GAZOO Racing 86/BRZ Raceも全7戦中の折り返し地点。スーパー耐久シリーズ2013第5戦「スーパー耐久レースin岡山」のサポートレースとして行なわれた第4戦は、事前に予想されていた台風の接近は避けられたが、予選はドライ、決勝はウエットというコンディションでの開催となった。エントリー数は今回も盛況で60台(トヨタ86:50台、スバルBRZ:10台)の参加者が集まった。
56台(4台は未出走)で行なわれた予選はA組/B組に分かれて行なわれ、A組ではNo.7 山野直也選手(P.MU RACING 86)が、2位以下を1秒以上引き離す1分52秒913を記録し、定位置となりつつあるポールポジションを獲得。B組はNo.92谷口信輝選手(コウベトヨペット86)が、1分54秒092で2番グリッド。予選上位38台が決勝に駒を進めた。
小雨になったものの路面は完全ウエットの決勝(12周)は、「GAZOO Racing 86/BRZ Race」初となるセーフティカー先導によるローリングスタート。スタンディングスタート同様にNo.7山野直也選手(P.MU Racing 86)がジャンプスタートを切ったものの、「予選を重視していたため、決勝では逃げ切りができなかった(山野)」ということで、予選3位のNo.37蒲生尚弥選手(ケンダタイヤ86)が8周目に逆転。「タイヤの消耗が少なかったことと、山野選手のミスもあり抜くことができました(蒲生)」。ついに山野選手の連勝をストップさせた。
3位はNo.906阪口良平選手(AREA86倉敷)が獲得。ファステストラップを記録したNo.444平川亮選手(広島トヨペット86)との激しいバトルも見物であった。「オープンしたばかりのAREA86倉敷のためにも表彰台は絶対条件でした(阪口)」と語る。
今回は難しいコンディションながらも、中段以降のグループも、接触もなくクリーンなレース展開が繰り広げられた。GAZOO Racing 86/BRZ Raceのアドバイザーである影山正彦選手も「初戦から比べると“走り”はもちろん“レースマナー”も大きくレベルアップしている」と語る。
また、今回は予選落ちしてしまった16台のためのコンソレーションレース(決勝に残れなかった参加者によるレース)は、No.55森山鉄也選手(BRIDE ADVAN 86)がトップでゴールした。
4連勝は逃してしまったものの、依然ポイントランキングトップの山野直也選手。プロドライバーも寄せ付けない速さの秘密はどこにあるのか? 本人に直撃してみた。
「『クルマが違う?』『タイヤが違う?』と思っている人もいるようですが、本当に何もしていません。セオリー通りのクルマになっていますし、サスペンションのセットもほぼTRDの推奨値のままです。練習日に他のチームのマシンにも乗せてもらいましたが、同じタイムで走れますよ。
では、何が違うのか? それはやはり“走らせ方”だと思います。86Racingはタイヤが車両に対して少し負けていますので、ドライビングは非常に難しいです。そのため、すべての操作に対してスムーズな走り、アンダーもオーバーも出ないギリギリのところのドライビングを心掛けています。『ハンドルを切りすぎない』、『荷重をかけすぎない』、『頑張りすぎない』細かいドライビングの積み重ねが、最終的なタイムに大きく影響します。
実は車両安定装置(VSC)はOFFにしていても、クルマを安定させる制御がわずかに残ります。そのため、その制御が入らないよう挙動を乱さない走りも大事ですね。
また、バトルをすると無駄が多いのでトップに出て自分のラインを走ることで無駄なく走れます。僕の中では『レースは予選で8割決まる』と思っていますので、予選の組み立て方も大事ですね。」
様々なドライバーが参戦する「GAZOO Racing 86/BRZ Race」。プロドライバーの参戦もニュースだが、A級ライセンス獲得後1年以内の「モータースポーツ入門層」が非常に多いのもポイントである。そんなビギナードライバーのために、各レースで「ドライビング講習会」を行なってきた、GAZOO Racing 86/BRZ Raceのアドバイザーである影山正彦選手。今回で4戦目となるが、ビギナードライバーの成長について聞いてみた。
「これまで4戦、様々なアドバイスをしてきましたが、“お世辞抜き”で皆さん大きくレベルアップしています。上位陣はプロドライバーが引っ張っていますが、中段から下位も短期間で大きく成長しているのを実感しています。それは、走らせ方やテクニックだけでなく、レースマナーに関しても同様で、正直言ってしまうと初戦とは比べ物になりません。
講習時に色々な質問を受けますが、質問する項目のレベルもレース毎に内容がレベルアップしているのにも驚いています。これまでは“自己流”の人が多かったのですが、『クルマを感じる』、『上手に走らせる』ことが、僕にもヒシヒシと伝わってきます。
その証拠に、第3戦(鈴鹿)くらいからタイム差も接近し、予選を通過するタイムも相対的にアップしています。これはプロドライバーやセミプロが増えたからでなく、ビギナードライバーの成長の証と言っていいでしょう。
毎戦コンディションが異なるレースが続いています。ウエットなどは心配な部分もありますが、これまで大きなクラッシュもないので安心していますが、様々な経験が、今後に役に立つと思います。『GAZOO Racing 86/BRZ Race』はドライバーが主役のレースです。そんなビギナードライバーの成長にも注目してください。」
今回の第4戦は、スーパー耐久シリーズのサポートレースとなる。量産車をベースとするレースと言う繋がりのためか、多くのドライバーが「GAZOO Racing 86/BRZ Race」にも興味津々。そこで「このレースに出てみたいですか?」という質問をしてみた。1人目は井口卓人選手。スーパー耐久、ニュル24時間、スーパーGTと、様々な86/BRZのレーシングカーに乗る、若手の86/BRZマイスターだ。
「S耐でパートナーを組む、蒲生選手も参戦していますが、僕もクルマ好きの1人として出てみたいです。イコールコンディションのクルマで自分がどこまでイケるのか?凄く興味があります。それにみんな楽しそうな雰囲気がいいですよね。
恐らく予選などのタイム差なども他のレースよりシビアだと思います。マシンではなくテクニックでタイムを少しずつ削っていくレースなので、他のカテゴリーのレースとは違う面白さがあります。
86Racingにはイベントなどで乗ったことがあります。レーシングカーと言ってもノーマルに非常に近いクルマですので、クルマの持っている能力を目いっぱい走らせながらも、Gを上手く逃がして前に進ませなければいいタイムは出ません。なので、運転技術としてはかなり難しいと思います。“速く走らせる”という意味では、もしかしたらスーパーGTよりも上かも!?
