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Rd.9 Grand Prix of Great Britain
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新居章年リポート
2008年7月7日(月)

いつもご声援ありがとうございます。全18戦で行われる08年のF1グランプリも9戦目を迎え、今回のイギリスGPは前半戦を締めくくる一戦となりました。 それでは、典型的なブリティッシュ・ウェザーに見舞われたイギリスGPの模様を報告いたします。

今回持ち込んだ主要改良パーツは、フロントウイング。 マニ・クールで好結果をもたらしたこの部品をシルバーストーン向けにモディファイをした。 前週のテストでは未使用のまさに最新のパーツだ。

●フランスGPで好結果をもたらした新ウイングをモディファイ
2週間前のフランスGPでは、2年ぶりに表彰台を獲得することができ、 チームの士気は高まった状態でシルバーストーンにやってきました。 とはいえ、そんなに簡単に表彰台を連続して獲得できるほど、この世界は甘くはありません。 マニ・クールでの表彰台も新しい空力部品の投入、クルマのセッティング、レース戦略、 そしてドライバーの頑張りと、すべてがうまく噛み合って得たものです。 ですから、今回のイギリスGPへ向かう前にも我々はミーティングをしっかりと行い、 気を引き締めてグランプリに臨みました。
また、1週間前にこのシルバーストーンで行われた合同テストでは、 シルバーストーン用のエアロダイナミクスパッケージを確認。 テストでは使用しませんでしたが、 前戦フランスGPで使用した新しいフロントウイングをモディファイした改良型フロントウイングも持ち込みました。 テストは風が強く、空力パーツの評価にはあまり適したコンディションではなかったので、 改良型ウイングとともにシルバーストーン用のパーツも、グランプリ初日にしっかりと走り込みを行って、 予選とレースに向けて走行データをしっかりと収集する予定でした。

リアウイングを固定するセンターピラーも新規のパーツだったが、ヤルノのウイングが脱落してしまい、従来品を使用することに変更。 ヤルノはハイスピードからのクラッシュだったが、負傷はなくひと安心。

●2台揃ってのトラブルには反省。だが車両の状態には手応えを感じた金曜日
天気予報では土曜日に雨が降る確率が高いため、 金曜日はしっかりと走り込みを行いたかったところですが、 トラブルが発生して、うまく行きませんでした。 最初にティモ(グロック)にクラッチトラブルが起こってしまいました。 まだ原因は特定できていませんが、直前のコーナーで縁石に車体底部を強打した直後にトラブルが発生しているので、 それが原因ではないかと見られています。
一方、ヤルノ(トゥルーリ)は走行中にリアウイングが脱落するというトラブルに見舞われました。 そのときヤルノが装着していたリアウイングを固定するパーツ(センターピラー)には、新しい部品が採用されていました。 そのため、我々は固定パーツを信頼性の確認が取れている従来品に換えることにしました。 これに関しては、フリー走行終盤に走行を再開することができたティモの固定パーツも、同様に従来品に戻しています。
相次いでトラブルを引き起こしてしまったことは、反省すべき今後の課題です。 ただ、クルマの調子自体はそれほど悪いとは思っていませんでした。 タイムが出ていないのは、走行が限られたためでもありますが、メカニカルなセットアップでいろいろと攻めていたからです。 基本的なセットアップは1週間前のテストで確認できていたので、フリー走行を終えた段階ではそんなに心配はしていませんでした。

ティモは金曜日の走行で縁石に車体を激しくヒット、モノコックにひびが入るほどの衝撃を受けてモノコック交換を実施。 また、影響のほどは定かではないが、同タイミングでクラッチトラブルが発生している。

