございます。皆さん、そして我々も待ちに待っていましたホームレースであります、日本GPの報告をいたします。

前戦から信頼性を向上させて鈴鹿に臨む
先週の上海で新しいアイテムをまとめて持ち込みましたので、空力関係での日本GP向けの変更点はブレーキダクトくらいです。ダクトを換えたのは、鈴鹿は上海に比べてブレーキにとって少し楽だからです。

中国GPで投入した空力パッケージのうち、主にブレーキダクトを鈴鹿仕様へと変更し、日本GPへと挑んだ。エンジンも1レース目のフレッシュなものだが、前戦のものから信頼性を見直した形となっている。  

エンジンは、前回ヤルノ・トゥルーリもラルフ・シューマッハーもエンジントラブルで止まってしまいました。今回は、信頼性は一番高い仕様にしていますので、前回のような不具合はないと思います。上海のエンジンはもともと鈴鹿でも2レース目で使う予定だったので今回のエンジンも、パフォーマンスはほとんど変わっていません。不具合の出た部分だけを考慮し、信頼性を上げてきたということです。

今回、Q3(予選第3セッション)に進んだ際、周回数に対する燃料の補填量が周回あたり3kgという発表がありました。去年の実績、今年V8になって燃費が良くなった分を考えると、3kgは少し余裕があるのではと予想できます。そのメリットを活かせるよう、予選ではQ3まで進むことが大事です。

ウエットだけでなくドライでも走行できたことが金曜日の収穫
この日は1日雨かなと思ってその覚悟はしていたんですが、午後のセッションの後半はドライで走ることができました。土曜日の朝まで雨が残ることも考えに入れていましたし、雨は上がっていても路面はウエットのままになることも想定していましたので、予選~決勝に近い条件で走れたのは収穫でした。

金曜日の1日を通して見ると、まず午前のセッションは普段でもインスタレーション(機能チェックのための走行)しかやらないので、雨が降っていたのでちょっと転がして終えるつもりでした。結局、エクストリームウェザータイヤ(雨量の多い時用の溝の深いタイヤ)で走ったのですが、午前中の状態の雨だったら、そこそこ行けるという感触をつかむことができました。

 
予選まで完璧な流れで進み、ラルフとチームにとって今季最上位グリッドとなる3番手を獲得。ヤルノも4番手グリッドを得て、2台揃って好ポジションからのスタートと非常に期待の持てる展開となった。

午後のセッションを始める段階で、後半にはドライタイヤで走行できると思いました。予想通り、セッションの前半はスタンダードウエットタイヤでしか走れない状況だったので、2回だけ確認走行をしました。その後、待機していたらドライで走れる状況になってきたので、セッション40分過ぎからドライタイヤで走ることにしました。

いつものようにドライバーふたりでタイヤの比較をしましたが、この日の段階ではどちらのスペックでも行けるような状況でした。土曜日の午前中のセッションでもう一度確認し、予選~決勝に向けたタイヤを決めることになりました。クルマについては順調でした。

狙いどおり! 母国ファンの前で今季最高の予選成績を獲得
レースに向けてできるだけいい位置を得たいと思っていましたが、予選3番手、4番手と、狙い通りの結果を得られたと思います。日本GPで今年一番の成績をとれて、本当に良かったと思っています。

今季何度か見られたスタートで出遅れるということはなく、むしろよい形でスタートをした。ラルフは3番手をキープして1コーナーへと入ったが、ヤルノは行き場を失い5番手となり序盤戦を走行。  

金曜日のフリープラクティス2回目の最後にドライタイヤを試しましたが、土曜日の3回目の走行でもう一度、両ドライバーが確認しました。その段階で「こっちのタイヤ」という方向が見えたので、ラルフはそのタイヤに交換してもう一度確認のための走行を行いました。一方、ヤルノはずっと決めた方のタイヤを履いていましたので、最後にニュータイヤを履かずに温存して終えました。フリープラクティス3回目でラルフが2番手、ヤルノが20番手に終わったのは、そういう事情があったからです。ヤルノもラルフもクルマに対してはいい感触を持っていましたので、予選に向けてはいい手応えを感じていました。

午後の予選では、実際そのとおりになりました。Q2(予選第2セッション)では通常、タイムアタックを2回行うのですが、1回目のアタックでいいタイムが出たので、1回だけでやめました。おかげでタイヤを温存することができました。

レースはスタートしてみなければ分かりません。簡単に勝てるとは思いませんが、ちょっと権利があるのかなと思いました。

今季初の2台ポイント獲得を喜ぶより、終盤の失速を悔やむ
2台揃ってポイントを獲得できたのは今年初めてですので、それはそれで良かったのですが、思っていたポジションでフィニッシュできなかったのは非常に残念です。まだまだやることはいっぱいあるなと思っています。2台ポイント獲得を喜ぶよりも、残念、と言いたいような結果です。

レースでいい成績を出すための課題が2つありました。1つはいいスタートを決めること。もう1つは最後まで僕らのペースで走りきることです。1コーナーでヤルノの行き場がなくなってしまい、アロンソの後ろに回ってしまいましたが、スタートについては及第点に近かったと思っています。

 
1回目のピットインでラルフの前に出て4番手を走行していたヤルノだったが、2度目のピット後、ペースアップに苦しみラルフとともにポジションを落してしまう。しかし、2台が揃っての得点は今季初のことである。
問題は2つ目の課題であるペースでした。第2スティントまでは順調に推移していましたが、ヤルノのクルマがオーバーステア傾向になるということで、ウィングを調整して第3スティントに送り出しました。すると今度はアンダーステアを出したり、グレイニング (タイヤに発生するささくれ状の摩耗)が出たりで、数周に渡ってタイムが上がりませんでした。それが後ろを走っていたラルフを抑える結果になり、2台が揃ってポジションを落すことになってしまいました。

今回は日本GPということで、皆さん期待されていたと思います。応援していただいた皆さんに対して表彰台を獲得できず、申し訳ないというのが正直な気持ちです。ただ、週末を通して見れば、クルマの手応えはしっかりありましたし、チームもさらなる自信がつきました。今後の課題もはっきりしましたので、最終戦のブラジルではもう一度、クルマの速さを示せるような走りをしたいと思っています。応援よろしくお願いします。

1年の集大成とも言える日本GPに臨む新居章年。ダブル入賞は果たしたが、悔しさも残る結果となった。最終戦では来季につながる走りを目指す。