Round6
全日本ラリー選手権 第6戦 嬬恋
レポート
全日本ラリー選手権 第6戦 嬬恋 レポート

雨と霧が視界を遮る高速ターマック(舗装路)ラリー
高い信頼性を示し、価値あるJN5クラス4位を獲得

 2016年シーズンの全日本ラリー選手権第6戦「モントレー in 嬬恋」が、8月27日~28日に開催され、TOYOTA GAZOO RacingチームのTGR Vitz GRMN Turbo(大倉聡/豊田耕司組)が、JN5クラス4位、総合18位で完走を果たした。
 今回は、選手権ランキングで首位から8.6ポイント差の2位につける大倉選手にとって、タイトル奪取に向けて着実にポイントを重ねたい一戦となる。チームはこのラリーに向けて、ターマック(舗装路)仕様の2号車を投入。大会前日の夕方から本格的に雨が降り出し、土曜日のスタートの段階で、路面は滑りやすく濡れた状態となった。

雨にもかかわらず多くのギャラリーがパルコールつま恋リゾートホテルの駐車場に設けられたラリーパークに集まった。
雨にもかかわらず多くのギャラリーがパルコールつま恋リゾートホテルの駐車場に設けられたラリーパークに集まった。

 ひとつの操作ミスで簡単にコースを外れてしてしまう難しい状況のなか、大倉選手は安定したタイムをマークし、初日をクラス5位で終えた。「コースによっては、路面に川のような雨水が流れている箇所もあったので、とにかく攻めすぎないように注意して走りました。高速コーナーが続くコースではパワーのある車両が有利ですが、低速コーナーが中心のコースでは互角に渡り合えたと思います」と、大倉選手。
 ラリー2日目は、サービスパークでは雨が降り続いているものの、スペシャルステージ(タイムアタック区間でありタイムが計測されるコース)が行われる地域では雨は小康状態に。また、一部の区間では路面が乾き始めていた。大倉選手はSS12(12番目のスペシャルステージ)で4位にポジションを上げ、濡れた路面と乾いた路面が混在する難しい路面状況のなか、迫り来るライバルを凌ぎ切り、シーズン残り3戦のランキング争いにつながる価値ある4位を獲得した。

雨にもかかわらず多くのギャラリーがパルコールつま恋リゾートホテルの駐車場に設けられたラリーパークに集まった。
雨にもかかわらず多くのギャラリーがパルコールつま恋リゾートホテルの駐車場に設けられたラリーパークに集まった。
濡れた路面と乾いた路面が混在する難しい路面状況。刻々と変わる天候との戦いはモントレーならでは。
濡れた路面と乾いた路面が混在する難しい路面状況。刻々と変わる天候との戦いはモントレーならでは。

 フィニッシュ後にチームの車両整備に戻ってきた大倉選手は、「前日よりもさらに良いフィーリングで走ることができました。今回は雨で滑りやすく危険な路面でしたが、TGR Vitz GRMN Turboはしっかり熟成されて、きちんと攻めることができました」と、過酷なラリーを終えて安堵の表情をのぞかせた。
 チーフメカニックの豊岡悟志は、「今回は参加車両も多く、非常に面白いラリーでしたね。かなり難しい路面状況でしたが、ドライバーもメカニックも頑張ってくれました。トラブルなくしっかりと走り切ることができ、我々の強みであるマシンの、一戦一戦積み上げてきた信頼性の高さを実感したラリーでした」と、笑顔で語っている。

濡れた路面と乾いた路面が混在する難しい路面状況。刻々と変わる天候との戦いはモントレーならでは。
濡れた路面と乾いた路面が混在する難しい路面状況。刻々と変わる天候との戦いはモントレーならでは。

めざせ凄腕メカニック~「いいクルマづくり」への道~Vol.06

 Team TOYOTA GAZOO Racingにおいて、車両の製作・整備を担当するのは、凄腕技能養成部の社員メカニックたち。第6回目となる今回は、シーズン前半戦を終えて厳しいラリー競技の環境で技能を磨く参加メカニックにチームの状況を振り返ってもらった。

2016年シーズンを戦う凄腕技能養成部のメンバーたち。
2016年シーズンを戦う凄腕技能養成部のメンバーたち。
悪天候では特に気を抜くことができないラリーのサービス。マシンの各部の点検やドライバーのセッティングの要望に素早く対応していく。
悪天候では特に気を抜くことができないラリーのサービス。マシンの各部の点検やドライバーのセッティングの要望に素早く対応していく。
昨年1年間の実戦経験を経て、各自が状況を判断しながら、それぞれの役割と他のメンバーへのサポートも行えるようになった。
昨年1年間の実戦経験を経て、各自が状況を判断しながら、それぞれの役割と他のメンバーへのサポートも行えるようになった。

