5月5日(土)〜7日(日)にかけて、愛媛県上浮穴郡久万高原町を拠点に2023年シーズン全日本ラリー選手権(JRC)第4戦「久万高原ラリー」が開催され、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の勝田範彦/木村裕介組(GR YARIS Rally2)がJN-1クラスにおいて2位を獲得しました。眞貝知志/安藤裕一組(GR YARIS GR4 Rally DAT)は4番手を走行していましたが、最終日にトラブルが発生しリタイアを喫しました。
「人材育成」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の実践を目的に、全日本ラリー選手権に参戦するTGR。GRヤリスをベースとする「GR YARIS GR4 Rally」での2シーズンにおよぶ参戦を経て、2023年から新たに勝田/木村組がGR YARIS Rally2、眞貝/安藤組がGR YARIS GR4 Rally DATのステアリングを握ります。
山岳地帯の林道を使用する久万高原ラリーのスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間であり、タイムが計測されるコース)は、舗装が粗くタイヤの摩耗に厳しい区間や、苔や砂利など滑りやすい部分も点在する難しいコースです。
初表彰台を獲得した前戦の唐津から3週間という短いインターバルに、チームは久万高原に向けGR YARIS Rally2のテストを実施。これまでの参戦で得られた車両セットアップなどの知見を盛り込み、シーズン3戦目となる舗装ラリーに臨みました。また、今大会は2019年以来の有観客開催を実現。あいにくの雨天となりましたが、事前申し込み制で観戦に訪れたファンは、セレモニアルスタートやサービスパークでの作業風景、展示ブースなどを楽しんでいました。
ラリー初日は、序盤に乾いた路面から濡れた路面へと切り替わる難しいコンディション。勝田選手はリスクを避けたドライビングで、トラブルもなくJN-1クラスの2番手につけます。眞貝選手もSS4では2番手タイムを刻む好走を見せ、クラス4番手で初日を終えました。
初日のSSを逆方向に走る最終日も、ウェット路面での戦いとなりました。4番手の眞貝選手は、SS6で車両トラブルからストップ。ダメージの拡大を防ぐため、ここでリタイアを決断しました。2番手の勝田選手は、TGR-WRTの開発エンジニアによるアドバイスを活かし、ラリー中にセットアップを変更。この日行われたすべてのSSを2番手タイムでまとめ、前戦唐津に続いて2位表彰台を獲得しています。
■勝田範彦(ドライバー)
前戦の唐津から今大会までの間に、GR YARIS Rally2をテストする機会を作ってもらいました。広場での走行で、クルマの限界に対する理解を深めることができたと思います。これまでの2戦では、限界を探りながら走る部分があったのですが、今回はそれが少しずつ減って、しっかりアクセルを踏めている実感があり、2位を獲得できました。フィンランドから来日しているエンジニアのサポートも非常に大きいです。クルマに乗って感じたことをフィードバックして、エンジニアからの回答が返ってくる。そのサイクルを繰り返すことが、今回はよりしっかりと行えたと思っています。
■眞貝知志(ドライバー)
最終日、SS6の後半で車両にトラブルが発生したことで、ラリーの続行を断念せざるを得ませんでした。しかし濡れた路面におけるDATの制御や足まわりのセットアップには大きな手応えを感じ、上位陣に近いタイムも出せていました。第2戦新城から比較すると、DATの熱対策や制御、フィーリングの向上も含め『別モノ』と言えるほど気持ち良く運転できています。次戦のラリー丹後までに約1カ月のインターバルがありますし、今回のラリーで得られた新たな課題に対策を施し、前向きな気持ちで臨みたいと考えています。
■丸田智(チーフメカニック)
前回の唐津から、短期間で準備し迎えた今季3回目のラリーでしたが、チーム全体のレベルアップを感じました。GR YARIS Rally2のチームでは、クルマの知識を日本側のエンジニアやメカニックが吸収して、できることが増えてきましたし、整備のスピードも上がっています。最初はパーツ交換しかできませんでしたが、今ではギヤボックスの分解整備も行っています。こうした点は、人づくりという意味でも成長の足がかりになると思います。GR YARIS GR4 Rally DATのチームは、昨年から継続しているメンバーもいますし、動きがより成熟されています。残念ながらリタイアとなりましたが、攻めた結果でしたので、これを良い教訓として、次戦につなげていきたいと考えています。
