- Round4
- 全日本ラリー選手権 第4戦 福島
レポート
今シーズン初のグラベルラリー、過酷な環境と予期せぬトラブルにチームワークで完走を果たす
2016年シーズンの全日本ラリー選手権第4戦「がんばろう!福島MSCCラリー2016」が、6月10~12日に開催され、TOYOTA GAZOO RacingチームのTGR Vitz GRMN Turbo(大倉聡/豊田耕司組)がJN5クラス3位と、3戦連続で入賞を果たした。
今シーズン初のグラベル(未舗装路)ラリーとなる今大会は、開催直前に降った雨により路面が掘れやすくなっており、前評判通りサバイバルラリーとなることが予想された。チームは、グラベル用サスペンションやガード類を装着するなどグラベルに対応するための仕様変更を施した昨年の1号車を投入。ラリー序盤で3番手につけていたが、SS7でターボ関連のトラブルが起き、大きくタイムをロスしてしまう。連絡を受けたメカニックは電話で大倉選手にアドバイスを与え、大倉選手が自ら修復作業を行なって問題を解決。無事にサービスパークへと帰還を果たした。
最終日は「確実に走り切るために、無理のないペースを心がけた」という大倉選手のコメントどおり、マシンを労って3位でフィニッシュ。「今シーズン初のグラベルラリーでしたが、テストでは分からないことが、実戦では出てきますね。でも課題を見つけることができました」と語った。
また、チーフメカニックを務める豊岡悟志は、「初日のターボ関係のトラブル以外は、大きな問題もなく走り切ることができました。普通の状態ではあり得ないトラブルだったので、ラリーでは予想以上の事態が起こるのだと、改めて勉強になりました」と、表情を引き締めていた。
めざせ凄腕メカニック~「いいクルマづくり」への道~Vol.04
Team TOYOTA GAZOO Racingにおいて、マシンの製作・整備を担当するのは、凄腕技能養成部の社員メカニックたち。厳しいラリー環境で技能を磨く彼らから、毎回1名のスタッフを紹介する。第4回目に登場するのは、2015年の全日本ラリー選手権開幕戦の唐津からメカニックを務める下田伸也だ。
「チームに加入するまでは電気関係のシステムを評価する部署にいました。モータースポーツは好きでしたが、実際にはなかなか携わる機会がありませんでした。このようなチャンスがある以上、手を上げるのは当たり前ですよね(笑)。それで『行きます!』と立候補しました。決まったときはとても嬉しかったですが、最初の頃は緊張してしまい、あたふたしているうちに終わってしまった印象です」と、下田はつい1年前のことを懐かしそうに振り返った。
開幕3戦を終えて、ドライバーの大倉選手からは様々なフィードバックがあったことを下田は明かしてくれた。「実際にラリーを走った大倉選手からのコメントを分析して、次のラリーに向けて改善を施しています。ラリーは走り切ることが大事です。そういった意味で優勝した第2戦久万高原では、それがしっかりできていたと思います」
福島での厳しいラリーを戦い終え、下田はあらためて自身の課題を感じたという。「フィニッシュ後、インカー映像を見て、かなり過酷な状況でドライバーが走っていたことが分かりました。次回のラリーではマシントラブルが起こらないように、しっかりと対策を施して挑みたいと思います。自分自身としては、ドライバーが求めていることを、もっと的確に汲み取れるようになることが目標です」
新井敏弘選手、逃げ切りで今シーズン初勝利!(JN6クラス)
全日本ラリー選手権のトップカテゴリー、JN6クラスは、スバルWRX STIをドライブする新井敏弘/田中直哉組が優勝。今シーズンの初勝利を達成した。
オープニングステージでベストタイムを記録したのは奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)。しかし、続くSS2で奴田原選手はスピン。ベストタイムはここまでシーズン3連勝中の勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)が奪うが、SS1とSS2で2番手タイムの新井がトップに立つ。その後、新井選手は4回のベストタイムを刻み、初日をトップで折り返した。
2日目に入ると、新井選手はベストタイムこそ1回にとどまったが、奴田原選手との差をコントロールし、安全なペースで走行。2位の奴田原選手に19.1秒差をつけて、トップでフィニッシュを果たした。出走9台中4台がリタイアするという厳しいラリーを終えて新井選手は、「初日は荒れた道でマシンにダメージもありましたが、2日目は何事もなく勝てました。これで、これまでの悪い流れがなくなったと思うので、次戦も頑張ります」と、語った。3位にはシリーズランキング首位の勝田選手、4位には藤本鋼二/中島亜希子組(三菱ランサーエボリューションⅧ)が入っている。
トヨタ86勢が僅差で鎬を削る(JN4クラス)
4輪駆動や前輪駆動の活躍が目立つ全日本ラリー選手権において、後輪駆動のトヨタ86を中心に戦われているのが、「JN4」。このクラスの特徴は優勝候補となる選手が数多く参戦していること。毎回僅差のバトルが繰り広げられ、異なるウィナーが生まれている。今回の福島では曽根崇仁選手がトップでフィニッシュし、今シーズン4人目の勝者となった。
曽根選手と優勝を争ったのは、同じ86をドライブする山口清司選手と石川昌平選手。石川選手は開幕戦、山口選手は第2戦を制しており、初日は山口選手が首位。僅差で2番手につけた曽根選手は最終日に4回のベストタイムを記録し、うれしいシーズン初勝利を手にしている。「諦めない気持ちが大切ですね」と、曽根選手は笑顔で振り返った。
同じマシンで争われているだけに、ドライバーによるコースの得意不得意が、大きなタイム差になってしまう可能性もあるのがJN4。現時点で圧倒的な強さを見せている存在がいないだけに、誰がいちはやくJN4クラス2勝目を手にするのか、今後の展開から目が離せないクラスだ。
もっとラリーを楽しもう
高台から見下ろすルネサンス棚倉のギャラリーステージ(サミーステージ in ルネサンス)では、サファリラリーやパリ・ダカールラリーで活躍した篠塚建次郎氏がデモンストレーションランを披露しました。また、SUPER GTにLEXUS RC F(DENSO KOBELCO SARD RC F/LEXUS TEAM SARD)で参戦するヘイキ・コバライネン選手もデモランやトークショーに登場。多くのラリーファンを魅了しました。TOYOTA GAZOO Racingブースにはヤリス WRCテストカーと、第3戦若狭ラリーを走行したTOYOTA Vitz GRMN Turbo 2号車を展示。本物のラリーカーを前に笑顔でカメラにおさまるお子様連れのご家族や、ラリーファンに大好評のひと時となった。
次戦予告
- 7月1~7月3日 全日本ラリー選手権 第5戦
- 「2016 ARKラリー洞爺 Supported by Sammy」
7月1日?3日に開催される第5戦「2016 ARKラリー洞爺 Supported by Sammy」は、北海道の雄大な大地を舞台にした高速グラベルステージを擁するラリー。洞爺湖や羊蹄山周辺など、美しい景色のなかをラリーカーが疾走します。TOYOTA GAZOO RacingブースにはヤリスWRCテストカーを展示し、GAZOO Lady2名も「顔ハメパネル」と一緒に登場予定です。