 チーフメカニックを務める豊岡悟志(写真右上)は、「人材育成という側面で考えると、参加しているメカニック全員が目の前のことだけでなく、先のことを考えながら活動ができるようになったと実感しています。ラリー競技という突発的な出来事が起こる現場で、主体的に考えながら作業ができるようになりましたが、さらなる成長を目指したいですね」と、活動2年目に突入したメンバーのより一層の成長に期待をこめた。
 サブリーダーの宮本昌司(写真右下)も深く頷く。「昨年までは参加することが目的だった気がします。今年はVitz GRMN Turboへの理解も深まりましたし、ドライバーやタイヤメーカーの方々とも、より実戦的な話し合いができるようになりました。そして、タイトルを争う緊張感の中での作業ができていることも、成長につながっていると思います」。
 市名俊彦(写真左下)はこれまで見逃していたことを、今年は気づけるようになったという。「以前は余裕がなく、そのまま見送っていたことがあったように思います。それが今では事前に対処できるようになりました。それと同時に、『ラリーを戦うためには、ここまでやらなければならないのか』と、改めて驚くこともあります。まだ成長できる余地はたくさんありますし、貴重な学びの場をしっかり活用していきます」。
 昨年の開幕戦からチームに参加している下田伸也(写真左上)は、多くの経験を積んだ今だからこそ気を抜いてはいけないと考えている。「経験を積んだことで、出来ることも増えましたが、それと同時にちょっと『慣れてしまっているな…』とも感じています。ラリーではちょっとしたミスがリタイアを呼び込んでしまうこともありますし、確実な作業を心がけようと改めて気持ちを引き締めています」。
 様々なことが同時進行するラリーでは、どうしても人的なミスが起こってしまうことがある。しかし、それこそが次へと繋がる学びの場だと、豊岡は語る。「ミスから学ぶことが本当にたくさんあります。ミスが出てしまうのは仕方がない。その失敗に気づいて、次につなげればいい。そのために、このラリー活動があると思っています」。

2016年シーズンを戦う凄腕技能養成部のメンバーたち。
2016年シーズンを戦う凄腕技能養成部のメンバーたち。
悪天候では特に気を抜くことができないラリーのサービス。マシンの各部の点検やドライバーのセッティングの要望に素早く対応していく。
悪天候では特に気を抜くことができないラリーのサービス。マシンの各部の点検やドライバーのセッティングの要望に素早く対応していく。
昨年1年間の実戦経験を経て、各自が状況を判断しながら、それぞれの役割と他のメンバーへのサポートも行えるようになった。
昨年1年間の実戦経験を経て、各自が状況を判断しながら、それぞれの役割と他のメンバーへのサポートも行えるようになった。

新井敏弘選手、一度も首位を譲らず今季2勝目!(JN6クラス)

 全日本ラリー選手権のトップカテゴリー、JN6クラスは、スバルWRX STIをドライブする新井敏弘/田中直哉組が、第4戦福島以来となるシーズン2勝目を記録した。
 終日雨と霧に覆われる難しいコンディションとなった初日、SS1で幸先良くベストタイムを記録した新井選手は、SS2とSS3で連続してベストタイムを刻む。SS6で1速と3速を間違えてスタートしてしまうミスはあったものの、2位の鎌田卓麻/市野諮組(スバルWRX STI)に5.1秒差をつけて初日を終えた。3位には奴田原文雄/佐藤忠宜組(三菱ランサーエボリューションⅩ)がつけている

地元群馬県で今季2勝目を挙げた新井敏弘/田中直哉組のスバルWRX STI。
地元群馬県で今季2勝目を挙げた新井敏弘/田中直哉組のスバルWRX STI。

 ラリー2日目、首位を走る新井敏弘/田中直哉組は、ターボの不調に悩まされながらも、一度も首位の座を譲ることなくフィニッシュ。昨年に続き、モントレーを制した。「ターボの不調にはヒヤヒヤしましたが、今回はクルマもタイヤも良かったですし、それが勝利に繋がったのだと思います」と、笑顔で振り返った。
 2位で2日目をスタートした鎌田卓麻/市野諮組はSS11でコースオフ。さらにSS12ではクラッシュにより左フロントにダメージを負ってしまう。これで4位に順位を落とし、代わって2日目に2度のベストタイムをマークした奴田原文雄/佐藤忠宜組が2位を得た。ポイントリーダーの勝田範彦/石田裕一組(スバルWRX STI)は3位でラリーを終えている。

地元群馬県で今季2勝目を挙げた新井敏弘/田中直哉組のスバルWRX STI。
地元群馬県で今季2勝目を挙げた新井敏弘/田中直哉組のスバルWRX STI。

TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジプログラムドライバー2名がJN5クラスに参戦!(注目のチーム)

勝田貴元は全日本ラリー投入からわずか2戦目のGT86 CS-R3をドライブするも、マシントラブルによりリタイア。
勝田貴元/足立さやか組は全日本ラリー投入からわずか2戦目のGT86 CS-R3をドライブするも、マシントラブルによりリタイア。

