●日曜:予選2回目
“トヨタとして初のフロントローを獲得!”
今年から日曜日の午前中に2回目の予選が行なわれるようになり、非常に忙しい1日となった。
「昨年も午前中にセッションはありませんでしたが、日曜日の朝にクルマがパルクフェルメから帰ってくるので、朝7時には来ていました。でも、やっぱり今年は忙しいですね」と高橋敬三技術コーディネーション担当ディレクター(DTC)。
予選2回目は午前10時から行なわれる。空は雲も多く、怪しかったが、高橋DTCは「予選では雨は降りません」と自信たっぷりの言葉。昨日の予選でノータイムとなったF.マッサはコースインせず、最初にコースインしたのは佐藤琢磨だったが、彼もアタックせずに1周でピットに戻ってきた。その後のM.シューマッハーもアタックせず、結局最初にアタックすることになったのは、4番目のアタックとなっていたラルフ・シューマッハーだった。佐藤とM.シューマッハーは、ノータイムや大きくタイムが遅れていたため、予選順位を上げることを諦めてエンジン交換することを選んだ。エンジン交換すると予選順位が下がってしまうのだが、もともと最後尾の二人にとっては関係ない。レギュレーションが変わったことで、戦略もいろいろと変わってきた。
「ラルフは最初にアタックしたため、路面が滑る状態でした」それでも、ラルフは1分31秒222をマーク。1回目は17番手だった順位を15番手に上げることに成功した。「トゥルーリは後ろともタイム差があったので、レースを考えたベストの戦略で燃料を積みました。ここは燃料エフェクトも大きいのでそれを考えての戦略です」
19番目に出走したヤルノ・トゥルーリは、チームの期待通り1分29秒159という好タイムをマークし、前日の2番手という予選順位を見事に守った。
「最後の5台くらいになった時に、急に路面の状況は良くなったみたいですね。タイムに関しては、他のクルマの燃料の量やタイヤなどがわからないため、一概には言えませんね」
トヨタとして初のフロントローを獲得したことで、ピット内は沸いていた。この日、日本から応援に駆けつけたトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長と奥田碩会長も、この朗報に喜んだ。
●日曜:決勝
“上位陣と争える所に来ていることを実感”
午後2時のスタート前になると、晴れ間も見えだし、それまで肌寒かった気温も上がってきた。スタート時の気温は19℃、路面温度も26℃まで上がっていた。スタートでは、K.ライコネンがエンジンストールし、再スタートとなる。そんななかでも、トゥルーリは慌てることなく好スタートを決めた。2位のポジションを守り、トップのJ.フィジケラを追い上げる。2台はほとんど変わらぬペースで手に汗握るトップ争いを演じた。そしてトゥルーリはフィジケラより一足早く18周目にピットに入り給油する。しかし、ピットアウト後に異常が起こった。
「スタートもうまくいって、序盤はペースが良かった。しかし、ピットイン後、タイヤに異常が出たんです。無線でバイブレーションがひどいと言ってきたんです」
タイムも落ちて、フィジケラとの差はみるみる広がってしまった。それでもトゥルーリは入賞圏内の7番手あたりを必死に走っていた。
「タイヤに何が起こったのかまだわかりません。空気圧、温度とも正常でした。ただ、タイヤの表面が剥離はしていませんでしたが、黒々としてきていましたから。今まで出たことのない症状です」と高橋DTCはレース後呆然と語った。さらに「予選でのラッキーとアンラッキーが一緒に来た」と悔しがっていた。
予選で後方に沈んでいたラルフは、スタートで順位を上げたが、その後は前のクルマに抑えられていた。9番手争いの最後尾につけるラルフにも最初のピットインでアンラッキーが襲った。19周目に燃料補給のピットインをして出て行ったラルフだったが、21周目にまたピットに戻ってきた。最初のピットインの際にシートベルトが緩んでしまったのだ。これで大きく遅れてしまう。
「ラルフは、前半は中盤に埋もれてしまってペースも上がりませんでしたが、後半は順位こそ悪かったがペースは良かった。クルマのバランスも良く、リヤタイヤもドロップオフしなかったし、タイヤの磨耗も悪くありませんでした」
結局、予選までの勢いはなくなり、トゥルーリは9位、ラルフは12位でレースを終えた。
「今回のレースで上位陣と争える所に来ていることを実感しました。序盤のトゥルーリの走りや、後半のラルフのペースやタイヤの磨耗の良さ。新レギュレーションにも、まだ慣れていない部分もありましたが、今回やってみてよく分かりました。トゥルーリのトラブルさえなければ、良いところにいったはずです」
今回、レースでの結果は出なかったが、手応えはあった。そして、その手応えを人一倍感じているのが高橋DTCだった。
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