■ステファン・ウィリアムズ(勝田号エンジニア)
Rally2車両の開発作業を担当しています。私は今回初めて日本に来たのですが、久万高原ラリーは路面や道の性質もヨーロッパとは異なります。ヨーロッパでのテストと並行して、全日本ラリー選手権への参戦も開発プロセスの一部として捉えています。テストと同時に実戦からも学べる点は、とても恵まれていると言えます。Rally2車両は、プロドライバーが満足できるだけでなく、趣味でラリーを走るドライバーにも楽しんでもらえるクルマにしなくてはなりません。TGRが初めて製作するカスタマー向け車両なので大きな挑戦ですが、できる限り高いレベルのクルマにするため、メンバー全員が最善を尽くしています。
■井上純一(眞貝号エンジニア)
普段はレクサスとGRの車両開発に携わっており、DATの制御開発と適合を実施するグループのグループマネージャーを務めています。GRの車両にスポーツATを投入することで、お客様の裾野を広げ、2ペダルならではの速さ・楽しさを目指していきたいと考えています。ラリーは道が刻一刻と変わりますし、左足ブレーキなど様々な操作を駆使するので、我々が想定していなかった挙動や課題が出てきています。新城や唐津ではドライバーが期待する変速ができず、耐久性の課題も見つかりましたが、今大会に向けてしっかりと対策ができ、眞貝選手からは非常に高評価のコメントもいただきました。次戦に向け開発をさらに進めていきます。
■藤井亮輔(勝田号メカニック)
今シーズンはフィンランドのエンジニアの方々から教えていただきながら、様々なポジションを経験しています。今大会では車両の後方まわりとリヤデフ調整を担当し、路面コンディションの悪いなか、勝田選手の2位表彰台に貢献出来嬉しく思います。GR YARIS Rally2は、昨年までの車両と比べて構造がシンプルな為、限られた作業時間のなかで様々な作業ができる点が大きな違いです。そうした様々な違いを経験し、初戦の新城から成長を実感しております。次戦に向け更に出来る事を増やし、もっといいクルマづくりに貢献できればと思います。
■藤原裕司(眞貝号メカニック)
GR YARIS GR4 Rally DATの整備を担当しています。会社では開発側の立ち位置となるので、DATの市販化を見据えた開発を、エンジニアの方と協力しながら実戦の場で行っているという感じです。GR YARIS GR4 Rally DATは、MTのGRヤリスとは重量配分などが異なります。ラリーやテストを重ねながら、制御や車両のセットアップを進めています。今大会では残念ながらリタイアとなってしまいましたが、眞貝選手からは非常に前向きなコメントをいただいていますし、この結果を真摯に受け止めて、次戦に向けてさらに改善を重ねたいと思っています。
■西岡直哉(GRガレージ松山)
一昨年前も久万高原ラリーでチームに参加しており、今回が2回目です。眞貝選手の車両整備を行い、リヤの足まわりを担当しました。前回と比べてラリーや整備作業の流れもある程度分かっている状態なので、前回よりも有意義なかたちで参加できたと感じています。チームの方々の動きやサービスの段取りなど、安全に素早く作業を行うための貴重なヒントを得ることができました。自社でも社員ドライバーで地方戦のラリーに参加しているので、参考になる部分が多かったです。私がここで学んだことを店舗のスタッフに展開することで、スタッフのレベルが上がると思いますし、スタッフのレベルアップはお客様の作業にも生かせると考えています。
全日本ラリー選手権第4戦 久万高原ラリー
JN-1クラス最終結果
1 ヘイキ・コバライネン/北川 紗衣(シュコダ・ファビアR5)
55:36.8
2 勝田 範彦/木村 裕介(GR YARIS Rally2)
+1:28.7
3 鎌田 卓麻/松本 優一(スバルWRX STI)
+2:00.1
4 福永 修/齊田 美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)
+2:29.5
5 新井 敏弘/保井 隆宏(スバルWRX STI)
+2:51.1
6 小濱 勇希/竹下 紀子(トヨタGRヤリス)
+4:01.9
7 松岡 孝典/北田 稔(トヨタGRカローラ)
+6:40.6
R 眞貝 知志/安藤 裕一(GR YARIS GR4 Rally DAT)
参戦9台、完走7台
TOYOTA GAZOO Racingは、「もっといいクルマづくり」のために「人を鍛え、クルマを鍛える」活動の一環としてGR YARIS GR4 Rallyで全日本ラリー選手権に参戦し、将来の車両開発に活かします。
TOYOTA GAZOO Racingの全日本ラリー選手権(JRC)における活動は、パートナー企業の皆さまによって支えられています。