TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge Program

Training Report Vol. 2 - Tarmac rallies with R2 cars

冬のラリー2戦を終えた勝田貴元と新井大輝は、学びのプロセスとして、車両をこれまでのフォード・フィエスタR5からフォード・フィエスタR2に切り換え、欧州の国内ラリー選手権に挑戦。二人にとっては欧州で初めてのターマック(舗装路)ラリーとなる。新しい車両に慣れること、ターマックでのドライビングやペースノート作りの経験を積むこと、舗装路でのタイヤの使い方を学ぶことなどを直近の課題として取り組みながら、競技を通してラリーの経験値を高めることを目的に、イタリアで2戦、フランスで1戦の計3戦に挑んだ。

TRAINING

勝田貴元選手
勝田貴元選手

今回から新しい車両(R2)になったため、まずは車に慣れるために走行テストを実施。イタリアでのテストにはミッコ・ヒルボネン(元WRCドライバー)も参加し、両選手はドライビングやセットアップなど、様々なアドバイスを受けた。

舗装路でのドライビング経験の少ない新井は、イタリアの狭く、曲がりくねった起伏の激しい路面での運転に慣れることが課題。最初は慎重な運転から始め、講師陣のアドバイスにより、徐々に車と運転に慣れていった。

勝田貴元選手
勝田貴元選手
新井大輝選手
新井大輝選手

イタリアでの第1戦と第2戦の間は、選手はイタリアに滞在し、フィンランドとはまた違うイタリアの道で、ペースノートトレーニングを実施。
特に、ペースノートを課題とする勝田は、ノートをよりシンプルで効率のよいものにするため、前回のラリースウェーデンの後からペースノートの書き方を大きく変更。インストラクターのヨウニやコドライバーのマルコのアドバイスを参考に、新しいノートに慣れるよう日々トレーニングを重ねた。

新井大輝選手
新井大輝選手

RALLY REPORT

Rally Il Ciocco(イタリアラリー選手権 第1戦)
2017年3月17-19日(SS数17本、総SS距離175.3km)
結果
#27 新井大輝/グレン・マクニール クラス5位、総合16位 (Ford Fiesta R2) 2:14:04.4
#35 勝田貴元/マルコ・サルミネン リタイア (Ford Fiesta R2)

勝田、新井にとって欧州で初めてのターマック(舗装路)ラリー。新井はサービス毎にセッティングを変更し、自分と道に合うセッティングを探して走行を続けた結果、徐々に調子を上げた。2度のパンクでかなりのタイムロスもあったが、最終的にクラス5位でラリーを終えた。一方、サーキットレースのバックグラウンドを持ち、舗装路での走行を得意とする勝田は終始クラス上位のタイムを記録していたものの、デイ2のSS12で前輪2本にスローパンクチャーが発生。フィニッシュラインまでは車を運ぶも、スペアタイヤを1本しか持っておらず、デイリタイアとなった。翌日のデイ3(最終日)には再出走したが、SS14で発生したギアボックスのトラブルにより走行継続は困難と判断し、SS15が終わった時点でリタイアとなった。

  • 勝田/サルミネン組
    勝田/サルミネン組
  • 新井/マクニール組
    新井/マクニール組
Rallye Sanremo(イタリアラリー選手権 第2戦)
2017年3月31-4月1日(SS数11本、総SS距離175.77㎞)
結果
#38 新井大輝/グレン・マクニール クラス4位、総合13位 (Ford Fiesta R2) 2:08:31.3
#27 勝田貴元/マルコ・サルミネン クラス9位、総合27位 (Ford Fiesta R2) 2:20:31.4

前戦のRally Il Cioccoに続き、欧州でのターマックラリー2戦目。車両の特徴を徐々に掴み始めた勝田、新井にとって、前戦から2週間と間を置かずに参戦することは、とても有意義であった。勝田はセクション1(SS1-4)から終始安定した走行で、タイヤと道とのフィーリングを確かめた。新井はパンクに細心の注意を払いつつ、自分の走行に徹した。続くセクション2(SS5-6)は、スタートが23時を過ぎ、気温は日中20℃前後から6℃に下がった中での走行。 セクション2の1本目、33.6kmで本ラリー最長のSS5は、暗い夜間走行で狭い道がより狭く見える中、デイリタイアの車両が9台も発生する難しいステージとなった。勝田も左前を岩にヒットしてロアアームを折り、その1台となった。一方、集中を切らさず丁寧な走りを続けた新井は、SS5を無事にクリア、続くSS6ではクラス2位のタイムを出した。翌日のデイ2最終セクションは雨が降る中での戦いとなったが、新井は最後まで安定したペースで走り切った。またスーパーラリールールにより、深夜のサービス後に再出走が可能となった勝田は、前日の悔しさから気持ちを切り替えクラス上位のタイムを連取。デイ2単独では、クラストップという会心の結果でラリーを終えた。

  • 勝田/サルミネン組
    勝田/サルミネン組
  • 新井/マクニール組
    新井/マクニール組
Rallye Lyon Charbonnière-Rhône(フランスラリー選手権 第2戦)
2017年4月20-22日(SS数13本、総SS距離226.78㎞)
結果
#84 勝田貴元/マルコ・サルミネン クラス6位、総合24位 (Ford Fiesta R2) 2:15:04.6
#83 新井大輝/グレン・マクニール クラス8位、総合26位 (Ford Fiesta R2) 2:15:12.7

