ウメウメと、ただならぬ違和感を感じたのは今から1ヶ月ほど前のことだ。
その日僕は、レーシングマシンテストのために富士スピードウェイにいた。待ち時間、ぼーっとコースを眺めていると、タイヤを鳴らしながら駆け回るスポーツ走行車両にまじって、数台のプリウスがとろとろと走っている光景を見かけたのだ。まるでエコランをしているかのように…。
僕はすぐに、事態を察した。その日から1週間後に「プリウスカップ全国大会」が開催されることになっており、そのための練習なのだと理解したのだ。ちなみに、それに不肖・木下も参加することになっていた。
プリウスカップを大雑把に表現するならば、トヨタ販売店がプリウスを使って燃費を競うエコラン大会である。それぞれ販売店が自前のプリウスと自前のメカニックでチームを編成しサーキットに挑んでくる。
それぞれ地方大会が繰り広げられ、各地を勝ち抜いてきた精鋭たちが日本一を決定するのがこの全国大会なのである。
競技は走行競技とサービス競技の合算ポイントで競われる。限られた時間内に走行し、燃費の優劣を競う走行競技と、途中でトラブルシューティングなどをこなすサービス競技を慌ただしく行うのである。
会場には豊田章男社長をはじめ、そうそうたる幹部が観戦にいらしている、といった物々しさである。モリゾウ選手のサプライズデモランやLEXUS LFAの同乗体験などなどアトラクションも充実している。終始和やかな雰囲気に包まれているのだ。
実はこれ、ただの余興の域に留まらない。中にはドライバー全員が徹底したダイエットに挑戦、げっそりと頬がこけた顔つきでやってくるチームもある。車のカラーリングも鮮やか。自前の応援団を組織。揃いのユニフォームくらいでは驚きもしない。だから、大会数日前にサーキットでシミュレーションテストをしていたとしてもまったく不思議ではないのである。
プリウスの産みの親である内山田会長などは自らチームを組織し、必勝態勢で挑んできていた。ハイブリッドシステムの髄まで知り尽くした開発陣までが真剣勝負で挑んでくるほどのイベントなのである。
そう、そんなイベントがありました… (終)。
というわけで、ここで原稿を閉じてもいいのだが、書き始めた責任もあり、正直に言おう。
この大会に今年も、GAZOO Racingとしてエントリーした。ドライバーは規定内の4名。キノシタと石浦宏明、勝田範彦、GAZOO Ladyの鉄砲玉・平山愛子とコ・ドライバーにGAZOO Ladyの頭脳・皆川果澄という強力な布陣。全日本ラリー選手権優勝ドライバーを中心に本気で挑んだのだ。
実は過去にも参戦してきたのだが、どうも思わしい成績を残せないでもがいてきた。というより、まったく歯が立たず、惨敗の連続。かろうじて面目を保っていたのはプリウスカップが発足しはじめた数年前だけ。年々レベルが上がってくると、もうテールエンダーが定位置。それではいかんと顔を洗って出直そうと誓ったわけである。
というお話でした…(終)。
とリザルトを伏せて原稿を閉じたいのはやまやまなのだが、それでは起承転結が整わない。恥をさらすことにしよう。
結果は32台中27位。初挑戦の招待チームもいたから、本気で挑んできたチームのほぼビリに近い。我々だってミスをしたわけではない。規則通りの時間にもっとも効率よく走りきった。皆川果澄の計算は数秒の誤差もなく、ドライバーを何度も入れ替えながら60分以上連続走行しても、ゴール時には1秒も誤差がなかったほど。それでも燃費は28.4km/l。トップはなんと44.3km/lだから、我々は同じ平均速度で周回していながら、倍近く燃料を消費したことになるのだ。
そう、プリウスカップは実に奥が深いのである。過去には何度もエコランで優勝したことがある。だがプリウスカップになると惨敗続きである。
「よし、来年こそはリベンジするぞ!」
この言葉を口にしたのは今年で何度目だろう…(汗)。