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Rd.17 Grand Prix of China
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新居章年リポート
2008年10月20日(月)

いつもご声援ありがとうございます。日本GPも無事終了したF1グランプリは、休む暇もなく、2週間連続で開催された上海へと向かいました。それでは、今年で5回目の開催となった中国GPの模様を報告しましょう。

上海は富士で用いたものと同様の空力パッケージを使用し、タイヤはワンランク硬めが支給された。タイヤの使い方が鍵となるが、過去上海で見られたソフト側タイヤでのグレイニング(めくれ摩耗)は、初日の走行結果を見ると問題なさそうだった。

●ティモのクルマは足回りをすべて交換。日本GPよりも硬めになったタイヤの使い方がポイント
ホームグランプリだった日本GPでは、表彰台を狙っていただけにそれを皆さんの前で果たせなかったことは残念でした。しかも、レース序盤にティモ(グロック)のクルマにトラブルが発生してリタイアを余儀なくされ、2台そろってポイントを獲得できなくて悔しかったですね。
ティモのトラブルはシートを固定するモノコック側にあるブラケットに不具合が発生したというものでした。そのため、モノコックそのものにダメージが及んでいる可能性も考えられましたが、幸いその心配はありませんでした。したがって、今回のグランプリもティモは富士スピードウェイで走ったものと同じシャシーを使用しました。ただし、コースオフした際、縁石で飛び跳ね、クルマに過度な入力加わっていたため、足回りはすべて交換しました。
日本GPから2週間連続で開催となったため、クルマの仕様は基本的に富士スピードウェイでのものと同じでした。ただタイヤは日本GPよりもワンランク硬めのミディアム&ハードの組み合わせとなったので、いかにタイヤのパフォーマンスを引き出すかがポイントとなりました。

初日からセットアップに苦労していたティモは、予選第1ピリオドではハードタイヤをうまく使い第2ピリオドへ進出。しかしミディアムへ履き替えたところクルマのバランスが変化してしまい、惜しくもノックアウトされてしまった。

●金曜日午前中にデータを収集。午後にヤルノが4番手タイムをマーク
金曜日午前中のフリー走行はまだ路面にラバーが乗っていない段階から本格的な走り込みを開始したため、ドライバーはふたりともグリップ不足に悩んでいました。しかし午前中に我々が予定していたメニューはエアロダイナミクスレベルの比較でしたので、特に心配はしていませんでした。
午前中のフリー走行後、データを精査してみると、若干ダウンフォースは高めですが、上海インターナショナルサーキットが富士スピードウェイと似たような特性を持ったサーキットであることが確認できました。富士スピードウェイでは初日、ティモがトップタイムをマークしましたが、中国GPも初日午後のフリー走行でヤルノ(トゥルーリ)が一時2番手につけ、最終的に4番手で初日を終了したのも、クルマの相対的なパフォーマンスがほとんど同じだったからだと思います。したがって、午後のセッションでティモが幾分クルマのバランスに苦しんでいましたが、大きな問題にはならないだろうと予想していました。
富士スピードウェイとの違いといえば、持ち込まれた2種類のタイヤ。富士スピードウェイでは軟らかいほうのタイヤにグレイニング(めくれ摩耗)が出ましたが、今回は路面が滑りやすい金曜日でもグレイニングは発生していなかったので、タイヤの使い方に関しては心配ありませんでした。
全体的に見れば、日本GPに引き続き、中国GPも初日から順調なスタートを切ることができました。

予選ではそれまでの好調さが一転し、「タイヤのグリップが失われてしまったようだ」と語ったヤルノ。それでも第3ピリオドまで進出し、他ドライバーのグリッド降格もあり、決勝はポイント獲得圏内の7番手からのスタートになった。

