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Rd.8 Grand Prix of France
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新居章年リポート
2007年7月2日(月)

いつもご声援ありがとうございます。北米ラウンドを終えて、いよいよヨーロッパラウンド後半戦に突入しました。今回はその緒戦、フランスGPの模様を報告します。

今回パナソニック・トヨタ・レーシングは、ダウンフォースの安定性を追求した新しい空力パッケージを投入。「スパイン」と呼ばれるエンジンカウル上部の形状、バックミラー、ブレーキダクトが変更されている。
●シルバーストーンの合同テストで試した新空力パッケージを投入
低ダウンフォース仕様の北米ラウンドを終えて、久しぶりに行った合同テストで新しい空力仕様を投入しました。具体的には、我々がスパインと呼んでいるエンジンカウルの背骨部分の形状を変えました。そのほか、バックミラーやブレーキダクトも変更。外から見て違いがわかる空力パーツの変更は、この3点です。これらのエアロパーツの変更は、直接ダウンフォースを増すようなものではなく、ダウンフォースの安定性を狙ったものです。

また、この週末は日曜日のレース時に雨が降る確率が高いという予報が出ていました。今シーズンはまだレースでウエットコンディションとなったことはありませんが、モナコGPでは土曜日の午前中がウエットコンディションとなりました。そのとき少しドタバタしてしまいましたので、今回はそんなことがないよう気を引き締めたいと思いレースウイークに臨みました。

北米ラウンドを終え、戦いの舞台は再びヨーロッパへ。その緒戦となるフランスGPから波に乗っていきたいところだ。今シーズン、マニ・クール・サーキットの路面は舗装が新しくなり、かなりグリップが向上していた。

●マニ・クールの路面に戸惑いながらも、金曜日のプログラムは消化
今回、フランスGPに持ち込まれた2種類のタイヤは、ブリヂストンが年間に投入する4種類の中でコンパウンドの硬さが中間レンジとなるソフトとミディアムです。この2種類のタイヤは、すでに何度かグランプリに採用され経験済みです。しかし、今日のフリー走行ではこれまでとは異なる特性を示したため、セットアップ作業が手こずりました。普段であればソフトは一発の速さはあるが、ラップタイムダウンが大きく、ミディアムは一発の速さではソフトに劣るものの、ロングランで安定したタイムを刻むというパターンなのですが今日はソフトのメリットのグリップの高さがタイムに現れませんでした。どうして、今回そのような特性を示したのかはまだ特定できませんが、マニ・クールの路面がこれまで試したサーキットと異なる性質を持っていることが考えられます。

しかも、マニ・クールの路面はコースの最終区間以外の約7割が新舗装となり、昨年までとも異なる路面になっています。この変更で、グリップ力が上がりました。金曜日の時点で、トップタイムはすでに昨年のポールポジションタイムを上回っています。そのあたりの変更が、微妙に2種類のタイヤに影響を与えているのかもしれません。

とはいえ、この日はドライバーのセッティングを2人で大きく変えてスタートさせ、大きなトラブルに見舞われることもなく、予定したプログラムを消化しました。具体的にはヤルノ(トゥルーリ)は硬めのセッティングからスタートし、ラルフ(シューマッハー)は軟らかめで開始しました。2人ともきっちりと走行してくれたおかげで、有意義な走行データを収集することができました。これらのデータを分析して、予選とレースに向けたセッティングの材料としました。

●結果がついてこなかったものの、ミスなく力を出し切った予選
土曜日はラルフの誕生日だったので、できれば彼にトップ10に入ってほしかったのですが、あと一歩というところで最終ピリオド進出がならず、ラルフ本人だけでなく、チームとしても残念な気持ちでいっぱいです。今週末はラルフのほうがセットアップの仕上がりが良く、予選前のフリー走行でもヤルノが最後までセッティングの変更を繰り返していたのに対して、ラルフは早々にまとまっていただけに残念です。とはいえ、第2予選10番手のヤルノとの差はわずか。中位集団は非常にタイムが接近していたため、惜しくも11番手となりましたが、2台そろってトップ10入りを狙える位置にいることは確認できました。

ヤルノは予選第1ピリオドで赤旗に引っかかりギリギリの通過となったが、あとは本来のスピードを発揮して8番手グリッドを獲得。予選日に32歳の誕生日を迎えたラルフは、残念ながら僅差でトップ10入りを逃した。

一方、初日にアンダーステアに悩まされたヤルノは、初日のデータを元に2日目に施したセッティングが功を奏し、フリー走行3回目の走り出しは悪くありませんでした。しかし、セッションが進んでいくにしたがって、セッティングを変えていったらそれが裏目に出てしまったので、最終的に元のセッティングに戻して、予選に臨みました。

予選の第1ピリオドをラルフが7番手で通過したのに対して、ヤルノが15番手とぎりぎりでの通過となったのは、2度目のアタックの途中で停まっていたエイドリアン・スーティル(スパイカー)の脇を通過しようとしたとき、ヤルノいわく「赤旗が見えたため、減速しアタックを中止した」からです。したがって、予選第2ピリオド以降の走りがヤルノとTF107の本来の姿。日曜日のレースでは、ヤルノはもちろん、11番手のラルフにもポイント獲得の期待を持って予選を終えました。

●スタート直後のアクシデントがすべて。進化したTF107の本領を発揮できず残念
ひと言でいうと、「スタート直後の1周目のヘアピンで、今日のレースは終わってしまった」というフランスGPでした。

まずヤルノのアクシデントですが、ヘアピンでのブレーキングで前方にいたクルマが急減速したことと、ヤルノ本人も「ブレーキングを遅らせすぎた」とコメントしているように、一瞬の判断ミスによって避けられないものとなってしまいました。なんとか、自力でピットインできたのですが、ステアリングロッドにダメージを負い、左前輪が制御不能に陥っていたため、リタイアとなりました。

トヨタ自動車・渡辺捷昭取締役社長がマニ・クールを訪れてパナソニック・トヨタ・レーシングのドライバーたちを激励。1週間後に控えた次戦イギリスGPでは、ポテンシャルを100%発揮しての好リザルトを期待したい。

一方、このヤルノの直後で1周目のヘアピンに進入していったラルフもまた、ヘアピンで行き場を失い、大きく順位を落としました。さらにラルフの前を走るクルマが、燃料をラルフよりも多く搭載していたため、ラルフもペースを上げることができないという、歯がゆい展開となりました。それでもラルフは冷静でミスのない走りを披露。1回目のピットストップで、1つポジションを上げてくれました。しかし、それまでにロスしたタイムを取り戻すことはできず、さらなるポジションアップはなりませんでした。

本当に悔やまれるスタート直後の混乱となってしまいました。今回、我々が披露できなかった本来のパフォーマンスを、次週イギリスGPで、ぜひ発揮したいと思いますので、ご声援よろしくお願いします。


クルマの進歩を感じていただけに、今回は悔しい結果となった。今週末のイギリスGPではタイヤとのマッチングを煮詰め、ポイント獲得を狙う。