皆さんこんにちは高橋敬三です。応援ありがとうございました。日本GPの報告です。
待望のTF105Bを日本GPでヤルノ、ラルフの2人に投入しました。TF105Bの一番の大きな狙いは空力性能の向上です。フロントサスペンションのレイアウトを変えることで、今までより効率よく空気が流す事により、空力性能と同時にメカニカルグリップの向上も図りました。複合コーナーが多く、フロントが思い通りに動くクルマに適した鈴鹿サーキットでは、タイム向上につながるだろうと思います。エンジンはヤルノ、ラルフともにフレッシュです。しかも、パワーをかなり向上させた新しいスペック。今回の鈴鹿と次の中国で2005シーズンは終わりますので、V10エンジンRVX-05の最終最強バージョンということになります。
●金曜日:雨に見舞われるも、予定通りにプログラムを消化
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日本GPで実戦投入されたTF105Bはサスペンションのレイアウトおよび形状がこれまでと大きく異なる。 |
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チームの予報ではフリー・プラクティスの途中、2時半頃から雨が降り始めるということでしたので、これを想定してプログラムを組み直しました。午前中は路面がまだ出来上がっていなかったので、2種類持ち込んだタイヤの比較を十分に行うことができませんでした。午後は有効に使える時間が30分しかないことを想定していましたので、午前中はセットアップの調整に集中し、午後の30分でタイヤの比較を行いました。
予報どおり雨が降ってきましたので、実質的には1時間半しかセッションを使えなかったのですが、タイヤ選択のためのデータは十分に得られたと思います。午前中のプラクティスが終わる10分くらい前にリカルドが電気系のトラブルでコース上に止まってしまいました。クラッチが開いてつながらない状態だったので、リカルドはギヤボックスが壊れたと思ったらしいのですが、ピットに戻ってきてから調べてみると、電気系のトラブルだということが分かりました。問題のある部分を交換したので、午後は問題なく走ることができました。
新投入のTF105Bの印象ですが、ラルフは午前中からすでに問題ないということで、細かな修正を行いながらセットアップを詰めていきました。すでに、これ以上変更の必要がないくらいまで仕上がっています。一方、ヤルノはまだクルマの感覚をつかみ切れていない感じで、セットアップの余地を残していますが、テスト時のデータもありますので、対策の方向性で悩むことはないと考えます。
エンジンはリカルドのクルマで出力アップの効果を確認しました。土曜日はレギュラードライバーのエンジンも、完全に実戦時と同じ回転数まで回す予定です。土曜日は雨でウェット、日曜日は曇りでドライの予報なので、ウェットの予選とドライのレースに向けて、セットアップの妥協点をどこに見いだすかが課題になります。
●土曜日:最高の舞台で2度目のポールポジションを獲得
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ラルフはトヨタに移籍して初めてのポールポジション。自身にとって6度目の獲得。 |
天候に助けられはしましたが、今シーズン、トヨタ・チームとしては2度目のポールポジションですし、ラルフにとってはトヨタで初めてのポールポジションが日本グランプリという最高の舞台で達成できましたので、チーム全員が喜んでいます。
午前中から振り返りましょう。予報どおり朝からずっと雨でしたので、プラクティス3はインターミディエイトタイヤとヘビーウェットタイヤの皮むきを済ませました。予選もウェットを見込んでいましたので、プラクティス4の残り15分の段階で翌日のレースを考慮したセットアップに切り替え、予選のシミュレーションを行いました。
ヤルノは出走順が8番目だったので、まだ路面にかなり水が残った状態でしたが、限界まで攻めてくれたと思います。少しペースを落として順位を確保するやり方もあったでしょうが、我々としてはスピンを覚悟で限界までアタックしてくれたほうがいいし、彼はそのとおりにやってくれました。結果としてはスピンしてしまいましたが、やむを得ないと思っています。
ラルフは一番いいタイミングでアタックできました。タイミングの良さを最大限に生かしたうえ、彼自身もTF105Bと新しいスペックのエンジン性能をしっかり引き出してくれ、ミスなくいいタイムを出してくれました。本当に良かったと思います。
明日はドライ路面でのレースが予想されますので、我々としても今日の雨だけでなく、明日のドライでのレースを含めたセットアップ、レース戦略を考えました。ポイントとしては、路面のラバーが雨で流されてクリーンな状態になりますので、レースを通じてどれだけうまくタイヤを使えるかがカギを握ります。ポールポジションからのスタートですし、タイヤをうまく使って、表彰台の真ん中を目指します。
●日曜日:予期せぬセーフティカーで戦略のメリットが消える
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セーフティカーが入ったことで、チームの戦略は大きく崩れてしまった。 |
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ポールポジションを獲って、決勝レースでもいい結果を残したいと頑張りましたが、ファンの皆様の期待に応えることができず大変残念です。ラルフは3回ピットという非常にアグレッシブな作戦をとりました。スタートもうまくいき、1周目2周目と順調に後続のフィジケラとの間に差を築いたのに、予期せぬセーフティカーが出てしまいました。
通常、セーフティカーは1~2周で消えるのですが、どうしたわけか5周もコースにとどまることになり、これで3ストップ作戦のメリットが消えてしまいました。
戦略としましては、ガソリンの量が少ないラルフのマシンがスタート直後から後続を引き離し、11周目に予定していた1回目のピットストップまでに10数秒のリードを築き、良いポジションでピットアウトする事を狙っていたのです。しかし、戦略に反してレースの序盤にて、セーフティカーが長く入ってしまい、結果として後続を引き離す事が出来ずに1度目のピットストップを迎えてしまったのです。
レースの途中で2回ストップ作戦に切り替える考え方もありましたが、我々が選んだオプションタイヤは低温用なので高い路面温度で長い周回数を走行するとリアタイヤのドロップオフが発生します。タイヤをセーブする意味で、2回ストップはちょっと厳しかったというのが実情でした。
ヤルノは2回ストップでも3回ストップでも行ける作戦だったのですが、予選でスピンをしてしまったので、2回に切り替えてレースに臨みました。なんとか2台完走し、TF105Bのデータを取りたかったのですが、残念な結果になってしまいました。
いずれにしても、まだまだ実力が足りないということです。今日はマクラーレンの強さが印象に残りましたが、あの強いマクラーレンを来年は打ち破らないといけませんし、そのためにはまだまだやらなければならないことがたくさんあります。ただ、ヤルノはリタイアしたものの、今回は105Bの貴重なデータを収集することができました。最終戦となる中国GPでは、出来る限りのデータを駆使し、最速のマクラーレンと競い合いたいと思います。
2005年のF1も残ること1戦です。全力で最終戦を戦い抜き、皆さまへ良い報告をお伝えしたいと思います。公式サイトへのアクセスありがとうございました。
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