●第2ピリオドで突然のバランス変化。不本意な結果に終わった予選
金曜日に引き続き、ヤルノは土曜日午前中のフリー走行3回目でも好調を維持しており、5番手タイムを記録し、午後の予選に向かいました。一方、前日のフリー走行でバランスに苦しんでいたティモはこのフリー走行でもなかなか満足なセットアップを見つけることができず、結局ヤルノと同様のセッティングに変更して、公式予選に臨むことにしました。その変更が功を奏して、第1ピリオド、ハードタイヤを履いた1回目のアタックで満足のいくアタックができました。ところが、2セット目にミディアムタイヤを履いてからバランスが変化して、再び思うような走りができなくなったのです。
同じようなことがヤルノにも発生してしまいました。ヤルノは予選に入ってから、アンダーステア傾向が出始めて、タイムアタックするたびにフロントウイングのフラップの角度を立てるという状態でした。そのような中で2台そろって第2ピリオドに進出した我々ですが、一段と激しさを増す第2ピリオドではちょっとしたバランスの変化がタイムに大きく影響する結果となりました。特にライバル勢がタイムを更新してくる2回目のアタックで、ふたりとも自己ベストを更新することができず、ティモが13位に終わってしまいました。ヤルノはなんとか100分の1秒差で10番手に踏みとどまり、最終ピリオドへ進出して9番手で予選を終了しました。
初日の手応えが良かっただけに、正直もう少し上のポジションを期待していました。なかなか思ったように物事が運ばない一日でした。

チームが採択した1ストップ作戦に見事に応えてみせたティモがポイントを獲得した。決勝までセッティングに苦しんでいただけにうれしい結果となった。一方ヤルノは不運にも第1コーナーでの混乱に巻き込まれ、レース序盤にリタイアとなった。

●1ストップ作戦を敢行したティモが5台を抜く力走。ヤルノはスタート直後のアクシデントでリタイア
予選6位だったマーク・ウェバー(レッドブル)が土曜日の予選前にエンジン交換を行ったことで、レギュレーションに従い10番手降格。また予選7位だったニック・ハイドフェルド(BMWザウバー)が予選中に他車のアタックを妨害したとして、3番手降格のペナルティが科せられたため、ヤルノはふたつポジションを上げて7番手から、ティモはひとつ上げて12番手からスタートを切ることとなりました。
スタート自体はヤルノもティモも悪くはなかったのですが、1コーナーでのポジション取りで、ヤルノがセバスチャン・ボーデ(トロ・ロッソ)に追突され、押し出されるような形になって、コースアウトしてしまいました。最後尾まで落ちたヤルノはピットイン。ノーズを交換して、サスペンションなどの足回りに異常がないかを確認し、燃料を搭載してコースに復帰させました。しかし、見た目以上にサイドポンツーン周辺にダメージを負っていたため、レースを続行することは不可能と判断してリタイアすることを決めました。入賞圏内からのスタートだっただけに本当に悔しい結果になりました。
これでティモ1台だけがコース上に残ったわけですが、12番手からスタートするティモには1ストップ作戦を授けてレースに臨みました。この作戦が功を奏して1回目のピットストップを行った32周目には7番手までポジションを上げることに成功したのです。ピットストップ中に10番手まで順位を下げましたが、2ストップ勢を採る全員が2度目のピットストップを完了すると、ティモの順位は再び7番手に戻り、そのまま7位でフィニッシュすることができました。
しかし、コンストラクターズ選手権のライバルであるルノーが2台そろってポイントを獲得して、その差が20点となったため、最終戦を待たずしてルノーにはポイントで届かないことが決定しました。シーズン後半戦の目標だったコンストラクターズ選手権4位の座は逃してしまいましたが、最終戦のブラジルGPは、そういったことを考えずに、自分たちの持てる力を100%出し切って、シーズンを終えたいと思いますので、最後までご声援よろしくお願いします。


上海サーキットでの新居章年。ティモが力強い走りで7位入賞を果たし2ポイント獲得した。最終戦のブラジルGPでは最後まで全力を尽くし、2台そろっての上位入賞を狙う!