欧州でのターマック(舗装路)ラリー3戦目。フランスは、前戦、前々戦のイタリアとは路面や道の特徴が大きく異なり、勝田、新井にとってはまた新たな挑戦となった。デイ1、勝田はSS2でスローパンクチャーに見舞われ大きくタイムロスし、クラス20位まで順位を下げてしまう。しかし、SS3以降は着実な走行でクラス14位まで挽回してデイ1を終えた。一方、新井はミスなく安定した走行を続け、デイ1をクラス11位で終了した。翌デイ2は、道幅は広めでジャンクションを多く含む、よりハイスピードでテクニカルなコース設定。サーキットレース出身の勝田は、持ち前の舗装路での力を発揮し、デイ2のSS8本のうち5本でクラストップタイムを記録。最終的にクラス6位まで追い上げ、ラリーを終えた。新井は自分と道に合う車のセッティング、タイヤを選択し、安定した走行で徐々に順位を上げていたが、終盤のSS11で右前サスペンションの不調が発生。タイムは伸び悩んだものの、最後まで走りきることに目標を定め賢明な走りを貫き、クラス8位で完走した。

本ラリーにはセーフティクルー(※)の参加が許可されており、新井のセーフティクルーを本プログラム講師のアンプヤが、勝田のセーフティクルーを同プログラムで育成中のコ・ドライバー足立と、ドライバーのニカラが務め、ペースノートの修正やタイヤ選択など、両選手に適切なアドバイスを与えた。また、デイ1とデイ2でコースの性格が大きく異なり、路面、道幅、高低差を考慮したタイヤ戦略、車のセッティング等が要求されたことから、両選手はこのラリーを通して多くの経験を積んだ。

(※)セーフティクルーとは、SSが始まる直前にレッキカーなどでコースを走行するチームメンバー。レッキを行なった時と路面状態が異なる場合は、その情報を選手に伝えペースノートの修正を進言する。ターマックラリーのコースを速く、安全に走るためにはなくてはならない存在。

  • 勝田/サルミネン組
    勝田/サルミネン組
  • 新井/マクニール組
    新井/マクニール組
Takamoto Katsuta
Cioccoでは、パンクでリタイアすることになり、それまですごく良い感じで乗れていただけに、とても悔しい思いをしましたが、これも良い経験となりました。トラブルやイレギュラーの事態にどのように対応すべきかを学びました。Sanremoでも、小さなミスでデイリタイアとなってしまい、悔しさでいっぱいでしたが、また新しい学びがあったし、それ以外のステージではトップタイムもたくさん出すことができ、自信も得ました。前回の経験を踏まえ、ハプニングが起きた際に、冷静に自分がやるべきことを判断して対処できるようになったことは大きな成長だと感じました。フランスでも、原因不明のパンクで順位を大きく下げてしまいましたが、そこからどこまで挽回できるかを楽しむことにしました。これまで学んだことを活かす走りを心がけ、プッシュする事なくいいタイムが刻めました。自分の速さを見せることができて嬉しかったです。
スウェーデン以降、ペースノートの作り方を変えましたが、たった3か月でここまでフィーリングが変わると思いませんでした。情報がより具体的になり、コーナーの距離感も以前よりしっかり自分のフィーリングとあっていると感じています。次戦はペースノートを変えてから初めてのグラベルとR5なので、すごく楽しみです!
Hiroki Arai
今回、ヨーロッパの本格的なターマックラリーに初めて参戦しましたが、道の特徴が色濃く、これがヨーロッパのターマックか!と度胆を抜かれるような道でした。ターマック経験が少ないので、最初のCioccoでは様々な走らせ方を試し、だんだんいいタイムが出せるようになりました。Sanremoでは、自分のドライビングの改善とペースノートの精度向上に努めました。前回のラリーでパンクが多かった理由の1つは、コーナーの長さの表現に曖昧な部分があり、走行ラインがずれてしまったことだったので、Sanremoからコーナーの長さを表す記号をより細かく分けました。それによってロングステージでもコンスタントなスピードで走行し、ミスなくタイムを出せるようになったのが大きな収穫でした。
フランスは、ハイスピードで道も幅広く、サーキットのようなスムーズな路面で、改めてライン取りの重要性やブレーキングについて勉強になりました。最終ループでダンパーに不具合が発生してしまったのは残念でしたが、それ以上に多くを学び得たラリーでした。ヨウニがセーフティクルーをしてくれたおかげで、ペースノートの課題も見つかったので、次戦までに修正、改善できるように取り組んでいきます。
チーフインストラクター
ヨウニ・アンプヤ
二人とも、新しい車両、道、コンディションなど、様々な新しいことに素早く適応し、競争の激しいイタリア、フランスの選手権で、ステージを熟知する地元選手に交じって非常によく戦いました。 R2車両は、R5車両よりも小さなミスに影響を受けるため、それを考慮した走りが要求されます。 今回のR2車両での経験は、彼らの今後のR5での成長にも非常に役立ったと考えています。

勝田のターマックでの速さは目を見張るものがあり、また、この3戦を通して精神面でも非常に成長しました。今回得た経験と自信で、グラベルでの走行も成長も期待しています。新井は忍耐強く、常に冷静にラリーを進めることができる選手です。フランスで、彼のペースノートの課題も見つかったので、次はそこを改善し、さらによい走りができるようになると思います。

Dear, reader…(読者の皆さんへ)

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