モータースポーツ強豪国フィンランドを代表する
WRCレジェンド・ドライバー トミ・マキネン
トミ・マキネンは、1964年6月26日フィンランドで生まれました。
フィンランドは、F1やWRCで多くのチャンピオンを輩出するモータースポーツ
強豪国として知られ、1996年から1999年まで、当時の最多記録となるWRC4連覇
を達成したマキネンはフィンランドを代表するドライバーのひとりです。
多くのフィンランド人ドライバー同様、マキネンも子供の頃から
トラクターレースで頭角を現しました。
1987年のラリーフィンランドに全財産をつぎ込んで購入したランチア・デルタで
WRCデビューを果たしますが、いきなりクルマを前転させるという派手な
エピソードも残っています。
マキネンのその非凡な才能は、1995年に三菱の
ワークスチームに抜擢されたことによって開花しました。
90年代後半のWRCはチャンピオン候補となるドライバーが5~6人もいる
激戦状態が続いており、その接戦を制しての連覇は、マキネンの偉大さを
象徴する偉業となりました。
マキネンはその才能だけでなく大変な努力家で、若手の頃、ステージを走り終え
てからもマシンから降りず、イメージトレーニングを繰り返すなど、真摯に
ラリーに取り組む姿勢は注目を集めました。
三菱チームの総監督を務めていた故木全巖氏によれば、マキネンはアクセル
全開率の非常に高いドライバーだったということです。
その才能を活かし素晴らしいタイムをたたき出す一方でリタイアを喫することも
多かったのですが、経験によって安定感が加わり、卓越した強さを発揮して
タイトル4連覇を達成しています。
勝負に妥協しない厳しさを見せる反面、チームメイトには自分のテクニックを
包み隠さず教えるなど、後進の指導にも熱心に取り組むことでも有名でした。
2003年を最後に現役生活から退き、現在はトミ・マキネン・レーシングを
立ち上げて競技車両の製作・供給と後進を育てるドライビングスクールの
運営を行っています。
日本車で4度もWRCの頂点を極めた伝説の男
特に三菱チームには1994年から2001年まで 8年間にわたって在籍し、4度のタイトルを獲得。日本車でのドライバーズ・チャンピオン獲得数は史上最多と なっています。また当時のWRCは三菱、スバル、トヨタが参戦する日本車の黄金時代で、 スバルチームのコリン・マクレーやトヨタチームのカルロス・サインツといったライバルとともに、 WRCを大いに盛り上げました。
三菱ファン、スバルファンの区別なく多くの日本人に愛されたドライバーであり、その人気は現在も絶大です。
また、4年連続チャンピオン獲得を記念して、三菱はマキネンの名を冠した特別仕様車 『三菱ランサーエボリューションⅥ トミー・マキネン エディション』を発売し大きな反響を呼びました。
マキネンすごいエピソード
難関モンテカルロで4連覇、
地元フィンランドでは5連覇を達成
例年1月に開催されるラリーモンテカルロは、フランス南部・アルプスの 山岳路が舞台です。路面こそ舗装されていますが、雪や氷に覆われている 箇所も多く、路面コンディションが安定しないため、ひとつのミスが リタイアにつながる非常に難易度の高いラリーとして知られています。 そのような状況下で勝利を手繰り寄せるにはマシンそのものの速さ だけでなく、路面にマッチしたタイヤ選択、そして状況を読み切る ドライバーの経験が欠かせません。
また、マキネンはWRC屈指の超高速ラリーであるラリーフィンランドで 1994年から1998年まで5年連続の勝利を挙げています。ラリーフィンランド は初開催の1951年以来、伝統的に地元のフィンランド人ドライバーか隣国の スウェーデン人ドライバーなど、北欧出身のドライバーしか勝てないと 言われるほど難しいイベントです。鬱蒼と茂る森の中を縫うように ステージが設定され、その平均スピードは時速120kmにもなります。 多くのジャンピングスポットが点在するうえ、複雑なうねりをもつ路面は 正確なラインをトレースしなければ上位入賞もおぼつかない難コース。 実は1995年はWRCとしては開催されていないため、記録として 注目されることは少ないですが、2015年で65回目の開催を迎えるなか、 これまでフィンランドで5連覇を達成したドライバーはマキネン ただひとりです。
世界最高峰のラリー競技、それがWRC
2015年は全13カ国で開催中
ラリー競技の世界最高峰、それが世界ラリー選手権
(WRC=World Rally Championship)です。
ラリーといってもダカール・ラリーに代表されるような道なき道を
SUVで走る『クロスカントリーラリー』とは違い、一般の交通を封鎖し、
1台ずつの区間走行タイムの合計によって速さを競う『スプリントラリー』
の世界選手権がWRCです。1973年の創設以来、時代に合わせて規定を変更し
ながら現在まで40年以上開催が続き、2015年は1~11月にかけて、全13カ国
を舞台に世界一流のドライバーたちが速さを競っています。
タイム計測区間のスペシャルステージは舗装路や砂利道、雪道など、国や
地域によって様々な性格を持ち、多種多様な路面コンディションは
ドライバーのテクニックと車両の走破性・耐久性を問うスペクタクルな
競技として世界中に多くのWRCファンを生み出しました。
過去にはトヨタ、日産、三菱、スバル、マツダ、スズキ、ダイハツ、
いすゞなど、多くの日本車メーカーが自社のクルマの優秀性を示す
格好の場としてWRCに参戦しています。
また、2004年には日本でも初めてのWRC『ラリージャパン』が開催され、
多くのラリーファンが開催地である北海道・十勝に押し寄せました。
マキネンもオフィシャルカーのドライバーとして招聘され、
北海道の林道を走行しています。
世界中で行われているラリー選手権
世界最高峰カテゴリーである『世界ラリー選手権』を頂点として、
ラリーのピラミッドは大きく5つに階層分けをすることができます。
頂点であるWRCの下には、大きな地域で分類された『FIA地域選手権』が
設定されています。現在はアジア・パシフィック、ヨーロッパ、中東、
アフリカ、中米、南米の6選手権が行われており、それぞれ複数の国を
舞台に争われています。その下には、各国の自動車連盟(日本ではJAF)
が管轄する『国内ラリー選手権』が存在しており、日本では
全日本ラリー選手権として、2015年は9戦で争われています。
各国の国内選手権から下はさらに細かく分類され、若手ドライバーの
登竜門となっています(日本では各地方選手権など)。