エントリー数は第1戦よりは少し減ったが、54台(86:45台、BRZ:9台)と第2戦も大盛況。27日(土)予選は前回同様A組/B組に分かれて行なわれた(うち3台は練習走行のトラブルの為未出走)。No.7 山野直也選手(P.MU RACING86)が、天候変化と路面状況を察知し、一発勝負のアタックで1分43秒805を記録。連覇にむけてポールポジションを獲得。以下、上位45台が決勝に駒を進めた。
スポーツランド菅生は富士スピードウェイに比べ、平均車速は低いがテクニカルなコースレイアウトである。さらに今回は晴天の第一戦から一転、練習走行はヘビーウエット、予選はドライと大荒れ模様。そのため、各ドライバーは時々刻々と変化する天候にベストセットが見つかりにくい…という状況の中での戦いとなった。
28日(日)午前、人気のスーパーGTのサポートレースと言うこともあり、多くの観客の中でスタートした13周の決勝は、晴天ながらも前日の雨が乾き切らず、ドライとウエットが混在する難しい路面コンディション。そのため、スタートからスピンや接触が発生しコース内は大混乱。
そんな状況のスタートから飛び出したのは、やはりポールポジションのNo.7 山野直也選手(P.MU RACING86)。1周目で2位以下の後続との距離を一気に引き離すと独走態勢に。タイヤを労わったスムーズなドラビングで、開幕戦に引き続き2連覇を達成した。
2位争いは様々なカテゴリーのドライバーが入り乱れ、毎周のように順位が入れ替わる白熱したバトルが繰り広げられた。そんな中11周目でジャンプアップしたNo.60 服部尚貴選手(OTG GY 86)が2位、3位はNo.62.松原亮二選手(ネッツ群馬FKマッシモμ86)が獲得した。もちろん、接近戦バトルは上位陣だけでなく中段/下位グループでも繰り広げられており、観客にとってもスタートからゴールまで常にハラハラドキドキのレース展開だった。
また、予選46位以下の6台は4周のコンソレーションレース(決勝に残れなかった参加者によるレース)に出場。スタート前に降り始めた雨の影響で、完全なウエットレースとなったが、No.11 吉本明選手(BRIDE ADVAN 86)が後続を抑え優勝した。
第2戦から新たにエントリーしたプロドライバーの一人が、GAZOO Racingからニュル24時間レースやスーパー耐久シリーズに参戦中の若手ドライバーである蒲生尚弥選手。普段は純レーシングカーの86をドライブしている彼は、ナンバー付きレーシングカーである86Racingをドライビングしてみて、どう感じたのかを聞いてみた。
「86Racingは、レーシングカーと言っても基本はナンバー付きの市販車ですので、僕が普段乗っている純レーシングカーと比べてしまうと、エンジンパワーやタイヤグリップの違いだけでなく、様々な性能面に関しても市販車とレーシングカーの差は存在するのは事実です。
ただ、今回走らせてみて解ったのは、『唐突な挙動変化がない』、『扱いやすい』と言った、ドライバーが感じる部分は非常に良く似ていることです。つまり、86の基本的な性格は市販車もレーシングカーと同じです。
恐らくこのレースの上位ドライバーであれば、僕が普段乗る86のレーシングカーにも、何も問題なく普通に乗れてしまうでしょう。それくらい走りの印象はよく似ています。
基本的な性格が同じ…ということは、ニュル24時間耐久レースやスーパー耐久で使ったセットアップを86Racingでも共有できる…と言うことです。ホントは優勝するためにナイショにしておきたい所ですが(笑)、コーナリング時のボトムスピードを上げるセットアップとそれを活かす走らせ方がポイントになると思っています。
今回はタイヤセレクトを含め、ほぼ“ブッツケ本番”に近い状態での参戦でしたが、実際に走らせてみて方向性も見えてきました。予選4位、決勝は一時2位まで上がりましたが、クルマ側にトラブルが発生してしまい結果はリタイヤ。ただ、近いうちに連覇中の山野直也選手を何とか倒したいです…僕、負けず嫌いなので」。
