みなさん、こんにちは高橋敬三です。いつも公式サイトへアクセスありがとうございます。ハンガリーGPの金曜日、土曜日の報告です。
●専用の空力パッケージを投入
ハンガロリンクはモナコに次ぐ低速サーキットです。モナコには専用の空力パッケージを投入しましたが、ここハンガロリンクにもモナコとは違う仕様を持ち込みました。ロールフープウイングが1枚から3枚に、また、リアウイングも変えてハンガリー専用のハイダウンフォーススペックに仕立てています。
ヤルノはエンジンを交換しました。前回のホッケンハイムでのレース後、ケルンに帰って調べてみたところ、(バルブを駆動する)ニューマチックのシールが傷んでいることが分かりました。シールに不良があってニューマチックの圧が漏れ、それが原因でエンジンが不調に陥ったということです。これを調べるにはエンジン本体を分解する必要があります。エンジンを分解するには封印を破る必要があったので、ヤルノはエンジンを交換することにしました。ですので、ヤルノはフレッシュエンジンを、ラルフは2戦目のエンジンを積んで臨むことになります。(*ドイツGPでヤルノはチェッカーを受けていないため、エンジンを交換しても10グリッド降格のペナルティは適用されない)
ハンガロリンクのコースの特徴は、ご存じのとおり低速コースで、追い越しができません。この点は同じく低速コースのモナコと同じなのですが、異なる点もあります。それは燃料エフェクトが大きいこと。つまり、燃料を多く積めば積むほど、ラップタイムに与える影響が大きくなるということです。燃料エフェクトの少ないモナコでは1回ストップ作戦も選択可能でしたが、ハンガロリンクではそういうわけにはいかず、3回ストップが主流になると予想しています。
●バンピーな路面の攻略に集中
金曜日のプラクティスですが、順位は好調だったものの、その裏ではいろいろありました。リカルドのクルマに午前と午後で小さなトラブルが発生し、その影響でプログラムを少し変更せざるを得なくなりました。ただし、本来リカルドが行う予定だったプログラムの一部をレギュラードライバーがカバーしましたので、結果的にはしっかりとデータを取ることができました。
午前中、路面がスリッピーだったのはいつもどおりなので予想の範囲内だったのですが、昨年、路面が再舗装を受けたにもかかわらず、バンピーだったのは予想外でした。そこで、レギュラードライバーはバンピーな路面に対する動きをなんとか良くしようと、セットアップをいろいろ試しました。特にバンピーなのはターン2から5にかけてと、ターン12~13です。ブレーキングしようとしてもクルマが跳ねてしまい、それを避けるためにかなり手前でブレーキを踏まなければなりません。少しでもブレーキを遅らせるとバンプでクルマが跳ね、宙に浮いた状態でブレーキングをすることになるので、リアがロックしてスピンすることにもなりかねません。実際、金曜日のプラクティスではそういったシーンが何度も見られました。
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ハンガリーでは、新たにロールフープウイングが3枚という、ハイダウンフォース仕様が登場。 |
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●ゾンタがトップタイムを記録
リカルドはいつもどおりタイヤの評価に集中していたのですが、午前中のプラクティスの終盤でハイドローリック系のプレッシャーが下がったため、最終コーナーでスローダウン。オフィシャルに押してもらってピットロードを戻ってきました。デフ関係のオイル漏れを起こしていたのですが、プラクティス1と2のインターバルで修復するのは無理だったので、リアエンドを交換することにしました。
午後のプラクティスでは路面の状態はだいぶ良くなりました。リカルドはずっとロングランを行っていたのですが、今度は電気系の温度が上がりすぎてしまい、ガレージの中で少し待機することになりました。どうもクーリングダクトの中に紙が詰まったようで、それが原因で温度が上がってしまったということでした。
レギュラードライバーは引き続きバンプ対策を行い、一部タイヤのパフォーマンスとロングランを行いました。リカルドがトラブルの影響を受けた分、ふたりのドライバーがオプション、プライムのタイヤを分担して受け持ったからです。おかげでしっかりデータも取れました。
小さなトラブルはありましたが、金曜日としてはいいスタートが切れたと思います。ゾンタがトップタイムを記録しましたが、他車の燃料搭載量が分からない状況なので気を抜くことはできません。うちはマキシマムダウンフォースで走ったので、最高速は遅かった半面、低速コーナーのターン2、3では速かった。ダウンフォースの違いがそのままセクタータイムに現れていると思います。予選に向けては他車との相対差、タイヤのタレ具合などを見ながら、最終的なダウンフォースを詰める予定です。ここは抜けないサーキットですので、ダウンフォースはあればあるほど有利だと思います。
●予選前のトラブルを克服
土曜日午前中のプラクティス3ですが、金曜日にはドライバーから「グリップがない」というコメントがありましたので、メカニカルグリップの向上をメインに走りました。プラクティス3は滑りやすかったので、後半までガレージで待機しました。プラクティス4では路面ができあがっていましたので、セッションの最初からコースに出てセットアップの調整を行いました。
ラルフは順調にプログラムをこなしたのですが、ヤルノはターン4で急に燃圧が下がったため、その場にクルマを止めることにしました。クルマを調べたところ、エンジンと車両をつなぐ燃料コネクターが外れたため、燃圧が抜けたことが分かりました。エンジンやギヤボックスにはダメージがなかったので、そのままつないで予選を迎えることになりました。ただ、ヤルノはこのトラブルの影響で、ニュータイヤを履いた状態でのバランス確認ができなくなってしまいました。
●2台ともにクリーンなグリッドを確保
ヤルノは7番目に予選アタックを行うので、まだ路面が滑りやすいだろうと予想し、フロントウイングの角度を少し上げてダウンフォースを付け気味にしました。これが非常にうまくいって、いいバランスでアタックできたと思います。出走順を考えれば、完璧なアタックでした。
ラルフは15番目のアタックだったので、路面の状態は良好でした。前半で少しオーバーステア症状が出たほかはミスもなく、完璧に近いアタックだったと思います。予選前は「トップ6には入りたい」と思っていました。2台とも想定したタイムが出ましたし、3番手、5番手の奇数グリッドです。路面状態のいいクリーンサイドでスタートできますので、スタートも期待できます。最後にアタックしたアロンソが2番目相当のペースで走っていましたが、もしそうなっていたら4番手、6番手になるところでした。路面のコンディションを考えれば、4番手と6番手になるくらいなら、いっそのこと5番手、7番手の方がいいと思っていました。
いずれにしても、久々に表彰台のチャンスが巡ってきたことは確かです。明日はなんとしても表彰台を目指して、頑張りたいと思います。
決勝後にもこの公式サイト「高橋敬三リポート」でご報告いたします。応援よろしくお願いいたします。
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