僕は様々な86/BRZのレーシングカーに乗っていますが、常に感じるのは、持っている素性がいいので “近似性”を感じます。どのマシンに乗ってもハンドリングがいいので、『直線で負けてもコーナリングで勝つ』が可能なクルマです。どのカテゴリーであっても、ドライバーにとってもチャレンジングなクルマなのは間違いありませんよ。」
台数はトヨタ86よりも少ないものの、第3戦の鈴鹿ではトップ争いに食い込むようになってきたスバルBRZ。次の十勝ではスバル系大物ドライバーの参戦も噂されている。
「このレースに出てみたいですか?」の2人目は、スバル車のスペシャリストPROVAの営業部長でありながら、スーパー耐久、ニュルブルクリンク24時間などにも参戦する、スバル“箱レース”のスペシャリスト、吉田寿博選手だ。
「凄く面白そうですよね。『吉田さんも出ましょうよ!!』とよく言われますが、いい所にいくのか?それともブザマな姿をさらすのか…のどちらかでしょう(笑)。みんなが考えているほどクルマの差もないようですし、腕を試すにはいいカテゴリーだと思います。
ワンメイクの面白さ=スプリントレースの面白さです。レースを目指す人はスプリントを経験しないと『速さを追求する』という欲がでてきません。そういう意味でも、レースの基本を経験する上で勉強になるレースだと思います。プロドライバーの参戦に対して賛否はありますが、僕はアリだと思っています。アマチュアドライバーにとってプロドライバーは“目標”になります。後ろについて走るだけでも『どうやったら自分も近付けるのか?』など色々勉強になります。今回はスーパー耐久のサポートレースなので、掛け持ちドライバーもたくさんいますが『全員がトップレベルの位置にいるか?』というとそうでもない(笑)。それが見えるのも面白いです。
スバル派の僕としては、もう少しBRZの台数が増えてくれるといいですね。トヨタ86は台数が多いだけでなく、メカニックの数やステッカーなどなど、地域の販売会社も頑張っているように感じます。
スバルもそのようなサポートがもっとして欲しいです。ニュル24時間のようにディーラーメカの派遣をして経験を積ませることで、お客さんとの信頼関係もより深くなりますよ。」
今回は「GAZOO Racing 86/BRZ Race」以外にも、ヴィッツ“RS Racing”を使用したナンバー付きレース「GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race」も開催。さらにスーパー耐久のST-4クラスにもトヨタ86で「GAZOO Racing SPRIT」が参戦しているため、GAZOO Racingはフル活動だ。
レースを観戦していると「実際に走ってみたい…」と思うことはないだろうか?そんな要望に応えるイベントが、「ワクドキ!サーキットを走ろう!(http://toyotagazooracing.com/archive/gr/event/wakudoki/)」だ。ニーズに合わせて3つのカテゴリーが用意されているが、今回は気軽に参加できる「ちょっとサーキットを走ろう」クラスが開催された。今回は予選終了後(土曜日)の夕方に本コースを使用して行なわれたが、ちょっと前までレーシングカーが走っていた場所を実際に走行できる…ということで、63人の参加者が集まった。
何と、今回は「GAZOO Racing 86/BRZ Race」に参戦可能な仕様の86Racingをサーキットで試乗が出来たのだ。「86に乗りたい」と言う人はもちろん、「参戦を検討している」、「ノーマルモデルと何が違うのかを確認したい」というニーズにもピッタリだ。
実は、他にも試乗車はあるのだが、86Racingは超人気モデル。その人気は、受け付け開始後5分少々ですべての枠が埋まってしまったほど。これまで何回か開催されているが、試乗後に実際にレース参戦を決意した人もいると聞く。
「もっとクルマ好きを増やしたい」と願うGAZOO Racingの活動は、レースだけでなく様々な形で進めています。今後の展開にもご期待ください。
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー |
---|---|---|---|
1位 | 37 | ケンダタイヤ 86 | 蒲生 尚弥 |
2位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 |
3位 | 906 | AREA86倉敷 | 阪口 良平 |
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー | 合計 ポイント |
---|---|---|---|---|
1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 | 75 |
2位 | 557 | オートバックスG786ポテンザ | 大西 隆生 | 34 |
3位 | 906 | AREA86倉敷 | 阪口 良平 | 27 |