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Rd.1 Grand Prix of Australia Keizo Takahashi report
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金・土曜日 日曜日
高橋敬三リポート:金・土曜日
2005年03月05日(土)

●TF105の変更点
“ぎりぎりまで空力開発を続行”

1月8日、TF105の発表会で高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)は「TF105は開幕戦までにさらに大きく進化します」と報道陣に語った。その言葉どおり、2月中旬のバルセロナ・テストではその空力パーツが大幅にバージョンアップされた。フロンウイング、フロントノーズ、ターニングベイ、エンジンカバー、ブレーキダクトなど。そして特徴的なのがサイドクラッシュウイングと呼ばれるサイドポンツーンの前にあるウイングだ。これにより、空力性能は格段に上がった。今年のレギュレーション変更でダウンフォースが約25%減らされたと言われているが、この大幅な進化でTF105は昨年のマシンに比べても遜色ないレベルのダウンフォースを得ているという。
そして、メルボルンではさらにリアウイング、リヤサスペンションアーム、エンジンカバーのウイングなどが変更された。「これらは全て、空力性能を追求した結果です」と高橋DTC。昨年のTF104は空力がウイークポイントだったが、今年のTF105は空力のスペシャリスト、マイク・ガスコインの力作と言ってもいいほどの出来栄えだ。さらに、金曜日の朝にもパーツが届くなど、マシンの開発はギリギリの時間まで行われていた。

●金曜日
“走り込みでしっかりデータを収集”

今年から、2レース1エンジンとなったため、金曜日のフリー走行では各チーム走行距離を気にしてか、昨年以上に走らなくなった。そんな中で、パナソニック・トヨタ・レーシングの3台はレギュラーの2台も含め最も多くの周回数をこなしていた。
「今日は3台でしっかり走り込め、データを取れました」と高橋DTC。午前中はリカルド・ゾンタが20周して3番手。ほとんどのチームのレギュラードライバーが走らない中、ラルフ・シューマッハーは12周、ヤルノ・トゥルーリも10周を走った。午後になると、他チームもタイヤの評価をするために走り始めるが、トヨタはラルフが16周、トゥルーリは24周、ゾンタに至っては31周も走りこんでいた。この周回数を見てもわかるとおり、今年もエンジンの信頼性には絶対の自信を持っているようだ。

「今日走り込めたことで、新しい空力の効果をしっかりと確認できました。タイムはもう少し走ってみないと何とも評価できませんね。他のチームがどんな状態で走っているかわからないので。ただ、うちのクルマはロングランのタイムも良いし、狙った性能は発揮できていると思います。唯一の不安はタイヤですね。今回、ミシュランは2種類のコンパウンドを持ってきています。どっちを使うかはちょっと迷いそうです。オプションはフロントの磨耗が厳しそうだけど、予選を考えると有利ですから。タイヤの評価に関しては、昨年以上に重要になってきています。そのため、金曜日のフリー走行ではロングランから一発の速さまで、しっかりとやらなければなりません。今日は予定したプログラムは全てこなせたので、そういう意味では100点の出来ですね」

予想どおりのテストをこなせたことで、高橋DTCの表情は明るい。

「今日のタイムでは完全に読めない部分もありますが、予想通り接戦ですね。改めて厳しさを感じています。ただ、自分たちのポジションが戦える所にいることも確認できました。昨年はタイム差が大きくてショックを受けたけど、今年は戦えるという実感を得ました」

●土曜日
“クルマのポテンシャルを引き出したトゥルーリが2位に!”

前日、高橋DTCが「明日は雨の確率が高いですね」と言っていたとおり、朝から雨が降っていた。予選前に雨は上がり青空が見え始めてきたが、予選開始直後はまだコース上は完全にウェットだった。しかし、マシンが走るたびに路面はみるみる乾いてきていた。昨年のブラジルGPの結果を受けての出走順となった第1回目の予選は、トゥルーリが9番目、ラルフは16番目。そして、トゥルーリがコースインする頃には路面はほとんど乾いていた。

「トゥルーリがコースインする時、ドライタイヤにしようか迷ったんですが、まだ早いということでインターミディエイトにしました。その判断が当たりましたね」

トゥルーリは1分35秒276をマーク。その時点でトップだったM.ウェーバーよりも1.5秒も速いタイムをマークした。その後を走る、D.クルサードやJ.ビルヌーブはそのタイムを上回ることができず。ルノーのJ.フィジケラが1分33秒171を出すが、その直後にまたまた雨が降り始めた。

「実は、うちの天気予報官から途中で雨が降ることは聞いていました。それも、ラルフの走行する頃に降るだろうということでした」

今年からトヨタは独自の天気予報官をおいている。その効果がいきなり発揮された。これらも、チーム改革の表れだろう。
スピンしたクルマが出たことで、予選は赤旗が出て一時中断。赤旗解除後、最初に走ったラルフは雨のなかでタイムは伸びず17番手に沈んでしまった。

「ヤルノは天候に恵まれましたが、そのなかでもクルマのポテンシャルを100%引き出してくれた。その反面、ラルフには気の毒でしたけど。午前中は、午後の予選の雨の状態がわからなかったので、ヘビーレイン、インターミディエイト、最後はドライタイヤで走ってクルマのバランスを確認しました。そのおかげで、午後の天候にもセッティングを合わせこむことができました」

今年のレギュレーションでは、日曜日の午前中の2回目の予選との合算でグリッドが決まるため、今日のタイムは暫定結果だが、トップとは2秒差、3位とは1.5秒差とその差は大きく、トゥルーリは2番手のグリッドを獲得する可能性が非常に高い。

「予選グリッドの前後のポジションとタイム差が大きいので、明日の2回目の予選は戦略的にいろいろと考えられます。決勝レースでの戦い方を考えた上で、できる限り今の順位をキープしたいと思っています。ただ、明日も午前中は降水確率が50%で変わりやすい天気のため、今日同様に荒れた予選となるはずです。午後のレースも降水確率は25%ですから、その辺の読みも重要になってくるでしょう」

昨年のメルボルンショックとは違った意味で、今年もチームの中ではメルボルンショックが起こりそうな気配だ。

高橋敬三プロフィール