みなさん、こんにちは高橋敬三です。いつも公式サイトへアクセスありがとうございます。金曜日、土曜日の報告になります。今回のGPから、予選は土曜日の一回になります。
●心機一転、地元グランプリに挑む
まずは前回のモナコについてですが、ポテンシャルとしてはあったのですが、アンラッキーな面がありました。ラッキーとアンラッキーが重なってああいう結果になったのだと思います。アンラッキーだと言って悔やんでも仕方ないでしょう。ヤルノはリスク覚悟で攻めました。その結果ですから。逆にラルフはアンラッキーが続いていたのですが、這い上がってポイントを獲ることができました。これまでヤルノばかりに運が向いていましたが、これでラルフにも運が向いて、ドライバー二人が上位で競い合い、頑張ってくれることを期待します。今回は応援団も大勢来ますから。
TMGのあるケルンからニュルブルクリンクまではクルマで1時間ほど。ホッケンハイム、スパ・フランコルシャンとアクセスのいいサーキットはありますが、ニュルブルクリンクでのレースは数ある地元グランプリのひとつです。TMGの600人の社員が抽選をし、200人ずつに分かれて金・土・日の3日間、応援に来てくれます。ここは相性のいいサーキットのひとつですから、「今年は変わったゾ」というところをみんなに見て欲しいですね。
●今シーズン初のエンジンアップデート
今回変わった点は大きく2つ。ひとつは空力で、これは毎戦ごとにアップデートしている予定どおりのものです。変更箇所はフロントウィング、リアウィングとフロントサスペンション周辺です。
もうひとつはエンジンで、狙いはパワーです。信頼性は十分確保できたので、もう一段パワーをやろうと。今回がその第1ステップです。ヤルノのエンジンは新スペックですが、ラルフは前回エンジンを交換していますので、レギュレーション上許される範囲内でなるべくアップデートして、ヤルノのエンジンに近づけた仕様になっています。エンジン内部には手を付けられないので、外についている吸気系や燃料系で対処しています。
ニュルブルクリンクのコース特性は、強いて言えば「テクニカル」になるでしょうか。極端なストップ&ゴー・サーキットでもなければ、コーナーの連続でもない。燃料エフェクトは平均よりちょっと大きめかなといった程度ですし、ピットインに要する時間も平均的、ブレーキにもきつくないけど、やさしくもない。極端なトラクション重視でもだめだし、コーナリング重視でもだめ。相反する求められるセッティングの妥協点をどこに見つけるのかがセットアップの決め手になりますね。
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今回はフロント&リアのウイングなどを変更。リアウイングの翼端版のスリットの数は4つになっている。 |
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●渋滞とイエローに阻まれたが悪くない一日
このサーキットの常で金曜日の午前中は路面がほこりっぽく、グリップが低い状態だったので、最初はリカルドだけが走って、後半はふたりのレースドライバーが走りました。どのドライバーも感想は『グリップがない』のひと言でした。午後になるとラバーグリップが付いてきたし、路面温度も上がってきたのですが、今度は渋滞とイエローフラッグに阻まれて、クリアラップがなかなかとれませんでした。(リザルト上の)ベストタイムだけ見て、本当にそれがパフォーマンスを現しているかというと、分かりにくいなという感じです。
午前中からしっかり走ったリカルドはセットアップもある程度決まってきて、午後もロングランをやり、最後に性能確認をやってと、プログラムを順調に消化することができました。今日一番大事なのはタイヤのデータ取りですが、リカルドが一日いい仕事をしてくれたおかげで、データをしっかり収集することができました。
ふたりのドライバーは午後ロングランをやったのですが、ヤルノはニュータイヤに履き替えて出て行った周でイエローが出たため、だめになってしまいました。そのあとも3周くらいイエローが出っぱなしだったので、タイムに補正を入れないとなんとも判断できないような状態です。ラルフの方は、まだバランスが取れていないところがありますが、渋滞とイエローに悩まされながらも一応プログラムをこなしたというところでした。
一発のタイムだけでなくロングランのタイムも、リカルドは(プラクティスでトップタイムを記録したマクラーレンの)ブルツと遜色ありませんから、金曜日のパフォーマンスとしてはいいところに達していると思います。
●好位置をキープ。TMG従業員の前で表彰台を狙う
土曜日午前中のプラクティスでは全体的なグリップを上げる方向でセットアップを変えました。昨日に比べればだいぶグリップも上がってきましたし、クルマがナーバスだった面もだいぶ良くなりました。ヤルノはそれで問題ないという話だったのですが、ラルフの方はまだ『グリップが足りない』と言っていました。ただし、タイム的にはそれほど差はありませんでした。
今回から予選の方式が変わったので、11時にプラクティスが終わって、予選の始まる午後1時までに第1スティント分のレース戦略を決めなければなりません。午後に入って路面温度がちょっと上がったのと向かい風が少し強くなったのとで、コンディションとしては午前中のプラクティスよりも若干悪くなったと思います。
タイヤの選択はすんなり決まると思っていたのですが、チームの考えとドライバーの好みが食い違い、議論がありました。レギュラードライバーが同一条件で2種類のタイヤを評価できていないこともあり、チームとドライバーとで感覚的なずれが生じたようです。ただし、金曜日にリカルドが収集したデータやミシュランの情報を考えると、ドライバーの好みと逆の方がいいという結論に達したのです。その話をふたりのドライバーにしたところ、彼らも理解を示してくれました。
そんな状況でまずヤルノがアタックしたのですが、完璧なアタックをしてくれたおかげで、ほぼ狙いどおりのタイムになりました。一方、ラルフは今回初めてヤルノの後でアタックしました。ヤルノの情報では、バランスは午前とそれほど変わらないという話だったので、何にも手を加えずに出て行きました。ところが、セクター1で結構強くアンダーステアが出てしまい、その影響が尾を引いて少しタイムをロスした感じです。
トップ6に2台入ればいいなと思っていました。ヤルノは上々のポジションだと思います。グリッド前の少なくとも1台を、スタート時にかわすことができれば、いいレースになるのではと思います。ケルンからTMGのみんなが応援に来てくれますので、彼らの目の前で表彰台に上がりたいですね。そのことはドライバーも感じてくれています。
では、決勝後もこの公式サイト「高橋敬三レポート」でご報告いたします。
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