GAZOO Racing 86/BRZ Raceは、イコールコンディションで楽しむレースとして、クルマのセットアップ範囲は非常に狭いのだが、数少ない調整シロのひとつが“タイヤ”である。一般には「いいクルマはタイヤを選ばない」と言うものの、実際はタイヤの性能によってクルマの性格や性能も変わってくる。
車両規則を見ると「市販のラジアルタイヤ」で「サイズは205/55R16」という指定があるが、銘柄はどのブランドも自由。各参加者は様々なメーカーの市販スポーツタイヤをセレクトしている。
参加者の声を総合すると、トヨタ86/スバルBRZはどうやらタイヤの特性にも敏感に反応するクルマらしい。つまりタイヤセレクトも、このレースの面白い部分でもある。ちなみに、参加者のタイヤを調べると、ブリヂストン/アドバン(ヨコハマ)/ダンロップ/グッドイヤーの4つメーカーのタイヤがメインだ。
開幕前には「一発勝負のA社」、「トータルバランスのB社」、等々様々な噂が飛び交っていたのだが、開幕戦ではベスト3をBS装着車がしめ、第2戦では多くの参加者がブリヂストンをセレクト。
ただ、ライバルメーカーも黙って見ているわけはない。タイヤの性能をより活かすセットアップの進化を求めて、実力が接近してきていると思われ、第2戦の結果では、優勝した山野直也選手はブリヂストンだが、2位の服部尚輝選手、3位の松原亮二選手はグッドイヤー、5位の谷口信輝選手はアドバンとバラバラ。
さらに、台湾のタイヤブランド「KENDA」も参入を検討。「市販タイヤを使用し、多くのタイヤメーカーが切磋琢磨していているこのレースは、スポーツタイヤ開発の場に相応しい(アジアンタイヤセールス關社長)」との事だ。
GAZOO Racing 86/BRZ Raceはドライバーの戦いであると共に、タイヤメーカーの開発競争でもある。そういう意味では、一般のトヨタ86/スバルBRZユーザーにとっても、最適なタイヤ選びの指標のひとつになるかもしれない。
現役トップドライバーのエントリーが話題になる一方、「普段は普通のクルマとして使用可能」というナンバー付きの利便性と、参戦への敷居の低さもあり、国内Aライセンス獲得後1年以内の「モータースポーツ入門層」が非常に多いのが、GAZOO Racing 86/BRZ Raceの特徴でもある。
ただ、「誰でも気軽にレーサーになれる」とは言っても、実際に参戦すると不安なことはたくさんある。そんな人のために、レースウィーク中にGAZOO Racing 86/BRZ Raceのアドバイザーである影山正彦選手による初心者向けの講習会が行なわれている。
コースの上手な走り方やポイントの説明だけでなく、予選や決勝での心構え、レース中のマナーなど、レースに関する色々な相談に乗ってくれるのである。これは「みんなでレースを楽しんで欲しい」というコンセプトによるものだ。
また、上位入賞者とは別に「Rookie賞(2012年11月以降に国内Aライセンスを取得したドライバーの中での最高位を獲得した人に与えられる)」、「ベストパフォーマンス賞(決勝で素晴らしいパフォーマンスを発揮したドライバーに与えられる)」、「GAZOO Racing PARTNERS賞(決勝で敢闘精神豊かなドライバーへ与えられる)」、「I Love Cars賞(コンソレーションレースで敢闘精神豊かなドライバーに与えられる)」などの“特別賞”も設けられている。例え上位でなくても、GAZOO Racing 86/BRZ Raceにはドライバーの成長をちゃんと見守ってくれている人がいるのだ。
観戦する人は、上位陣のバトルだけでなく中段~下位集団の戦いや成長ぶりにも注目してほしい。どの順位であっても手に汗握る接近戦が繰り広げられるのは、GAZOO Racing 86/BRZ Raceだけかもしれないぞ。
GAZOO Racing 86/BRZ Raceの参戦車両を見ていると、まっさらなクルマから色とりどりのボディカラーやステッカーでコーディネイトされているクルマまで様々である。その中で、トヨタの販売店のロゴが入ったマシンも多く見かける。「販売店とワンメイクレース」、どのような思いや考えがあるのか、ある販売店系チームに聞いてみることにした。
