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Rd.12 Grand Prix of Europe
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新居章年リポート
2008年8月25日(月)

いつもご声援ありがとうございます。今年はスペインのバレンシアで初めて開催されることとなったヨーロッパGP。舞台となるバレンシア・ストリート・サーキットは完成したばかりの市街地コースということで、とてもエキサイティングな戦いが繰り広げられました。それでは、さっそくその模様を報告します。

バレンシア市街地サーキットで路面のグリップはかなり低く、カナダのモントリオールに似た印象を受けるが、道幅が広めにとられている。また、ダウンフォースレベルはバーレーンに近い中程度。

●レイアウトはモントリオール、ダウンフォースレベルはバーレーン
バレンシア・ストリート・サーキットは先月完成したばかりということで、F1チームのだれもが初めてレースを行うコース。コースを1周歩いてみての印象は、同じように市街地サーキットであるモントリオールに似ているというものでした。ただし、エスケープゾーンが意外と大きくとられていて、コース幅もモントリオールより広いと感じました。
シミュレーションでの最高速度は310km/hぐらいになると予想され、ダウンフォースレベルはバーレーンと同じようなところに落ち着くものと考えていました。ラップタイムは1分40秒ぐらいというのがシミュレーションの結果ですが、路面にタイヤのラバーが乗ってくれば、若干それよりも速くなるものと予測していました。
高いダウンフォースレベルで戦ったハンガリーGPではティモ(グロック)が表彰台に上がりましたが、今回は我々があまり得意ではないミディアムレベル。しっかりと2台そろってポイントを獲得することを最優先にしていました。

土曜日予選前、トラブルによりフリー走行で感触を確認できなかったヤルノ。ぶっつけ本番で予選に臨んだがトップチームに引けをとらない素晴らしいタイムをたたき出した。ベテランの力量を存分に発揮した。

●2台で異なるメニューを試し、トラブルフリーで走行データをしっかりと収集
初めてF1を走らせるサーキットなので、金曜日のフリー走行で、できるだけ多くの周回を走行したいと思っていました。走行距離が長くなれば、それだけデータも多く収集でき、ドライバーにとってもいい経験となります。そういう意味では、まったくトラブルが発生することなく、ふたつのセッションをこなすことができた初日は我々にとって良い滑り出しとなりました。しかも、まだセットアップが決まっていない午前中の段階からティモのクルマはバランスが悪くありませんでした。
その後、ふたりのドライバーで空力のセットアップを変えていき、効率よくデータを採集していきました。その結果、若干ヤルノ(トゥルーリ)がハンドリングに問題を抱えました。具体的にはややオーバーステア気味で、ブレーキングの感触もまだ満足のいくレベルに達していませんでした。しかし、すでにティモがいいセッティングを見つけていたこと、セッション後にデータを精査して、ティモのセットアップをうまくヤルノのクルマに活用しようと思っていたので、このヤルノの順位に関してはそれほど心配していませんでした。

前回表彰台のティモは好調を保っていたが、予選では体調不良やタイヤへの熱入れが十分にできず第2ピリオドでノックアウト。しかし決勝ではスタート直後の混乱を巧みに切り抜け、ポジションアップに成功した。

●ティモが突然の失速。ヤルノもトラブルに見舞われる
残念な予選だったというのが、正直な感想でした。金曜日のフリー走行の出来を考えれば、2台そろってトップ10の真ん中に行くことができると思っていたからです。
まず予選第2ピリオドで脱落したティモですが、第1ピリオドまでは順調だったのですが、第2ピリオドに入って突然、思うような走りができなくなりました。具体的には、激しいブレーキングが要求される、橋の手前の第8コーナー、一番長いバックストレートの後の第12コーナーで、それぞれのアタックで1回ずつミスをしてしまいました。どちらかのアタックで、もし上手くまとめられていれば、最終ピリオドに確実に進出できたはずです。
一方ヤルノは、予選前の午前中に行われたフリー走行3回目でギアボックスにオイルを送るポンプに不具合が発生したことが響き、わずか2周しか走行できませんでした。金曜日のフリー走行からセッティングを変えていたため、その確認を予選前に行いたかったのですが、それができず、ぶっつけ本番での予選タイムアタックとなったわけです。それにもかかわらず、予選の第1ピリオドと第2ピリオドでは常に上位に進出し、危なげなく最終ピリオドに進出するあたりは、さすがでした。しかし、最終ピリオドのタイムアタックではセクター2で若干ミスを犯してしまい、最終ピリオドの自己ベストが更新できないことが分かったため、燃料を無駄に消費させないようタイムアタックを途中で切り上げてピットへ戻ることに決めました。
予想通りにいかず悔しい予選となりました。しかし、まだレースは終わっておらず、予選後のミーティングではピットストップ作戦でいかにポジションを上げるか、熱の入った話し合いを行いました。

ヤルノの力走、ティモの速さ、チームの戦略がしっかりかみ合い今季3度目のダブル入賞を果たした。あまり得意としなかった中程度のダウンフォースレベルのサーキットでも戦えることを証明した。

●予選で落としたポジションをチーム全員の力で奪い返したダブル入賞
決勝では2台ともいいスタートが切ることができました。このことがいい結果を得ることができた最初の要因です。さらにティモは1周目の混乱をうまくかいくぐって3つポジションを上げて、コントロールラインに帰ってきたことで、作戦の幅が膨らみました。ティモには1ストップが可能なだけの燃料を搭載していましたが、タイヤの状態を考え、2回ストップへも変更できる態勢をとっていました。
しかし、ティモのペースは2ストップ勢にひけをとらないほど速かったので、最終的によりポジションアップが狙える1ストップ作戦のままで行くことにしました。
土曜日の予選で最終ピリオドに進出したヤルノは、そのとき搭載した燃料の残りで日曜日のレースをスタートさせなければなりませんので、最初から2回ストップ作戦を採用することになっていました。そして、スタートポジションをしっかりと守り、前を走るヴェッテル(トロ・ロッソ)を追走し、2周分多く搭載した燃料によって、難なくポジションを上げることに成功しました。
土曜日の予選は残念な結果に終わりましたが、日曜日の決勝ではその失敗をチーム全員の力で奪い返してポイントを獲得しました。今シーズン2台そろってのポイント獲得はこれで3回目ですが、ヨーロッパGPのダブル入賞はチーム力で勝ち取ったポイントだと評価しています。
昨年はこの中盤戦で息切れしていましたが、今年はしっかりとトップチームを追い続けているので、後半戦もこの調子を保ち続けていきたいと思っていますので、ご声援よろしくお願いします。


バレンシアでの新居章年。2戦連続でダブル入賞を達成! 10月の日本GPまで残り3戦。このままの勢いで次戦、スパ・フランコルシャンに挑む!