新居DTCレポートスペインGP
2008年4月28日(月)
いつもご声援ありがとうございます。いよいよヨーロッパラウンドが開幕しました。第2の開幕戦とも言われているスペインGPの報告をいたしましょう。
●新しいエアロダイナミクスを4種類持ち込む
フリー走行ではアンダーステアに悩まされ、その対策を講じると今度はオーバーステアになるという繰り返しだった。新たな空力パーツを含めたクルマのバランス調整が今後の課題となる。
開幕から1カ月以上も経過したということもあって、今回のスペインGPには新しい空力パーツがいくつか持ち込まれています。1つめはバーレーンGPのフリー走行でも試用した新しいフロントウイングが装着された新ノーズ。2つめはサイドポンツーン前に装着されているトップクラッシュウイングとバージボードをつなぐように新設されたサイドポッドベーンです。3つめはチムニーダクトに小さな三角形の穴が増設されたこと。そして、4つめがリアホイールにリムブランキングを装着しました。2つめのプレート以外は、スペインGPが開催されるこのカタロニア・サーキットで、1週間前に開催された合同テストでも試しており、効果があることはわかっています。2つめのプレートも風洞実験で効果があることは証明されていますから、新しい空力パーツがバルセロナでどれくらい有効に働くか、楽しみにしていました。
バーレーンGPで一部、テスト導入していたが、今回のスペインGPでは新しい空力パーツを試みた。しかし新しいフロントウイングとノーズの使用は見送られ、これまでどおりの仕様のものを採用。
●新しい空力パーツのポテンシャルをいかに発揮させるかが課題
金曜日の午前中はほとんど風がなかったので、順調にセットアップ作業を進めることができましたが、午後から風がやや強くなってセッティングが思うように決められませんでした。特にカタロニア・サーキットは低速コーナーから高速コーナーまで、さまざまなタイプのコーナーが点在しているので、1周にわたってクルマを安定して走らせることが難しいのです。そのため、ヤルノ(トゥルーリ)もティモ(グロック)も午後のフリー走行2回目ではアンダーステアが出て、その対策を行うと、今度はオーバーステアが出るという繰り返しでした。今回、新しく投入した空力パーツそのものには手応えを感じているのですが、それらをうまく使ってセッティングをまとめられなかったというのが正直な感想です。
土曜日に向けて、しっかりとフリー走行のデータを分析しましたが、エアロダイナミクス面の見直しだけでなく、メカニカルな面も含めてクルマのバランスを調整していく必要性を感じていました。
予選でミスのない走りを見せたものの、自己ベストタイムを更新できず14番手からのスタートとなったティモ。それでも3位順位をあげ、11位でフィニッシュ。
●ヤルノが4戦連続で予選最終ピリオドに進出
金曜日の走行データを検証した結果、新しいフロントウイングと新ノーズの組み合わせは、ポテンシャルの高さは確認できたものの、風が強くなったりすると、クルマのバランスが不安定になりがちだということがわかりました。そのため、今回のスペインGPでは金曜日だけの試用にとどめ、土曜日のフリー走行からは従来タイプのフロントウイングパッケージを使用しました。
ただし、従来のフロントウイングパッケージも、必ずしも我々が求めていたクルマのバランスを引き出すものではありませんでした。したがって、今日の予選は我々にとっては満足のいく態勢で臨むことはできなかったということです。さらにスペインGPの予選は、上位陣が僅差の大接戦を演じるという厳しい戦いとなり、ティモにとっては少し不運な予選となってしまったようです。第2ピリオドで1回目のアタックでトップ10にいたティモでしたが、2回目のアタックではライバルチームが軒並みタイムアップしていくのに対して、ティモは特にミスらしいミスがなかったにもかかわらず、自己ベストを更新できずに最終ピリオドへ進出することができませんでした。
一方、ヤルノは接近戦のタフな予選で8番手を獲得。ティモは14番手に終わりましたが、前回のバーレーンGPでもティモは13番手からポイント圏内にあと一歩というところまで迫ったので、ヤルノとともに日曜日のレースではポイントを獲得してくれることを願っていました。
●コミュニケーションのミスが発生するも、3戦連続ポイント獲得の力走
9台がリタイアするという荒れた展開になったスペインGP。「セットアップには骨が折れた」と語ったヤルノだが、決勝ではクルマの持つポテンシャルを最大限に引き出し、3戦続けてのポイント獲得を果たした。
ヤルノが3戦連続で入賞しましたが、チーム側があってはならないミスを犯してしまいました。これがなければ、もっとよいポジションでフィニッシュできていただけに、残念な結果です。2回ピットストップ予定だったヤルノが、なぜレース終盤に3回目のピットインをしたのかというと、チームがデビッド・クルサード(レッドブル)と接触事故を起こしてフロントウイングにダメージを負ったティモとヤルノを混同してしまったためでした。そのため、事実上6番手を走行していたヤルノはピットインする必要がなかったにもかかわらず、53周目にピットイン。間違いだったことに気づき、ヤルノをストップさせずにそのままピットレーンを通過させましたが、ポジションをふたつ落とすこととなりました。
上位陣にトラブルが発生したときこそ、我々はミスなくしっかりと走りきらなければならないのですが、それができなかったことは不出来というしかありません。なぜ、このようなミスが起きたのか、そして、それを防ぐにはどうしたらいいのか。しっかりと反省して、次のレースにこの教訓を活かしたいと思います。
今回のスペインGPでは、新しく持ち込んだ空力パーツをうまく使いこなすことができず、完全に新しいパッケージで戦うことができませんでした。クルマのパフォーマンスがもっと高いところにあると信じていますので、次のトルコGPでもパナソニック・トヨタ・レーシングのご声援、よろしくお願いします。
バルセロナでの新居章年。ヤルノが3戦連続でポイントを獲得したが、コミュニケーションのミスが悔やまれる。次戦こそ2台揃ってのポイント獲得を狙う。