「我々はクルマを売ることが本業ですが、レース活動をすることでファンが増える=お客さんとの信頼関係や絆もより深くなります。それが結果的にディーラー(販売店)の知名度や価値、指名などを上げる要因にもなっていると思っています。うちでは近くに店舗があるにも関わらず、わざわざ遠くから来てくださるお客様も多いですよ。
レース初心者にとってはレース参戦のハードルというのは高いです。そのため、『レースをやってみたいけど手順がわからない』という人の窓口という部分でも、ディーラーの強みはあると思います。それはクルマを売るだけでなく、レース仕様に手を加え、レースサポートやメンテナンスもすべて自社で完結できる…という点です。もちろん、精力的に活動することでワンメイクレースを戦うためのノウハウも多く構築できますし、メカニックのスキル向上にも役に立っています。
モータースポーツは1人ではできず、多くの人に助けられている部分があります。なので、売りっぱなしではなく、その手助けをすることも我々のディーラーの役目だと思っています。そのために、会社には色々お願いばかりして苦労させている部分も多いですけど、頑張っている人は応援してあげたい。ある意味、そこは商売抜きの部分かもしれません。
ただ本音を言えば、どの販売店もそうだと思いますが、自社の看板を背負っている以上は『他の店舗には絶対負けたくない!!やるなら徹底的に』と言うのが、最大の理由かもしれません(笑)。」
プロのレーシングドライバーや販売店系チームではなく、完全なプライベートで参戦しているドライバーも多く存在する。もちろん、レーシングカーとしては比較的リーズナブルな86Racing/BRZ RA Racingだが、このレースに参戦する魅力はどこにあるのか?ある“一匹狼”のプライベーターに話を聞いてみた。
「86 Racingが登場した時、大好きなFRでレースが出来るということで即決しました。決して安い買い物ではありませんでしたが、ナンバー付きなので普段は普通に乗ることができるので、『ちょっと頑張れば何とかなるかな!?』と。ただ、他の参加者と話をしていると色々と欲がでてしまい、結構お金をかけてしまいましたが(汗)。
中には積載車でサーキットにやって来るチームもありますが、僕は家から自走で来ています。トヨタさんが言っているように、タイヤ4本と工具、そしてテーブルなどはちゃんと収納できます。さすがに菅生では車中泊はやめましたけど、いざとなれば、車内でもちゃんと寝られます(笑)。
メンテナンスはタイヤ/油脂類の交換、アライメント調整など、基本的には自分でやれるところは自分でやるようにしています。お金を節約したいというのもありますが、自ら作業することでメカニズムの勉強にもなるし、セットアップ変更でクルマがこんなに変わる…ということも身をもって経験できました。
敷居の低いレースに、プロチームやプロドライバーが出るのは大人げない…と言う人も中にはいますが、僕はアリだと思っています。プロと同じ土俵で戦えるのは嬉しいですし、自分の実力が今どのレベルにあるのかも確認できます。もちろん、いつでも打倒プロドライバーですよ(笑)。
今後、十勝スピードウェイやオートポリスはどうするのか?もちろん自走&車中泊で行くつもりですよ。
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー |
---|---|---|---|
1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 |
2位 | 60 | OTG GY 86 | 服部 尚貴 |
3位 | 62 | ネッツ群馬FKマッシモμ86 | 松原 亮二 |
順位 | Car No. | 車両 | ドライバー | 合計 ポイント |
---|---|---|---|---|
1位 | 7 | P.MU RACING 86 | 山野 直也 | 40 |
2位 | 62 | ネッツ群馬FKマッシモμ86 | 松原 亮二 | 20 |
3位 | 60 | OTG GY 86 | 服部 尚貴 | 19 |