●予選第2ピリオドで突然ボトミングが発生、実力を発揮してのアタックができず
土曜日午前中のフリー走行ではクルマの調子が悪くなかったので、 午後の予選では2台揃って最終ピリオド進出に向け、これまでのセットで手応えがあった状態で公式予選に臨みました。 天気予報では、雨がいつ降ってもおかしくない状況だったため、今回の予選ではふたりのドライバーとも早めにアタックを開始。 その予報どおり、第1ピリオドでは途中から雨が降り出しましたが、 すでにふたりとも第1ピリオドを突破するに十分なタイムを記録していたので、 問題なく第2ピリオドへ進出することができました。
ところが、第2ピリオドに入ると、車体の底を路面に擦り付ける、 ボトミングが発生するという問題が起こってしまいました。 まず第1ピリオド1回目のアタックでティモがボトミングすると言ってきたので、 我々はタイヤの空気圧を高めに設定して車高を上げて、路面を擦らないよう対策を施しました。 しかし、タイヤの空気圧を上げたため、今度はグリップ力が下がってしまったのか、 第2ピリオドのアタックでは満足のいくラップを刻むことができなくなりました。
一方ヤルノは第1ピリオドのアタックでは問題なかったのですが、 肝心の第2ピリオドのアタックで突然ボトミングが発生。 アタック開始直後の1コーナー、5コーナー、7コーナーといった高速コーナーで車体が底を擦ったために、 アクセルペダルを緩めるしかなく、タイムが伸びませんでした。
予選に入って、しかも第2ピリオドに入って、突然ボトミングが発生した原因はこれからデータを見て解明しなければなりませんが、 前日に発生したトラブルとは直接関係してはいないことだけはハッキリしています。 なお、金曜日のフリー走行で縁石に車体底部を強打したティモのモノコックはヒビが入っていたため、スペアモノコックに交換しています。

実力を発揮できなかった土曜日から一転して、雨の決勝では2台揃って好スタートを決めポジションアップを果たした。 シルバーストーン特有の雨にタイヤ選択で翻弄されたが、順位を確実に上げて得点をしたことは大きな意味を持つ。

●ポイント獲得には納得。さらなる前進のためには、思い切ったタイヤ選択が必要か
スタートポジションを考えれば、決勝レースの結果は喜んでいい成績かもしれません。 しかし、異なった戦略を採っていれば、もう少し上の順位を獲得したかもしれないということを考えると、残念な結果とも言えます。
まずスタートですが雨のモナコGPでも良かったように、 今回のウエットコンディションでも2台とも順位を上げて1周目のコントロールラインを通過していきました。 スタート時には雨は上がり、その後は徐々に路面が乾いていくだろうと判断して、 1回目のピットストップを長めに取っていたのですが、ピットインする直前に小雨が降り出してしまいました。 その時点でスタンダードウエット(浅溝)タイヤの溝はかなり摩耗していたので、我々のふたりのドライバーともにペースダウンを余儀なくされたのです。 一般論では、ピットストップは遅く入った選手の方が結果的に前のポジションを得られるものですが、 1回目のピットストップを長めにとっていた我々は逆にポジションを下げる結果となってしまったわけです。
それでも再び燃料を多めに搭載して再逆転を狙ったのですが、ピットストップ直後に雨はさらに強くなりました。 タイヤ交換したばかりということと、雨が一時的との予報から、我々はタイヤ交換をためらったわけです。 そうしているうちにヤルノのタイヤの内圧が下がり始め、ペースダウン。 一時は表彰台圏内も走行していましたが、これで大きくタイムをロスしたヤルノは、表彰台圏外へと脱落しました。 ティモもこの雨に足をすくわれる形で、ポイント圏外でフィニッシュ。 エクストリームウェザー(深溝)タイヤに交換するのはかなりのリスクだったので、 スタンダードウエット(浅溝)タイヤの新品にもう少し早く変えていれば、違った展開になっていたかもしれないだけに残念です。
それでもトップ10外から2台がスタートして、7位の2ポイントを獲得したことは素直に喜びたいと思います。 これでコンストラクターズポイントを2点追加したので、我々は、コンストラクターズ選手権で単独4位にポジションを上げることができました。

次戦ドイツGPでは、新しいパーツを投入する予定です。
ご声援よろしくお願いします。


シルバーストーンでの新居章年。 ヤルノの7位入賞によりコンストラクターズ選手権で4位に浮上! 次戦のドイツGPは“ホームレース”の一つ。もちろん更なる上位進出を目指す!