 毎戦激しい優勝争いが繰り広げられているJN5クラスに、ふたりの注目ドライバーが登場した。若手ラリードライバー育成プログラム・TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジプログラムで、フィンランドを拠点にトレーニングに励む新井大輝選手と勝田貴元選手が全日本ラリー選手権に参戦したのだ。
 今回、新井選手はシトロエンDS3 R3-MAX (前輪駆動)、勝田選手はGT86 CS-R3 (後輪駆動)と、ラリーチャレンジプログラムのフォード・フィエスタ R5 (四輪駆動)とは駆動方式が異なる車両をドライブした。

勝田貴元は全日本ラリー投入からわずか2戦目のGT86 CS-R3をドライブするも、マシントラブルによりリタイア。
勝田貴元/足立さやか組は全日本ラリー投入からわずか2戦目のGT86 CS-R3をドライブするも、マシントラブルによりリタイア。
新井大輝がドライブしたシトロエンDS3 R3-MAXは、すでに今シーズン参戦を積み重ねており、トラブルもなく走り切った。
新井大輝/伊勢谷巧組がドライブしたシトロエンDS3 R3-MAXは、すでに今シーズン参戦を積み重ねており、トラブルもなく走り切った。

 勝田貴元/足立さやか組のGT86 CS-R3は、前戦でヘイキ・コバライネン選手がデビューさせたばかりの車両。ところが、1日目の午後、車両トラブルから痛恨のリタイアとなってしまった。「SS5(5番目のスペシャルステージ)を走り終えた段階で異音がして、その後完全に動かなくなってしまいました。もっと走りたかったので、本当に悔しいですし、残念です」と、勝田選手は肩を落とした。
 一方、素晴らしいスピードで多くのベストタイムを記録し、2位でラリーを終えた新井大輝/伊勢谷巧組は、「今回のラリーで初めてドライブしたクルマでしたが、楽しくドライブすることができました」と、フィニッシュ後に新井選手は笑顔を見せた。
 今後もふたりはフィンランドを拠点にトレーニングを続け、様々なラリーで経験を積み、さらなる成長を目指している。

新井大輝がドライブしたシトロエンDS3 R3-MAXは、すでに今シーズン参戦を積み重ねており、トラブルもなく走り切った。
新井大輝/伊勢谷巧組がドライブしたシトロエンDS3 R3-MAXは、すでに今シーズン参戦を積み重ねており、トラブルもなく走り切った。

もっとラリーを楽しもう

TOYOTA GAZOO Racing PARKには、お子様連れに人気の体験型アトラクションがたくさん。
TOYOTA GAZOO Racing PARKには、お子様連れに人気の体験型アトラクションがたくさん。

 今回のモントレーでは、TOYOTA GAZOO Racing PARKが全日本ラリー選手権の会場に初登場しました。インストラクターが同乗し、フルブレーキングやパイロンスラロームを体感できる「フルブレーキ/スラローム エクスペリエンス」はイベント初登場。20kg~100kgものタイヤを持ち上げる「タイヤリフトアップ!!」や、「走る!G's アクアクラフトカー」などは、多くのラリーファンやお子様連れで賑わいました。
 また、TOYOTA GAZOO Racing WOMANと、東京カメラガールズがコラボレーションし、1泊2日の「真夏のワクワクカメラ旅行 in 嬬恋」が開催されました。今回参加したのは事前に募集した20名のカメラ女子。リエゾン(タイムアタックとタイムアタック間の移動区間)やサービスパークだけでなく、実際のコースでもラリーカーの撮影を満喫しました。

TOYOTA GAZOO Racing PARKには、お子様連れに人気の体験型アトラクションがたくさん。
TOYOTA GAZOO Racing PARKには、お子様連れに人気の体験型アトラクションがたくさん。
  • ほとんどが初体験というラリー観戦&撮影ながら、様々な画角や立ち位置などを試行錯誤しながら、どの参加者もラリーを楽しんでいた。
    ほとんどが初体験というラリー観戦&撮影ながら、様々な画角や立ち位置などを試行錯誤しながら、どの参加者もラリーを楽しんでいた。
  • 霧と雨のあいにくの天候ではあったが、観戦コースでは多くの観客の熱気にあふれていた。
    霧と雨のあいにくの天候ではあったが、観戦コースでは多くの観客の熱気にあふれていた。

次戦予告

9月23~9月25日 全日本ラリー選手権 第7戦
「RALLY HOKKAIDO」

9月23日~25日に開催される第7戦「RALLY HOKKAIDO」は、アジア・太平洋地域を転戦するアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)と併催される、グラベル(未舗装路)ラリー。かつてWRC(世界ラリー選手権)として開催された実績もあり、走行距離も長く、北海道の大地を疾走するスケールの大きなイベントです。TOYOTA GAZOO RacingブースにはヤリスWRCを展示し、GAZOO Lady2名も登場予定。また、24日、25日の両日は、北海道では初となるTOYOTA GAZOO Racing PARKも開催します。